折立教室だより   子育てのちょっとしたヒントになればうれしいです

公文式の教室を初めて23年になります。たくさんの小さな「できた!」と大きな「ワクワク」に囲まれて私も日々成長しています。

なぜこれをやらないといけないのか

2024-04-27 21:36:11 | 子育てもろもろ


「なぜこれをやらなければならないのか?」
という質問を教室で時々受けます。苦手な九九やたし算の暗唱の繰り返し、面倒くさい英語の学習手順、初めての単元で答えを出さないといけない時などです。
本当に知りたいんだな、と思う時には、待ってもらってでも付き合いますが、面倒くさい事をやりたくないから言っている(と、顔に書いてある)場合には、「いいからとりあえずやってみて。やったらなぜかわかるよ。」
という返事をする事もあります。

「なぜ?」
という質問がとても増えたように思います。その質問が受け入れられる土壌が整っていること自体は、とても良い事だと思います。疑問に思う事は「出来る子になる」ための重要な第一歩です。
でも、実は「面倒くさいけど理由を聞いて理解できたらやってもいい」時の「なぜ?」は理由を聞いても理解できません。頑張って出来るようになったA(+)君は頑張る前のA(-)君とは別人なので、A(-)君にはその利点を理解する能力がないからなのです。

どうしてこんな「なぜ?」が増えたのか?
それは私たちが幼いころから「消費者」として育ってきているからだ、と内田樹さんが「下流志向」という本の中で述べておられます。幼いころからお小遣いを何に使うか考える。この商品は払うに見合うだけの価値があるか、絶えず考える癖がついている。お金だけでなく、努力や時間もそうです。だから、
「これは自分の努力に見合うだけのものか?」
と考えて、見合わなさそうだったら、最初から努力しない。努力して新しいステージに行かないと、その価値はわからないにもかかわらず。入学試験を突破しても良い事なさそう、のんびり暮らした方がいい。上司に叱られて仕事を覚えるよりも、簡単なアルバイトでも生きていける。そうかもしれませんが、頑張った先に見えてくる新しいステージを見るチャンスは、永遠に失われます。下流に、下流に人生を選んでいくことになるわけです。
「四の五の言わずにやりなさい!!」と言われてきた自分の子ども時代と比べると、今の子どもたちは、ずいぶん丁寧に「なぜ?」に付き合ってもらっているように感じます。でも、それは本当によい事なのか、と思うことがあります。


ほめる育児は正しいか?

2023-03-04 08:28:05 | 子育てもろもろ


 ほめて伸ばす、ということが最近は定番のようになっています。確かに叱られるよりは褒められた方が誰でも嬉しいですが・・・・はたして、ほめる子育ては正しいのか、ちょっと考えてみましょう。

 ほめる指導、と言って真っ先に思い出すのは、故小出義男監督です。岐阜市出身の金メダリスト高橋尚子さんを始め、有森裕子さん、千葉真子さんなど、有名選手を続々輩出した名監督です。彼は、自分が担当のどの選手にも「世界一になれる」と言い続けたそうです。
 小出監督のやり方が有名になって、真似をする人が続出したそうですが、特に良い結果にはつながりませんでした。最近は「叱らない育児」というのもありますね。ひたすらほめて育てる、親も子も嫌な気持にならなくて、ハッピー。

 実はこれには落とし穴があります。ほめられるだけで育てられた子は、「失敗しそうなことにはチャレンジしない」ようになる、という実験結果が出ています。子どもにもプライドがあるので、これまで当たり前のように大人にほめられていたのに、次はほめてもらえない、というのは傷つくからでしょう。
 
 では出来たらほめてご褒美を、失敗したらご褒美なしで叱る、というのはどうでしょう?これは、多少のことは良いですが、多用するとどこかで急にやる気を無くす、という現象が起きます。はじめは「面白そう」と思ってやっていたのが、行動の目的が「報酬をもらう」ことに置き換わってしまうためです。報酬無しではやる気が出なくなってしまうのです。これをアンダーマイニング現象と言います。基本的には、おもしろそう、やってみたい、と思わせるような働きかけをするのが大切だと言えます。教室ではよく、算数・数学の世界のワクワク感、国語の奥深さ、英語の便利さなどを話しています。今日やった教材が難しくても楽しかった、と思ってもらえるよう心がけています。
 「ほめる子育て」は正しいか?
 それは、何をほめるかに掛かっているように思います。結果をほめると次は失敗できなくなります。チャレンジできたこと、努力できたことを一緒に喜んでやれば、子どもは達成感や、自己肯定感を感じるのではないかと思います。





