栗太郎のブログ

一人気ままな見聞記と、
手づくりのクラフト&スイーツ、
読書をしたら思いのままに感想文。

チベット巡礼の旅(4) ヤムドゥク湖

2019-05-04 17:43:28 | 見聞記 箱根以西

旅行4日目。

朝7:00に起きて外をのぞいた。屋根に飾られたタルチョが風にたなびき、西の山は朝焼けに染まっていた。その上に、まだ満月が隠れずにいた。いいのか、こんな爽やかな気分にさせてもらって。



8:30過ぎ、チベット仏教三大聖湖のひとつ、ヤムドゥク湖へ。
湖までの足としてNさんが車を手配してくれた。オプション料金は1800元、日本円で33,000円くらいになる。ちょっとたかいのか?と思ったが、ラサから高速をつかって2時間以上、100km以上の距離だ。おまけに1,000mもの高低差もある。都内から富士五湖までの貸し切りタクシーだと思えば妥当か。

ラサから郊外に出ると、走っている車の半分くらいがRV車じゃないかという印象をうける。ちなみに、今日の僕らを送迎してくれる車はトヨタのプラドで、こちらでは人気が高いらしい。

ナンバーも多彩。見かけただけでも藏(チベット自治区)、川(四川省)、陕(陕西省)、云(雲南省)、渝(重慶市)、甘(甘粛省)、豫(河南省)、、、。ナンバーは7ケタで、登録地が左端にあり、あとは数字とアルファベットが並ぶ。初めの二文字(漢字+アルファベット)で都市を表すそうだ。例えば、藏Aならラサという具合。

車は当然、日本で見たことないメーカーが多数。日本車はトヨタが多く、ほかには日産、スズキも見かける。アメリカ車はFord、ドイツはフォルクスワーゲンが多く、その他KIA、現代の韓国車、あとは何かわからない中国社の数々。

Nさんが休憩しましょうと、川のほとりで車を停めた。





目の前の川は、ヤルツァンポ川という。「母なる川」という意味らしい。西にそびえるヒマラヤ山中が源流。チベットは乾燥地だが、その土地をこの水が潤しているのだなと感じる。河口慧海が著書の中でずっとブラマプトラ川と呼んでいるのがこの大河。カイラス山の方からラサ入りしよとしたときに何度も苦労してこの川を渡る描写があるが、この川幅だったらあの苦難もむべなるかなである。以前、中国がこの川にダムを造ろうとしたら、下流のインドから水量が減ってしまうとクレームがきたらしい。ほう、インドに行き付くのかと調べてみると、インドに入ってシアング川、ブラマプトラ川となり、バングラディッシュで最後にガンジス川に合流するのだとwikiに書いてあった。ラサ市街を流れるラサ川は、空港の近くでこの川と合流する。それを思った時に、おかしなものだと思った。ラサでは、罪人を川に流し、ゆえに魚も食さない。今はどうか知らないが、かつては船頭も最下層の職とて蔑まれたそうだ。そんな、忌むべき存在の場である川が、下流のインドに行けば聖なる場所となるのだから、宗教観とは不思議なものだ。

途中の風景は、右にヤルツァンポ川、左は山か、はだか麦の畑が広がってばかり。
畑には、耕運機も見るが、農作業の担い手としてまだまだ牛が現役が働いているのを何度か見かけた。



いかにもチベットの農村の建屋。民家は道端に住んでいないのか、時たま通り過ぎるだけ。

 

11:00頃に、ガンバ峠ふもとの検問所に着いた。ここでヤムドゥク湖の通行券60元を買う。ここから山道をくねくねと上っていく。

山の斜面に黒い点が点在している。遠目には黒っぽい草の塊に見えたが、ヤクだという。ヤクは、たまに突然道に現れる。放牧しているというが、飼い主の姿など見えやしない。

峠道にはときたま、ちょっと広くなっている退避スペースがあり、そこにはまた撮影用チベット犬が客待ちをしてたり、



マニ石といわれる石が積んであったり。



まもなく展望台があった。

さっき通過した検問所付近が遠く見下ろせる。時計の高度計をみると、検問所から400mも上ってきたようだ。



ここでも観光客用に、チベット犬、ラマとがいて、僕もこの二匹の間に立って何枚か撮った。1回10元。

吠えもせず、狭い台の上で大人しくしている。撫でるとモサモサしててすごい可愛い。



まもなく峠の頂上にさしかかるころに、眺望の素晴らしい場所があった。
ここにも幾つものマニ石が積まれていた。真言を唱えながら積むそうだ。日本だと、南無阿弥陀仏と念仏を唱えながら積むところだろう。巡礼者の安全と、家族の多幸と。意味するところは、お地蔵さんでもあり、馬頭観音であり、卒塔婆でもあり、道祖神でもあるような包括したイメージか。



