熊本レポート

文字の裏に事件あり

熟柿の落下期待型で崩壊する熊本県の福祉

2013-12-25 | ニュース

 約1000兆円という超膨大な借金を語るまでもなく近い将来、日本の福祉はそうした「財源不足」から危機的状況を迎える。ところが一方、特別老人ホームの「余剰金2兆円」という極めて矛盾した現象をご存じだろうか。
 支出する国の方は「金がない」と渋い表情を見せる中、公的資金の支援を受ける福祉施設には「金が余っている」となると、これは矛盾というより異常的な現象。その元凶は誰かとなるが、これは福祉を授かる利用者と、財源として支出する国民との中間に存在する者で、それは明らかに行政と運営者による問題。
 熊本市は昨年10月、元市長が理事長を務める社会福祉法人G会(熊本市北区龍田)が1990年と2002年において、実態のない架空の工事代金6千万円を建設会社へ支出していたと、その不明朗な会計を指摘、指導。
 続けて今年の4月、同法人が運営する三施設で、不正配管を設けて井戸水の取水量を誤摩化し、下水道使用量の一部徴収を免れていたことも指摘。
 一方、熊本市外の社会福祉法人を管理、監督する熊本県健康福祉部はどうかというと、表現を換えて「熟柿の落下期待型」である。
 それはOBの再就職候補先として露骨な違法、破綻寸前まで待機するという行政の私的パターン。
 オフレコながら元担当職員が「明らかに問題と事例を報告しても、それは『指導要項までには至らず』と却下される」と語ったが、その却下された二例を紹介する。
 合志市から大津町に向かうルート30沿いに立てられた看板が、二年して大きく変化。
 写真で紹介の通り大きさが5分の1以下に縮小されて、内容も謙そん気味なイメージに様変わりした。

P15

P15_4

 それが指導の結果かということになるが、看板の主は社会福祉法人S会(菊池郡菊陽町)。
 同法人の目的は「相当程度の作業能力を有する精神障がい者に対して、社会復帰を目指すことへのサポート役」である。
 だが、同施設利用者の保護者から一昨年、同法人が「大衆浴場をスタート」させたと疑問視する声が届いた。丁度その頃、同法人は「社会福祉法人の資金が立て替え金という名目で法人外(理事長夫人が経営の有限会社)に流出」と、県が速やかな回収を求めていた時でもある(改善指導は2009年)。
 さて、その大衆浴場だが開業の際は折込み広告が菊池郡内に配布され、インターネットでも紹介されて源泉掛け流し、露天風呂、貸し切り風呂、サウナ、また料理長の提供する御膳と、明らかに一般市民向けの保養、娯楽施設。極論の言い換えだが、宗教法人によるパチンコ屋の開業である…。
「社会復帰への指導、訓練場所では…?」
 当時、未確認であった県の担当課は逆に質問を返したが授産施設、すなわち障がい者の社会復帰をサポートするような施設とは想定できない環境設備。
 ここで問題なのは逆質問がそうだが、開業して一般の健常者に広告で案内されても指摘が「初耳」であった県健康福祉部。
 社会福祉法人の理事長が、営利事業(大衆浴場及びサウナ、レストラン等)に精を出すことを禁ずる法律はない。
 しかし社会福祉法人の施設内における利用者外の営利事業、そして基本財産の担保提供(銀行)には問題があるのではないか(社会福祉法人定款準則14条)というのが疑問。
「事業欲旺盛な理事長で、高級車で現れる夜の街では常連」
 事業プランへの協力を打診された建設業者は、一般市民が描く社会福祉法人の理事長とは少し異なると語った。
 社会福祉法第1条の目的に「公明かつ適正な実施の確保」という一項がある。同事業が公金で運用される以上、その確認、知る権利は国民の誰にでもある。
 その透明性のために管理行政は何をすべきか。極めてレベルの低い注文となるが、それが義務、責任として県健康福祉部には求められているのではないか、 
 そういう事案の基本をあえて市民からの疑問として続けるが、美里町の建設業者から「20年前から施設の建設、改修を特定の業者へ継続発注している社会福祉法人」という話もある。
 公的資金の提供が存在するわけで、社会福祉法人の発注には透明性もある競争入札が義務づけられている(公益性からの公平性)。
 社会福祉法人S2会(間美里町二和田)は2011年、嘉島町上仲間の約258坪に老人ホームを建設して2012年4月、それを特別養護老人ホームとしてオープン。
 その施工業者が、該当地の建設業者が名指ししたM建設(熊本市東区)。
 同社会福祉法人が開設された1994年、特別養護老人ホームを建設すると次は在宅介護支援センター、そしてグループホーム、高齢者生活支援ハウス太陽の丘、ヘルパーステーション、それにコミュニティーハウスと、先述の特別養護老人ホームまで全て実施された入札での落札者、施工受注者はオールM建設。
 約20年間において実施された7件の建築工事及び改修工事の入札で、落札したのは全てM建設。果たして「偶然の結果」であるのか、それとも「異常的な事例」か、ということになるが、一般市民の間でも不可解に思うのは当然。
 ここで「何が不信なのか」という不満はともかく、「関知する権利がどこにあるのか」といった該当者サイドからの不可解な疑問に応えると、それは『社会福祉法人が国民の支出により運営されている』(厚生労働省老健局高齢者支援課)という背景で、これに『要らぬ世話』の姿勢では福祉事業の認識の上で極めて問題。これは、先述した「社会福祉法第一条の目的」にある。

