甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

司馬江漢さんとの出会い

2015年06月13日 09時07分47秒 | わたしの好きな絵!

 30数年前、プータローをしていました。家庭教師のバイトをしていましたが、その子があまり勉強してくれず、自分自身の進路も決まらず、悶々としていました。それで、胃を壊して初めての胃カメラをしたりしましたっけ。

 当時の胃カメラはすごかったです。目を開けると、目の前に黒い棒が自分の口にささっていて、「ああ、丸焼けのブタになっている」と思いました。もしくは何かの串刺し状態でした。

 お金はなく、夏に学生時代からつきあっている女の子に会いに行くというのが楽しみで、手紙だけはしっかり書いて、現実生活はサッパリで、昼夜逆転して、仕事に出かける父の顔が曇るのがわかるような気がしました。でも、しかたがないよと心で言い訳して、だらしない生活をしていました。

 新聞屋さんから、美術展のタダ券をもらい、阪神電車に乗って西宮にでかけました。それだけでもすごいことでした。何しろ、昼間に外に出るのがこわい感じだったのですから……。

 美術展は、「日本近代銅版画展」というもので、図録の一番最初のカラーページの冒頭が司馬江漢の「両国橋図」でした。ページをめくると、長谷川潔、浜口陽三、亜欧堂田善(あおうどうでんぜん)、キヨソーネ、ビゴー、武井武雄など、今につながる好きな絵描きさんたちが並んでいます。

 なんと、お金もないのに、感動したのか、1700円で図録だって買ってしまいました。


 以後、チャンスがある度に、これらの絵描きさんたちの展覧会に行くようになりました。それから30年が経過して、旅日記を書いていた司馬江漢さんの本まで買って、それを研究しようという意気込みまで生まれましたが、行動がともなってなくて、そこまでたどりつけていませんが、そのうちに近世の旅文学を自分なりに掘り起こそうと考えています。ながーい話ですけど、そのうちにやります。

 それで、旅が好きなんですね。旅が好きなのか、司馬江漢が好きなのか、ただの逃避なのか、電車好きか、それらみんなひっくるめてのつまらない私で、はたから見たら、何をやっているんだコイツに、なりますかね。

 今から20年近く前に(ついこの間のような気がしますが)、神戸市立博物館で「司馬江漢百科事展」という企画があって、そちらにも行きました。そのころからの時々の神戸通いだったんですね。


 江漢さんの肖像画です。横顔を描くなんて、なかなかカッコイイと思いました。渡辺崋山先生が描かれる肖像画もタッチとかすごいなあと思うのですが、どうだこの洋風! という、何だか人を小バカにしたような、それでも一生懸命西洋画みたいに描いているいじらしさもあって、その姿勢がステキです。

 江戸後期の人たちって、何となく西洋を意識せざるを得なくなっていて、西洋に負けないぞという気持ちと、とにかく何でもいいから西洋とやらをマネてみたくて、あれこれ試行錯誤しているけなげさが入り交じっていて、その現れが司馬江漢さんで、パイオニアとしての魅力を感じます。

 第一、パイオニアが司馬江漢さんだとしたら、そのあとのフォロワーも何人かいるのですけど、だれも司馬江漢さんを越えることができなかった。唯一無二の存在で、西と東を混ぜ合わせようとした人たちは、みんなどこかで挫折して、もうなりきるしかなかったような気がします。

 藤田嗣治さんはフランスの画家になってしまった。長谷川潔さんは、静物の版画家になってしまった。武井さんは子供たちに目を向けた。高橋由一さんは現場にこだわり、日本で描くことができる油絵を追求した。みんなブレークスルーしたわけですね。

 司馬江漢さんはブレークスルーというより、達者な人なので、平賀源内さんと同じで器用貧乏というのか、何か損をしている気がします。でも、そこが魅力だし、とにかくパイオニアなので、あれこれ工夫しているし、見よう見まねのたくましさがあるんです。

 だから、ドラマはないかもしれないけれど、「何だコリャ!」という不気味さがあるのです。

 だから、何となく気持ち悪いという印象を持つ人も出てくるだろうし、何だか中途半端な色合いと思う人もいるかもしれない。

 一種独特の日本情緒なのかなと思います。



 だから、こんな絵、見たことない! と、私は思って、ずっと好きで、いつか彼の文章で旅をしたいと思っています。


★ 改めて、司馬江漢さんは、銭湯のペンキ絵に少し似ています。でも、何かが違う。


 何が違うのかなあ。平板さは同じです。テーマは違います。ペンキ絵は富士山しか描けませんけど、司馬江漢さんはそりゃもう、人がびっくりするようなものを取り上げます。

 そして、パイオニアです。でも、それだけ? もう少しちゃんと見ていかないと、はっきりしたことは言えないですね。今晩、今からでも、見てみます。

 とにかく、ペンキ絵とは似て非なるモノです。うまく説明できないけれど……。でも、並べてみると、どこか似ている気もする……。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。