ガンバ峠(チベット語ではガンバ・ラ)の頂上にさしかかると、その向こうにはすぐにヤムドゥク湖の水面が目に飛び込んできた。なにこの色は。まさしくトルコ石のようだ。澄んではいないが気品漂う居住まい。



駐車場に車を停めて外にでると、空が近く感じる。



湖の展望台。石碑には「標高4900m」とあった。Nさんは苦笑いをしながら、「本当は、、。4,770m、ですっ。」と深夜のテレビショッピング並みのもったいぶった顔で言った。つまんないとこで見栄をはる中国人気質が、Nさんには恥ずかしいようだ。
ヤムドゥク湖の水面は4441m。水は冬場には氷るそうで、今月溶けたばかりだという。

チベットには湖の数が2000くらいあるそうで、温泉も多いらしい。ただ温泉は熱く、5分も我慢できないほどだとか。だから日本のような温泉地にはなっていないみたい。







案内図をみると、目の前に広がる水面はほんの一部に過ぎない。この奥の奥までまだ続いているのか。



もう一段、湖の近くまで降りれるようなので行ってみた。



時計をみると、4641mを示していた。(誤差あり)
日本では体験できない標高を実感しながら、若干興奮している自分がいた。



湖の向こうにも民家がみえて、どうやって行くんだろうと気になった。
Nさんに、エベレストはここからどこ?正面の南の方向?と聞くと、まだまだずっと西の方です、と答えてきた。おいおい、どんだけヒマラヤって広いんだよ、って思った。

しかもほかに驚くことは、こんな都市からもずいぶん離れた山の上なのに、wifiが普通につながることだ。途切れることさえもない。そもそも成田を経ってここまで、wifiで苦労をしたためしがない。ここが進んでいるのか、日本がまだ遅れているのか。
そんなことをメモしていると、スマホにネット速報で「浦和1-0神戸」の途中経過。世界は案外狭いと感じた。

駐車場の戻る途中に、ヤクの頭蓋骨を見かけた。



それが呼び水になったのか、塀の下にヤクがいた。ちょっと離れたところにもいた。
ヤクは高原の宝だという。遊牧民のなかには、数百匹を飼っている人もいるらしい。「1頭10,000元にもなるので、」と言ったあとNさんは、頭の中で数字を計算している顔をして「お金持ちぃ。」と悪い顔をした。





途中、昼飯を食いに食堂に寄る。



おまかせで、Nさんが牛肉麺を頼んでくれた。
麺は塩味のストレート麺。三つ葉とネギが刻んで乗っている。後味に山椒みたいなスパイスがピリリと利いている。ガイドさんとドライバーさんの麺には、当然唐辛子がたっぷり入っていて真っ赤になっている。あれでは味なんてわかんないんじゃないかと思うが。



Nさんの好みなのか、いつも麺類を食べていた。だいたい「何がいいですか?」と聞いて来てはくれるのだが、食べてみたいチベット料理はいつも「近くにありません」で、広東、四川、、どれでもいいと言われるが、どのみちこっちにしてみればどれも中華料理なのだ。ここのは?と聞くと「ランシュウラーメン」というので字を尋ねると”
”とノートに書いてくれた。それはどこかと問うと甘粛省で、敦煌のあるところだと。へえこれでそう読むのか?と調べたら、どうやら日本では蘭州と書くようだ。中国特有の略字ってわけだ。

入口のドアに新彊と書いてあるが?とさらに問うと、そこのも出来るだろうという。たしかあの辺りは回族が多い。だからか、ここのご主人も小さなニット帽のような帽子をかぶっていて、奥さんはヒジャブを頭に巻いていた。

 

腹ごなしもすんで、改めてラサへ。

途中、ごつごつとした岩場に、いくつものハシゴの落書きを見た。それが結構あるし、そばにはチベット語でなにやら書かれている。ガイドさんに尋ねてみると、信者の書いた「天国への道」だそうだ。そこが神聖な山なので、少しでも天に近づきたいとハシゴを書くのだそうだ。





ラサ市内に戻り、超市(スーパー)でお土産を買い込む。
「あとは大昭寺の周りのバルクルで、カードで買えますから」とNさんが言う。



その大昭寺に着いた。時刻は15:00。ここでドライバーさんと別れた。これから何とか(忘れた)というところまで行くと言っていたのでググると、ここから400kmも遠かった。タフだなあ、と思った。

ラサ市内の運転事情に関する感想。
中国人は怒りっぽいと思っていたが、運転は意外におだやか。マナーに関しては、逆走あり、バイクの三人乗りあり、信号無視、割り込み、隙あらば渡るなど、何でもありの無秩序状態だが、誰もがそういう共通認識の世界なので、皆が平然としている。それでいて、事故はほぼ見かけず、凹んだ車もあまり見ない。だいたいスピードを余りださないのだ。むしろ、日本に住んでいると、誰もがいつも急いていてイライラしている。だから事故も多いのだろう。

僕は、すでにそうとうチベットが気に入っていた。


(つづく)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