P17_3

 そんな中、継続受注の三津野建設には「名誉施設長(同社会福祉法人の理事)の娘婿が幹部社員として在籍」という話が、同競争入札で参加歴を持つ建設業者から入った。
 厚生労働省が定めた社会福祉法人定款準則第九条第七項に「特別の利害関係を有する理事は、その議決に加わることはできない」と定めている。
 これについて県健康福祉部高齢者支援課は「理事本人が建設請負業者である時は『利害関係』といえるが、娘婿の場合は利害関係とまではいえない」と回答。法律の趣旨か、解釈かという違いになるが、熊本県の「問題があるとは言えない」とは冒頭の予想通りの見解。
 厚生労働省の担当官は「管理、監督行政が地方自治体に委託されている以上、見解を出せる立場にはないが、問題は公益性の事業面から公平な入札が行われたか、どうかが焦点」と語ったが問題は、その指導、監督行政。
 ところが、この開札調書と報告書について熊本県は「保存期限超過で破棄」と回答。
 双方に不満は残るが、市民に福祉事業を考えてもらう「絶好の事例」であることは確かで、今後の福祉を懸念するあなたは果たして納得しますか…。


地方議会の壊死 第二回・誤ちを合法化した菊池市議会の遵法

2013-12-17 | 社会・経済
 政治家は議員バッヂを付けてナンボの世界。とはいえ、議員立法をもって後世に遺す施策を執行部に実行させるわけでもなく、マスコミから注目されるほどの調査能力を発揮し、執行部の過ちを鋭い指摘で軌道修正させるわけでもないとなると、厚化粧の容姿か薄っぺらの芝居で情を買っての四年間の生活保障とはいえないか。
 公金が絡む法人の発注契約を含めて、公的機関による売買、賃貸及び請負その他の契約については「性質的に競争を許さない場合と緊急を要する場合」を除き、そこには公告しての競争入札を要する(会計法第29条の3)。そして、そこには公正な実施が求められる。
 特別的な関係を有する業者への発注を意図として、その業者が目的の遂行をもって談合の可能な業者だけを代行指名し、十五年以上も思惑通りの発注契約を結ぶなど違法なのだが、こうした例を挙げるまでもなく、コンプライアンス(遵法)に最も欠けるのはその管理、監督の自治行政。
 その地方自治体が国の施策において推進してきたのが、「デジタル防災行政無線(同報系)の統合整備」。アナログ400MHz帯で満足する移動系防災無線があるにも拘わらず、なぜ何億円も経けて260MHz帯のデジタル化が必要なのかとか、何10億円も投下して28年5月までに消防救急無線のデジタル化を急ぐ理由とは何かなど、当該の自治体からも疑問の声は挙がるが、その整備に入っても上天草、山鹿市議会でも発注に関して疑問の声が出た。
 ところが大方の自治体には、こうした事業計画における十分な理解者は少なく、膨大な金額の事業にも拘らず、メーカーとコンサルタントの思惑に極一部の者が加担して、この三者で冒頭の会計法第29条の3が棚に上げられるというケースも少なくはない。
 その一例が菊池市、同議会である。再々の繰り返しになるが、性能や技術的にパナソニックや富士通よりもNECの機器、設備が劣るという話ではなく入札、発注における問題点で会計法上の疑惑。
 発注側に突き付けられるコンプライアンスの問題である。
 なぜ疑惑が発生するのか、というと当然、そこには膨大な事業費が絡むという利害関係にある。
 ところが先述の三者の中で、最もコンプライアンスに敏感なのはメーカー。市場3・3兆円の世界といわれ、15億円規模で年間330億円規模の行政無線市場から外されるとなると、無法の独走に緊張するのは当然。
 しかし残りの二者の談合が成立するとなると、そこには極めて強硬な社会正義でも発生しない限り阻止は無理だといえる。強硬な社会正義と例えたが、実は極当たり前の責任と義務であって、それが盲判的な自治、議会であれば当然な不始末となる。
 隣接の他二市でもいえるが、菊池市も同整備計画のコンサルタントは電子技術応用(立山則生代表・菊池市泗水町吉富)。