スマホ脳

2021-07-31 19:27:16 | 子育てもろもろ

スマホ、タブレット、パソコン。
お子さまは一日何時間くらい、これらを見ているでしょうか?
最近よく売れている本に「スマホ脳」というのがあります。作者はスウェーデンの精神科医。心の不調で受診する人がここ10年、著しく増加したことの一因として、一気にデジタル化したライフスタイルを上げています。人間の脳はデジタル社会に適応するようにはできていない、とも。

「ここ数年、複数のことを同時にやろうとしている自分に気づいたことはないだろうか。集中して家で映画を見ることが難しくなった。つい手元にあるスマホを見てしまう。」
「現代のデジタルライフでは、複数のことを同時にしがち(マルチタスク)である。しかし、私たちは実は一度に一つのことしか集中できない。メールを読みながら、講義も聞ける自分はすごいと思うかもしれないが、二つの作業の間を行ったり来たりしているに過ぎない。しかも、脳はさっきまでの作業の方に意識を残している(注意残余)。集中する先を切り替えた後、再び100%集中できるまでには何分も時間がかかるという。」
「マルチタスクは記憶力にも影響を与える。」
「10代は体内時計の遅延が起きる時期で、夜型になりやすい。さらに睡眠時間の減少がものすごい勢いで起きている。つまり、朝起きられない。睡眠障害で受診した人の数がぐっと増えた時期と、インターネットにつながるスマホが本格的に普及した時期はぴったり一致している。(夜、スマホやパソコンを見ると、その光に含まれるブルーライトが睡眠を抑制してしまう)」

スマホ依存症、というのは日本でも受診外来が出来るほどで、お酒やタバコと同じくらい依存性があるのではないかと私自身は思っています。

スマホを持たせざるを得ないのなら、その前によく話し合って、約束をしておきましょう。
それから、小さな子。おとなしくさせるために気軽にYou Tubeを見せる前に、他のことで気を紛らわせられないかをちょっとだけ考えてください。絶対に使うな、とは申しませんが、柔らかなみずみずしい脳に、何を注ぐかは周りの大人次第ということをわかっておきましょう。

「デジタル化が進む今、人間は自らをどんな危険にさらしているんだろうか。大人だけでなく子供まで巻き込んで、まるで壮大な実験をしているみたいだ。」と作者は書いています。
アップルの創業者スティーブ・ジョブズは「自分の子にはiPadはそばに置かないし、スクリーンタイムを厳しく制限している。」とあるインタビューで言っています。製品発表会ではiPadに最大級の賛辞を浴びせているのに、です。
 ビル・ゲイツは自分の子供には14歳になるまでスマホは持たせなかった、と言っています。それは決して、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツが金銭的に余裕がなかったためでないことは明らかです。




子どもに遺してやれるもの    ユダヤの教育に学ぶ

2018-08-31 18:29:37 | 子育てもろもろ
どんどん変わっていく世の中。
今有望と思っている会社も、もしかしたらわが子が大人になっている頃には、なくなっているかもしれません。
2020年度から教育改革が進んで、センター入試も廃止されます。
予想がつかないからこそ、今できることは何でしょう?

