熊本県上益城郡5町のごみ排出量は100トン/日と想定されているが、最終処分場計画(同山都町東竹原)に始まった住民の反対運動は、この一般廃棄物の処理に反対している訳ではなく、彼らは自治行政の自己責任への抗議。
(大栄環境グループによる近江市の処理施設70トン/日。中身は三菱重工グループ)
(熊本日日新聞)
厳しい地方自治体の財政上による問題もそうだが、処理施設の用地問題から環境アセスについて厳しく周辺住民から問われるとなると、この環境インフラ整備は放棄出来るのであれば放棄したいというのが各自治体の本音。
そうした中、この上益城郡5町に降って湧いたように浮上したのが「民間企業への委託」(PFI)。
(大栄環境グループによる近江市の処理施設70トン/日。中身は三菱重工グループ)
しかも「民間企業から提案があった」と、同整備推進に向けた覚書の締結に蒲島県知事が立ち会ったとなると、該当の上益城郡5町にとっては両手を挙げての万々歳。リーダーシップが感じられたのは「くまモンと出演した吉本新喜劇くらい」といった見解が出ても、上益城広域連合の行政責任に熊本県も加わったとなると、同5町が安堵するのは当然。
だが、その提案が5町の誰を通じて県に持ち込まれたかは全く不透明で、処分場建設計画で住民説明会の開かれた同御船町(同上野)でも中身は判然としない内容と語られる。
それもそのはず、誘導の1人と推察される山都町でさえ同町広報誌で委託予定の大栄環境グループ(大阪府)について、「日本最大手の焼却処理施設メーカー」と紹介(数ヶ月後、それを指摘すると処理施設運営会社と修整)。
上益城広域連合(5町)が計画(同御船町上野)のごみ焼却処理施設は100トン/日だが、1トン当たり8000万円というメーカートップグループの試算からだと約80億円。これを地方債、その交付税措置からだと約37パーセント、即ち実質約29億6000万円の建設費と想定される。勿論、これに同額程度の運転管理費(耐用年数25年間)が必要となる。
それでは委託先となる大栄環境・石坂グループ(熊本市)の試算はどうかというと、建設費139億円と見積し、それでも上益城郡5町の「初期投資は12億円で済む」とアピール。
その差は17億円だが、大栄環境グループの12億円は「耐用年数25年間での初期投資」であって、この後25年、その差17億円を超えないという保証はない。
ところで建設予定の焼却処理施設は、産業廃棄物焼却処理の300トン/日を含めて合計400トン/日規模だが、その400トン/日の焼却灰を何処に搬送し、最終処分するのか。
その最終処分場が、星山商店(熊本市)の計画する山都町東竹原であったのは明らか。
(熊本日日新聞)
しかし場所が運悪く、かって同県廃棄物対策課も「産廃の不法投棄容疑」が掛かった情報を把握していた山林を含む計画地。現在、それは休止した状態にあるが、それを同県同部の環境保全課が開発申請を受理。
環境アセスどころか、「産廃の不法投棄が事実なら造成、整備の建設途中で有害物質が流出する可能性もある」「専門の某准教授談)と懸念される計画地。
しかし、これが先述した熊本県の環境インフラ行政での裏。
1日に100トンの一般ごみ焼却灰どころか、400トンの排出された焼却灰を大分市や北九州市のセメント工場に搬送すると、コスト高だと自治体に泣き言どころか、PFIの失敗事例になる可能性もあると懸念される。
そこで事業推進に立ち会った以上、熊本県は山都町での最終処分場建設に責任が持たされるが、ハッキリ言うと、熊本県にとって山都町の最終処分場は必要不可欠な事案。
ところで補足となるが大栄環境グループは、静岡県御前崎市議会から決議されて処理施設を撤退し、また兵庫県赤穂署には森林法違反容疑で告発されているが、これらは関係住民に注視される点。
上益城郡で浮上した焼却処理、最終処分場の反対運動は、彼ら自身が「一般廃棄物の処理は地方自治体固有の義務」と語る通り、廃棄物の処理そのものに反対している訳ではない。
問題なのは何百億円も動く環境インフラ整備において、奇々怪々と評される程のそこでの不透明さであって、これが実のところ熊本県の環境インフラ整備を潰して来ていると、そうした見解を否定するだけの材料があるか否か…。