あとがきを読みながら、目には涙が溜まっていた。タイトルを見ればただのエロコメディのようだが、この夫婦にとっては大真面目。笑いの要素は一切ない。卑猥な感情も膨らんでこない。ただ、ただ、この二人の人に言えない20年来の悩みに寄り添ってあげることしかできない切なさしかない。どこが人と違うのか悩み、足掻き、壊れ、さまよい、そして長い時間をかけてようやく解放されて。どん底を経験したからこその力の抜けた文章は、怒りに満ちることもなく、へりくだることもなく、「普通にちんぽがはいる」読者との壁を作らない。
人に言えない悩みを抱えたこの二人は教員で、その職場環境が二人の変化に影響を与えていく過程が痛ましい。先日バラエティ番組で若槻千夏が現場の教師に「夜遅くにだって生徒の面倒を見るのが教師だろ!金八、ごくせんを観てなかったのか!」と吠えていたが、悲しいかな自分がモンペであることに自覚がない人間の正義漢ぶった高圧的言動が、どれほど生身の人間を追い詰めていくのか気付かぬのだろう。彼らにだって家庭があり、恋人がいるのだ。常人でさえ疲弊するのに、この夫婦はおまけにちんぽも入らないのだ。泣けてくる。せめて今ご自分の居場所を見つけたような締めくくりに、安堵を覚えたのが救いだった。
満足度(10点満点) 7★★★★★★★
※積読の一冊。最近退職を機に、本棚を新調し整理していて目についた。買った時期も動機も不明。これまで何冊も読んで感想を清書せずに下書きメモをしていたone noteが不具合で全部すっ飛び、短文でも書いておこうと思い直した次第。
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夫のちんぽが入らない (講談社文庫) |
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