P5_4 同社の人事構成に「元NEC社員が存在」(某メーカー談)という話もあるが長年、同社が同市旧泗水町、七城町でNECによる機器、設備(既設の防災無線機器)のメンテナンス業務を請け負ってきたのは事実で、NECと同社は長期的な親子の事業取引関係にある。その主従関係から何が想定されるか、それが懸念される第一の問題点。そして後述もするが、同市にもそれを承知していた専門職がいた。菊池市はメーカーへの発注へ向けた入札の際、その入札参加条件として他事業と同じく「本工事の設計業務等の受託者と資本若しくは人事面で関連のないこと」を明記。
 他二市とは違って、当該地での長期的な取引関係が上に担当、もしくは順当するか否かの判断となるが、公共工事の発注にはより公正さが求めれらるという趣旨からだと、「NECの除外」は明らかに判断以前の正論。
 そして先述の通り、菊池市にも事前に右を承知していた職員が存在。その懸念が却下されたとなると、同内部にその疑惑を却下するだけの権限を有する者がいたと想定されるのではないか。そこに直ぐ「利権」が存在と断定するのではないが、歪んだボランティアの実行者が確かに存在した。
 第二番目の疑惑は、「仕様書におけるNECへの絞り込み」である。
 推進された県内の防災行政無線を振り返るとNTT、九電工等の工事業者へ発注され、設計と仕様書に沿って機器。設備等については各メーカーから購入という事例も多い。
 メーカー発注となれば、メーカーを中心に介入する者には、競争する工事会社の下請け選択まで魅力となるが、仮にメーカー発注の場合も善し悪しはともかく、不足の機器は他社からの購入という策で補った。
 ところが菊池市の場合、入札参加条件として「自ら製造しているもの」とした…。
 電子技術応用が作成した仕様書には、主要機器の中で「18GHz帯の機器」を指定。この18GHz帯の機器というのは東芝、三菱電機、沖電気工業、パナソニック、NEC、日立国際電気、富士通の大手七社の中で自ら製造しているのはNECの一社。

P6

 そこに従来の整備事業とは異なって、「他社(NEC)からの購入禁止」(自ら製造しているもの)と入札条件が限定されると、これは「発注先(NECへ)の絞り込み」であり、これで果た
して公正な入札が行われたといえるかどうか。一般市民でもこれは判断が可能とはいえないか。
 だが、菊池市議会は「違法に相当する疑惑を合法化」して契約を承認。内部において仮に三者の一者が存在していたとしても、この盲判議会は同罪で、菊池市議会への信頼を失わせたばかりでなく、地域社会での社会正義の危うさを青少年まで見せたともいえる。
 もちろん入札の戻しとなると、補助金の繰り越しだけでなく、膨大な市場への影響から「どんでん返しでの受注」という汚名を懸念し、NEC以外のメーカーからも敬遠されるという予想も浮上して、困難な事態が想定されたのも確か。
 しかし自治体がバックボーンとするのは遵法であって、その責任所在は明らかにし、そこにペネルティを科する必要はある。それまで避けるとなると最早、それは菊池市、同議会の壊死ということにはならないか…。