読み出して30ページもしないうちに、何度も涙がこみ上げてきた。
そこには、主人公・坂本英明の心境に共鳴しながら、どんどん身びいきになっていく自分がいた。
英明はとりわけカッコイイわけでもないし、特に人並み外れた才能があるわけでもない。
だいいちこの男、口数も少ない上に、相撲以外に出番が多くないのだ。
不幸と言えば不幸な境遇にいるのだが、自らが招いた種だった。
そんな英明になぜ、そこまで肩入れしてしまうのか。
涙のわけは簡単だ。
とにかく彼は健気なのだ。
切ないほど健気なのだ。
彼と、彼の家族と、彼を取り巻く周りの人間も。
もう、みんなまとめて真剣に健気なのだ。
この小説は日本海に浮かぶ隠岐島が舞台。
この島では、由緒ある地元の神社への奉納相撲が20年にいっぺんある。
組み分けは座元(神社の所在地区)と寄方(その他地区)の二手に分かれ、その最後に大関同士の取り組みをもって、奉納相撲の締めとするのだ。
なにせ20年に一度の勝負なので、地域の意地や誇りを掛けた大一番なのである。
地区の顔役から若い衆まで気の入れようが半端じゃない。
島を挙げての盛大な催し事、ここに極まれりの雰囲気なんである。
話は戻って、英明のこと。
彼は、島という狭い世間ではしてはいけない過ちを犯した。
許婚との結婚を目の前にして、好きな女が出来たのだ。
結局一緒になったふたりは、当然周りから冷たく見られる。
そんな居心地の悪さなどは島外に出て行けば済むのだが、島が好きな彼らはそれでもあえて島に残った。
そして、伝統文化としてこの島に受け継がれる相撲に打ち込むことによって、その真摯な姿勢を無言で示し続けたのである。
まるで償いをしているかのような、ひたむきな態度で。
そんな彼に、寄方の正三役大関推挙の話がやってくる。
「まさか?自分に?」と驚く英明。
しかし、熱心に相撲に精進していた英明の姿を、ちゃんと周りの大人たちは見ていたのだ。
責任の重さにひるみながらも、感謝の気持ちでいっぱいの英明と妻・多美子。
ちなみに、この妻は後妻。これをもってしても話はちとヤヤコシイ。
そしてクライマックス、いざ奉納相撲の本番へ・・・・・。
改めて言うけど、これは相撲の話なのである。
たかだか(と言っては失礼だが)相撲の取り組みを読みながら、涙が出てくる。
他にも、頭を下げたりうなずいたりする場面場面でウルッときてしまう。
息詰まる展開と、心通わす家族愛。
「渾身」の想いがひしひしと伝わってきた。
最後には、二人はもとより、出てくる誰しもが嬉し泣きに明け暮れるラストが待っている。
もちろん、本を読み終えた僕も嬉し泣きが止まらなかった。
10点満点中、オススメ7★★★★★★★
そこには、主人公・坂本英明の心境に共鳴しながら、どんどん身びいきになっていく自分がいた。
英明はとりわけカッコイイわけでもないし、特に人並み外れた才能があるわけでもない。
だいいちこの男、口数も少ない上に、相撲以外に出番が多くないのだ。
不幸と言えば不幸な境遇にいるのだが、自らが招いた種だった。
そんな英明になぜ、そこまで肩入れしてしまうのか。
涙のわけは簡単だ。
とにかく彼は健気なのだ。
切ないほど健気なのだ。
彼と、彼の家族と、彼を取り巻く周りの人間も。
もう、みんなまとめて真剣に健気なのだ。
この小説は日本海に浮かぶ隠岐島が舞台。
この島では、由緒ある地元の神社への奉納相撲が20年にいっぺんある。
組み分けは座元(神社の所在地区)と寄方(その他地区)の二手に分かれ、その最後に大関同士の取り組みをもって、奉納相撲の締めとするのだ。
なにせ20年に一度の勝負なので、地域の意地や誇りを掛けた大一番なのである。
地区の顔役から若い衆まで気の入れようが半端じゃない。
島を挙げての盛大な催し事、ここに極まれりの雰囲気なんである。
話は戻って、英明のこと。
彼は、島という狭い世間ではしてはいけない過ちを犯した。
許婚との結婚を目の前にして、好きな女が出来たのだ。
結局一緒になったふたりは、当然周りから冷たく見られる。
そんな居心地の悪さなどは島外に出て行けば済むのだが、島が好きな彼らはそれでもあえて島に残った。
そして、伝統文化としてこの島に受け継がれる相撲に打ち込むことによって、その真摯な姿勢を無言で示し続けたのである。
まるで償いをしているかのような、ひたむきな態度で。
そんな彼に、寄方の正三役大関推挙の話がやってくる。
「まさか?自分に?」と驚く英明。
しかし、熱心に相撲に精進していた英明の姿を、ちゃんと周りの大人たちは見ていたのだ。
責任の重さにひるみながらも、感謝の気持ちでいっぱいの英明と妻・多美子。
ちなみに、この妻は後妻。これをもってしても話はちとヤヤコシイ。
そしてクライマックス、いざ奉納相撲の本番へ・・・・・。
改めて言うけど、これは相撲の話なのである。
たかだか(と言っては失礼だが)相撲の取り組みを読みながら、涙が出てくる。
他にも、頭を下げたりうなずいたりする場面場面でウルッときてしまう。
息詰まる展開と、心通わす家族愛。
「渾身」の想いがひしひしと伝わってきた。
最後には、二人はもとより、出てくる誰しもが嬉し泣きに明け暮れるラストが待っている。
もちろん、本を読み終えた僕も嬉し泣きが止まらなかった。
10点満点中、オススメ7★★★★★★★
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