何をしてやれるか?と考えていつも頭をよぎるのは、ユダヤ人の教育に対する考え方です。
ユダヤ人はノーベル賞の22%、フィールズ賞の30%、チェスの世界チャンピオンの54%を占めています。
アメリカの金融界や映画界を支配しているのもユダヤ資本です。ユダヤ人は全人口の0.2%ですから、びっくりするような割合ですよね。
 


ユダヤ人は長い間国を持たない民族でした。
ヨーロッパの各地に散らばったユダヤ人たちはずっと差別され、家や土地などの不動産を持つことを許されませんでした。
許されたのは現金の所持のみ。
いくらお金を稼いでも、子孫に残すことができなかった彼らは、代わりに現金を子どもの教育に当てることを考えたのでした。
 
当時は普通教育のない時代で、字が読めるのは一部の人々だけでした。、
その時代にユダヤ人は字が読め、計算が出来ました。さらに高等教育を受ける人もたくさんいました。
そして次第に大学でも政府でも優秀なエリート層を形成していったのでした。

家庭での教育方法

 教育こそが財産、と考えるユダヤ人は、とても教育熱心です。家庭でも独特の教育を行っています。
1.幼児期からユダヤ教の聖典である「タルムード」を音読、暗記させる。
2.特に読書を重視する。母親が子どもに本を読み聞かせ、子どもに読書を強く奨励する。
3.聖書や法律の勉強をするうえで子ども同士が議論して、いかに新しい解釈ができるかという点を競い合う。従来の解釈を鵜呑みにしない。
4.自分の子どもが「絶対に伸びる」「必ず成長できる」と言葉と態度で子どもに示す。

<真の富は「知識」である。“The real wealth is portable ; It’s knowledge.”(『The Jewish Phenomenon(改訂版)』より)
迫害の歴史に遭っても、脳内に納められた知識だけは誰にも奪われることがない。

これがかれらが脈々と受け継いできた哲学です。
グーグルの創始者サーゲイ・ブリンが
「自らのキャリアは、家庭の環境による影響が大きい」と述べているように、
ユダヤの人々の成功の背景にはその伝統的な教育に対する考え方が」あるのだと思います。


教室で黙々と(時にはわからん!・・・とぶつぶつ言いながら)教材に向かっている子どもたちを見ていると、
頭の中にものすごい財産を築いている最中だ、と感じます。
時には上手く進まなくてイライラしたりすることがあるかもしれません。
すぐに進まないところは、今までと違う頭の使い方を要求されているところです。
つまりステップアップするチャンスです。
そうやって進みながら、少しづつ成功体験を重ねて、自分で自分を賢くする方法を身につけて欲しいと考えています。

教育制度が変わっても、世の中が変わっても、必要なのはまさにその力だと思うからです

素敵なママたち

2015-09-17 12:35:03 | 子育てもろもろ
こどもが、大人からしたら分かりきったことを納得しないとき・・・・・どうしますか?

明らかにわがままを言っているときは別。
でも、子どもの少ない体験からは、どうしても納得できないとき、親は邪魔くさいから「こうなってるのよっ」と言って切り捨ててしまうことが多いのではないでしょうか。
ママも忙しいですもんね・・・・。

何でこんなことを書いたかと言いますと、一月ほど前、あるお母さんとお話していてこんなことを言われたのです。
「ものすごく楽しみにしているお稽古が先日はお休みでした。
言って聞かせたけれども納得できないようだったので、一度お稽古場に連れて行って『やっぱりお休みだったね~。残念だったね~。』と言いながら帰ってきました。」


子どもは自分の気持ちに寄り添ってもらえると、いろんなことをそこから学んでくれるものですが、それには手間も時間もかかります。
このお母さんは暇な方ではなくて、教室のお母さんの中では多分一番忙しいお母さんの一人だと思うのですが、ちゃんと子どもの心に寄り添ってわが子であっても一人前の扱いをしておられる。
学習が終わって教室の隅っこで本を読んで待っている子ども。
お迎えにいらしたお母さんがそれを見ていて、読み終わるまで待ってらっしゃる・・・・なんていう光景も時々目にします。

教室の中にはこんなステキなお母さんたちが沢山いらして、こんな仕事をしていなかったらきっとお会いすることもなかっただろうなあ・・・。
手前味噌になりますが、公文がもともとステキなお母さんたちをさらに鍛えてくれた・・・と言うのもほ~~~~んの少しはあるのじゃないかなあ・・・と思っています。
だってイヤイヤ期の子どもに学習させるのは本当に大変。
楽しいときも多いけど、毎日やらせようと思ったら、大人のほうが頭を使わなくちゃなりません。(ちょっとだけ名女優になる必要もある・・・・。)

どうしたら楽しく続けられるのか。

お母さんたちの相談に乗ることが、教室に通ってもらう一番の意義だと思っているくらいしょっちゅう話題に上がるテーマなのです。
幼児コースから来てくれている子のお母さんに子どもの心が分かるステキな方が多いのは決して偶然ではないと思っています。
(もちろん大きい子たちのお母さんの中にも沢山素敵なママがいますよ。それはまた別の記事で・・・)

秋の七草   いくつ言えますか?

