分県(廃棄物対策課)にも通報を怠り、その確認を放棄しているとなると、そのまま毒性の500トンを八代海に投棄したという想定もされるが、それを否定できる材料は同対策課には不存在という状況にある。
ヒ素等の基準値を大きく超えた毒性を含んだ鉱滓の500トンが、八代海に沈められたとすると、漁業関係者はもちろん県民の健康と生活は誰が保障するのか。
「健康被害の懸念されるものではなかった」と仮に反論が出ると、「なぜ撤去したか」という幼稚的問答にまで再び話は戻る。
「海で生活を営む者には真相が必要で、そこでU氏を呼んでの事情聴取を求めると、『警察から喋るな、と口を封じられている』というので逆に不安」(倉岳町漁協幹部談)
当然な懸念である。
U氏、また該当の事案で対応処置、いや接触した廃棄物対策課には「漁協に対する説明責任」が存在するわけで、自らも捜査対象とする刑事課ならともかく、不可解な生活安全課の名称まで登場させて逆に情報を封じさせるとは実に理不尽な話。
鋳物廃砂、また鉱石から金属を製錬する際において、対象の金属から熔融によって分離した鉱物成分等を含む物質を鉄鋼スラグというが、これらは鉱滓といって産業廃棄物(環境省産業廃棄物課・日本産業廃棄物処理振興センター)。六価クロム鉱滓での公害問題がその例で、鉱滓埋立地付近の住民から問題提起されて国会でも問題となったが(昭和50年)、そんな背景もあって産業廃棄物として遮断型の埋立処分場において最終処分されることになった。
そこで県廃棄物対策課の「産業廃棄物ではない」という見解だが、実は先述の鉄鋼スラグ協会が推進しているようなリサイクルによる再利用も確か。
ところが日本工業標準調査会(JIS)、また県建設技術センター辺りでの試験をクリアできない資材が多く、また土壌汚染等の懸念から公共工事等からは除外(福岡県道路維持課)される状況。
すなわち規格外とされる物質はリサイクル未処理で、常識的には社会的に認知されない有価対象外ということになり、ここで同対策課の見解は崩れることになる。
そして「食に有害な物質を含むとなると適切な指導、監督を要する」(厚生労働省化学物質調査課)ということ考えると、同対策課の「自主撤去」という第3者的な姿勢には疑問符が打たれる。
いずれにしても八代海に面する天草市倉岳町棚底の海岸において、ヒ素等の毒性(正常な環境を維持する上で設けられた基準値を超える)を含んだ500トンもの廃棄物が、そこに搬入されて海水と混合して、また10トン程度は海中に沈下。
しかも撤去後、それは八代海に不法投棄された疑いも想定されて今後、生態系に与える影響も懸念されるが、同関係者と接触した県廃棄物対策課は、漁業関係者へはもちろん、県民への説明責任が求められる。
環境問題には風評被害も予測されるが、そうした原因が冒頭の「害をもたらす悪、それを包み隠す悪」であって、その検証を県民に促す上でのレポートとした…。
付記資料
蒲島郁夫知事公室(電話096・333・2010 FAX096・387・0090)