熊本レポート

文字の裏に事件あり

崇城大学(ホンダフライングスクール)でANAという噂!?

2013-02-05 | インポート
 言葉は同じ「教育」でも、公地の無償使用、公金によるPR、別会社での利益捻出で増長したか、養成はホンダスクールヘの委託でも県の支援、「就職はANA」と嘘八百で2000万円の学生を掻き集める愚劣な反面教師…。
 地方都市の川辺にあるホテルのロビーで、
「入学案内に編された」
 就職して間もない青年は目を閉じて独り言のように呟いた。
 希望に燃えて大学に入学して、途中で不備な環境に察しはしたものの、卒業後の就職先は大学の入学案内とは大きく掛け離れていて、満足のいくものではなかったと、そう振り返って語った。
 平成24年4月、学生の就職率は前年同期を2.6ポイントほど上回って93.6パーセント。
 失業率4.5パーセントを超える不況の中からは、
「甘えたことを言うな」と反論も予想されるが、入学金や学費、それに学生の生活費等を合わせて2000万円もの大金を投じて希望した大学を卒業し、その就職先が入学案内の通りには適わなかったとなると、その本人だけでなく、父兄にあっても愚痴の出るのは当然。
 過大広告で招いた大学はもちろん、その責任は問題の大学へ入学を薦めた高校にも存在する。
 これは特定の大学だけを指しているわけてはないが、特集してきた「崇城大学の虚像と実像」にもこうした点で疑問符が打たれる。

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 昨年6月、能本県は崇城大学(中山峰男学長・熊本市西区池田4丁目)と「パイロットのふるさとづくり等に関する包括連携協定」を結んだ。
 簡単に説明すると、これは「崇城大学は今後の需要を想定して『熊本県がパイロットのふるさととなるようにその養成に務める』、そして県はそれを支援、協力する」という趣旨。
 ところが、これは明らかに絵に描いた餅。
 国土交通省航空局の幹部職員も、個人的な見解と断って「熊本県は航空情勢、行政もそうだが、崇城大学の教育環境、現実を承知していないのではないか」と、同協定の真意を疑って語った。
 受け取り方では、「乗せられた熊本県」とも理解される見解。
 乗せられたという読み、推察の解説、また我が国のパイロット養成における現状等を説明するが、その前に対象の崇城大学宇宙航空システム工学科パイロットコースについて、「店子が教育に努めている」ちヒントを与えてくれたのが航空局。

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 国内で唯一、空港にキャンパスを置き、ラインパイロットの養成という触れ込みの同大学空港キャンパス(菊池郡菊陽町戸次)には、本田航空株式会社(広瀬文郎社長・埼玉県比企郡川島町)の熊本事業所(運航グループ・整備グループ)が同居している。語られた店子とはこの同社。

Honda

「学生の単発機での操縦訓練と整備は当社との委託契約」
 本田航空側は同委託契約を認めた。
 崇城大学サイドから漏れていた「委託料が高額」という話を投げると、「教授の身分保障も当社への出向社員という経理関係にあって、それを承知していない人の不正確な発言」(本田航空サイド)と意外な話まで返ってきた。
 これについての問題点は後に置いて、同大学におけるパイロットコースの教育、及び訓練機等の整備が本田航空の代行であることは明らか。
 航空局側の話に戻すが、崇城大学は単発機等での『航空機使用事業』(航空法第123条)の許可を得ていないのである。
 そこで、代行役に引っ張ってきたのが本田航空。
 市民的な解説となると、入学案内で「就職先はANAフライトラインテクニクス」と過大広告で学生を募集し(初年度学費約300万円)、しかし教育は本田航空に任せてのパイロット養成。
 単発小型機でのパイロット(旅客、貨物)を目指すなら何ら問題はない。また測量、報道関係と需要は少ないながら存在し、努力次第では就職の道もないわけではない。
 ところがJALやANAのエアラインパイロットとなると、どうか。
 パイロット養成の学校は崇城大学の他にもあるが、JALやANAのラインパイロットヘの道は大卒者の自社養成と、短大卒以上の独立行政法人日本航空大学(宮崎市)に限定されるといっても過言ではない…。
 JALの場合、経営上の問題から新規募集をストップしていたが、それ以前及び直近の回答によるとJAL、ANAの大手航空会社のエアラインパイロットは、日本航空大学出身者が約5割で自社養成の方が約4割。残りの1割が防衛省(航空自衛隊)出身と、その他となる。
 ANAの自社養成への道は東大、京大、慶大など進学予備校のランクで74ポイント以上(崇城大学48)の大学出身者が、競争率300倍で合格を目指す難関のコース。
 アメリカでの教育実習を含めて、その環境は充実しており、しかも給与を貰いながらのパイロットヘの道である。
 一方、国立大卒者が改めて入学する航空大学の場合は、入学料約28万円、授業料約73万円と国立だけに学費は安いが、ここもレベルは高く、合格率は10倍。
 高額収入、社会的な地位もエリートと称されるエアラインパイロットだが、一方では五百名もの人命を預かるパイロットであって、心身ともにハイレベルの能力が求められるのは当然。
 昨年、崇城大学は四名の卒業生をスカイマーク社へ送り出したが、乗客の立場で考えると彼らの現状は推察通り。
 ちなみにスカイマーク社の給与は、約十年を要して操縦士になってもJAL、ANAの4分の1以下である。
 断っておくが、JALやANAのパイロットが測量会社や報道機関の単発機の操縦士よりも人間的に偉いとか、偏差値の高い大学が、それよりも低い大学に比べて全てにおいて優れていると評価するわけではない。
 問題だ指摘するのは、学生募集で想定すら無理な『就職先はANA』という虚語で学生を集めて、「年間300万円もの学費といいますが、食費等の生活費を加えると四年間で2000万円の支出」(父兄談)という多額の負担を学生に強いて、教育は民間操縦養成所に委託し、広告とは大きく異なる企業に送り出す大学の倫理観。
 見方によっては「騙された犠牲の学生」ということにもなるが、その責任はどこにあ
るのか。
 全ては大学サイドの都合上の運営で、それが最優先されているとはいえないか。
 そこで同大学側が「熊本県も支援、協力を約束した」と躍起になるのは分かる。
 だが県も一体となって、『くまもとをエアラインパイロットのふるさとにする』といっては、「くまモンの戯言か」と笑われる…。(平成24年3月19日発行の「問われる崇城大学の教育」を参照)