2015-08-31 09:49:51 | 子育てもろもろ

http://blog.goo.ne.jp/admin/newentry/#

これは萩の花です。(画像はお借りしました)

秋の七草のひとつですが、秋の七草を7つとも言えますか?
春の七草は?

最近はお正月明けにスーパーで七草粥用の詰め合わせが売られていますが、
最近の子はもしかしたらひとつも知らない子も多いのではないかと思います。
名前を話題にするだけでなく、
できたら実際に道端の草を見て
ふと子どもに教えてあげられるようなお母さんになれたらいいなあ・・・と思います。
私は七草の名前は言えても見分けが付きません。(汗)


ちなみに春の七草は 「セリ・ナズナ / ゴギョウ・ハコベラ / ホトケノザ / スズナ・スズシロ / 春の七草」
秋の七草は「ハギ・キキョウ / クズ・フジバカマ / オミナエシ / オバナ・ナデシコ /秋の七草」
と覚えます。
こんなにごろがよく覚えやすいようになっているのは、もしかしたら昔の人にも忘れんぼがいたのかもしれませんね。

子どもを育てるという大事業

2014-11-17 12:26:11 | 子育てもろもろ
何年か前の教室だよりにNHKでやっていた番組、「プロジェクトX」について書いた事があります。

小さな町工場の話、新しい農作物の改良・・・何かを成し遂げようとひたむきに努力する人たちのドラマをそこに見て、いつも感動していたのですが、その中に1つ、どうしても教室のお母様方にいつかお話したい・・・・と思いながら見た話があります。

それは、瀬戸内海に掛かった巨大な橋、瀬戸大橋のプロジェクトの責任者で、“不可能を可能にする男“といわれた天才技術者、杉田秀夫さんの話です。

瀬戸大橋は、1000メートルを超える橋の上を列車が行き来するという世界でも例のない巨大橋です。
その、未曾有の巨大橋建設のきっかけとなったのは、昭和30年に起きた悲劇の事故でした。 修学旅行中の子供達100人が瀬戸内海に消えた紫雲丸の沈没事故。
犠牲となったのは泳ぎの苦手な女の子が大半でした。「瀬戸内海に橋をかけてほしい」四国各地から切実な声が巻き起こりました。
霧が多い、しかも猛烈な速さで潮が流れる瀬戸内海に、どうすれば巨大な橋を建設できるのか・・・。
相次ぐ実験の失敗や、石油ショックによる着工凍結、本当にさまざまな困難を乗り越え、18年もの歳月をかけて、瀬戸大橋は完成しました。
しかも、完成間際に杉田さんの奥様が病気になられ、亡くなったので、看病、3人の幼い娘たちの世話・・・・完成した橋を見上げる杉田さんの心中はどんなものだったろうと思いながら見ていました。

ここまでは、プロジェクトXのほかの話と同じような内容ですが、ここからがちょっと違います。
全国に、ここに杉田あり、と絶賛されその技術を嘱望されながら、杉田さんは、瀬戸大橋の仕事を最後に、現場からも、大きな講演の場からも退いて時間の都合のつく仕事にかわってしまうのです。3人のお子さんたちを自分で育てるためでした。


「偉大なる人生とは何か。橋を作るよりももっと難しい人生がある。」

大きな仕事をなす事は、後世のために大切な事だけれども、子どもを育てるというのは、それに負けないくらい、大きな大切なプロジェクトなのだと思います。
でも、はたして私たちはその覚悟で子育てをしているでしょうか?

 自分の子どもをこの手で育てられる幸せとともに、その責任の大きさも、考え直してみたいものだと思います。