撤去された該当物質が産業廃棄物であった場合、そこに有価の商取引が存在しても該当地は合法的な処理場ではなかったわけで、そこで実行された行為は「産業廃棄物の不法投棄」となる。
当然、廃掃法25条において5年以下の懲役、もしくは1千万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下)が科せられるのだが今回も、その話が出て来ないのだ。
そこで先の確認から10日後、同衛生環境課に「なぜ撤去となったのか」と尋ねると、 「食に害をもたらす物質であった」 その理由を答えた。
続けて「違反行為での罰則は?」と質問を投げると、 「自主的な撤去で、それに産業廃棄物ではなかった。後は廃棄物対策課へ尋ねてくれ」
意外にも居直った。 遠路(海)はるばる500トン以上もの土木資材を半年以上も搬入していながら、急にそれを自主回収して再び運び帰るなんて不可解、実に奇々怪々な話
この天草広域本部衛生環境課から本庁廃棄物対策課へ事案を移してからの自治行政については、筋書きが余りにも阿呆らしく、理不尽なので、その想定を簡単に紹介すると、 「搬入物質は底上げに必要とした『有価対象の土木資材』であったが、同資材に『食に有害』な物質が含まれていることに該当業者が自ら気づき、そこで速やかに撤去に入った」 理解の難しい論理の話だが、廃掃法に無縁 の、いや同対策課及び該当業者らにとっては実に都合の良い終結。
余談、いや相手によっては余計な話になるが、旧天草町議会議長の廃棄物不法投棄では二年も動かず結局、住民の告発を受けて警察が摘発し、阿蘇市での同不法投棄では住民の通報を受けていながら検証の立ち会いにも出て来ず、益城町におけるシュレッダーダストの不法投棄には、「旧法時代の出来事」で終止符を打ったのが熊本県廃棄物対策課。 再々の棚上げ状態には濃度の違いこそあっても係わりの多いマスコミ、市民グループの大方が「不可解な職務怠慢」と不信の印象にあるのが、この同対策課…。
「徳島県警が来熊しての摘発事件では県環境の大幹部、自民党県連幹部まで噂に上がったが、一担当課の問題ではないのではないか」 罰金を巡っての裏談合説、産業振興部局との恩情説と、不信の話は疑惑として拡がっていくが、ここはともかく話を戻して論理的に納得のできる解説を始める…。
先ず同対策課も「食には有害」と認めた物質とは何だったか、である。 現場から持ち帰ったその現物の確認と分析を大学理学部と、民間の試薬分析センターに求めた。
まず物質が何であるかだが、製鉄所かまたは製錬所で金属製の物質と一緒に燃焼された石炭の燃え殻(冒頭に紹介したクリンカアッシュ)と、そういう見解も出た。
「クリンカアッシュとは断定しないが、仮に石炭の燃え殻なら火力発電所で排出された石炭の燃え殻ではなく、金属の有毒物と結合している燃え殻」 ところが、意外なところから答えが出た。
「鉄鋼スラグ、鉱滓(金属の製錬中に鉱石から分離されるカス)といって産業廃棄物。しかし再生利用ということで、舗装工事におけるアスファルト下の基礎等に使用したこともあったが、後で亀裂が入ったりと不良品(再生)もあって、土壌汚染につながるとかで今は、公共工事には使われていない」 舗装工事業者による結論。
確かに、先述の搬送業者とされるK海運の看板には「鉄鋼スラグ」とあった。
それより肝心なのは、含まれている有害物質とは何か、である。 「総水銀、ふっ素は微妙な数値にあるが、ヒ素については基準値(水質、土壌関連法)の2.2倍を超えている。生態系には影響の懸念される有毒が含まれている」 この回答は、当初の天草広域本部衛生環境課による「食に関して有害」と、一致した見解。その有害な500トンの搬入である…。
ヒ素については森永ヒ素粉ミルク事件がある。戦後まもなく1万3千名もの乳児がヒ素中毒になり130名以上の死者が出た。
ヒ素を含んだ500トン余りの物質が海と接する養殖場跡地に搬入されて、撤去されたというが、海中には少なくとも10トンは落下、沈殿し、未だ50トン余りは現地に放置されたままである。
岸壁に打ち寄せる波の動きに合わせて、養殖場跡地の水も流れを見せたが、堤防のどこかで合流しているのも確か…。
↓12月8日の第3弾へ続く・・・