5月、国立劇場での文楽「妹背山婦女庭訓」鑑賞に合わせて読みだしたこの本。先日、直木賞にも選ばれている。
「妹背山」の作者近松半二の人生をたどる物語。半二の人形浄瑠璃にかける思いはもちろん、当時の上方の演芸事情も垣間見れて興味は尽きない。文楽好きには必読。しかし、心なしか爽快感や達成感がない。何とか漕ぎつけた、という印象が強い。だから、直木賞と聞いたとき、ちょっと意外だった。題材の新鮮さはあるが、これを文楽に関心がない人が読んでどこまで興味を持ってもらえるかなというのが正直な印象だった。それは僕の期待値が高かったせいもあるのだろう。
せめて、「妹背山」の公演がこの夏、秋あたりであれば、もう少し違う盛り上がりを見せたかも。なにせ「妹背山」は両脇に床があって、その掛け合いが見事なんだから。ついでに、ご当地吉野に出かけ、吉野川のほとりに腰を掛け、川を挟む妹山と背山を眺めながら柿の葉寿司を頬張ることをオススメします。まさに舞台の世界そのものですから。
満足度(10点満点)5★★★★★
【第161回 直木賞受賞作】 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び | |
大島 真寿美 | |
文藝春秋 |
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