"道化恐怖症"という言葉があります。いわゆるピエロのメーキャップやしぐさに親しみでなく、隠された素顔を連想してしまって恐怖を感じる現象のことを言うらしいです。
恐怖症、とまではいかなくてもピエロの姿に楽しさより怖さを連想してしまう人は結構いるのではないでしょうか。それは新作映画も公開予定の「IT」の影響でしょう。IIT自体を見ていなくても、ここに登場するピエロの姿をした悪魔ペニーワイズを模倣してピエロを悪魔や恐怖の対象として書いた作品は多数作られたため、それらを通して間接的に影響を受けている人は少なくないと思います。まして日本ではいわゆるピエロはマクドナルドのキャラクターを例外としてそれほど馴染みのある存在ではありませんから、ユーモアより怖さが先行してもおかしくないでしょう。
先日BDが発売され、今回取り上げた映画「キラークラウン」はそうしたピエロが恐ろしい存在として描かれる映画ですが、実は「IT」がテレビ映画として公開された1990年よりも早い1987年製の映画です。なので直接影響を受けた映画ではありません。が、ITの原作小説は1986年にすでに発売されていましたし、おそらく映像化も予想できたでしょうから、その先手を打つ便乗映画であった可能性は高い作品です。なお、クラウンとはピエロのことです。
レビューなどを見ると、内容は50~60年代のチープなSF映画をモチーフにしたバカ映画。登場するピエロは宇宙人で、愛すべき内容だが全編悪ふざけ・・・という印象をもっていました。もちろんその手の映画は大好物ですので、発売が決まった時は即飛びついて、届くのを待ってさっそく鑑賞。うーん、何か思っていたのとは違う映画でした。
と、言ってもほぼ全面的、特にストーリーはそうした典型的バカ映画を狙っています。田舎町(B級映画の典型的舞台)サーカスのテントのような建物の中で多くの人がつかまり、殺され、綿アメ状の物質にパックされて食糧に変えられている様を目撃した主人公たちはピエロが撃つポップコーン状の銃に襲われながら命からがら逃げだし、地元の保安官に助けを求めに行きますが、如何せんキーワードが「サーカスのテント」「ピエロ」「綿アメ」「ポップコーン」なため、全然まともに取り扱ってもらえません。やがて街にやってきたピエロたちは悪ふざけをしながらものすごい力で人を殺し、ある時は不思議な芸でひきつけた人をまとめて捉え・・・といった内容でした。登場人物描写やストーリーはともかく見せ場であるピエロの暴れっぷりは案外地味で、かつわたしの目にはかなり生真面目に作ってあるように見えました。特に特撮の出来はB級映画としては良好です。ピエロは多数登場しますがアンバランスさを出すためかメーキャップを使わず全員被り物、それでいてちゃんと表情が出せるように作ってあるのです。しかも似てはいても全員別々のデザインとなっており、非常に凝っています。悪ふざけの芸の一つに影絵を操るシーンがあるのですがこれもストップモーションアニメを駆使して丁寧に作ってあり、登場人物のモブでなくても目を引かれるもの。クライマックスに出てくる巨大ピエロは9メートル前後という絶妙な大きさで、ワゴン車破壊もミニチュアを感じさせないなかなか見ごたえのあるものになっていました。これら特撮シーンからはむしろ作り手の生真面目さを感じます。実際監督・脚本を手掛けたキオド兄弟は「コクーン」シリーズなどで特撮を手がけた専門家とのことですし、お手伝いのスタッフも一級の作品の経験者が多く、安易にB級と称するにはもったいない出来の良さです。
本作に登場するピエロたちは会話ができる相手なのですが交渉は一切通用しない相手です。作中で殺した人間を腹話術の人形のように操り、一方的に「みんな殺してやる」と通告するシーンがあるので地球人側の言語を解するのは確かですが、会話する気は毛頭ないのです。知能は高く、殺傷能力は圧倒的、なのに人間を搾取の対象くらいにしか思ってない、会話ができるのに通用しない、ある意味もっとも恐ろしい存在です。
こうした怖さを徹すればホラー映画として完成されたものになったかも知れません。が、どうしてもバカ映画にしたかったのか、店の品物をかたっぱしからひっくり返すだけで殺傷や捕獲につながらない悪ふざけがあったり、パイ爆弾は人間をドロドロに溶かして骨だけにしてしまう破壊力があるのにポップコーン銃はまったく威力がなかったり・・・。なんか全体を通してチグハグな印象を受けてしまいます。特撮シーンに感じた生真面目さが本来のこのスタッフなんだろうなぁ。脚本や打ち合わせの段階はともかく現場では真面目にふざけられない人たちなんでしょう。それゆえ、バカ映画ともホラー映画とも中途半端にしか感じられない映画でした。どちらかといえば特撮映画として楽しむものだったでしょう。
なお、「キラー・クラウン」と呼ばれた人物はかつて実在しました。33人もの男娼を中心に20歳以下の少年ばかりを殺したジョン・ゲイシーです。詳細はリンク先のWikipediaに詳しく書いてありますが、あまりにもホラー映画そのものの人生で、細部は少々盛ってあるでしょうが全体を見ても実在したことが信じられないような人間です。平日は実業家として忙しく働き、休日にはピエロの「ポゴ」に扮してパーティーや福祉施設を訪れる、尊敬される子供たちの人気者。その正体は男色の殺人鬼・・・。事件が発覚したとき、ジョン・ゲイシーはマスコミから「殺人道化、キラー・クラウン」と呼ばれました。まさにホラー映画の世界です(ジョン・ゲイシーそのものを描いた映画も作られていますが、残念ながら日本未公開)。おそらく「IT」も、そして本作「キラークラウン」は間違いなくそのジョン・ゲイシーから影響を受けているでしょう。だからこそユーモアの中にある恐ろしさを描くことに徹していれば、もっと面白い作品になっただろうなぁ・・・。もったいない作品です。実際公開すぐに劇場から姿を消してしまったそうですが、テレビ放送で繰り返されるうちにカルト人気が出てこんにちまで生き残っている、人によっては絶賛する作品でもあります。ただ、わたしとしては届いた即日鑑賞してブログに書くまでの時間の長さが評価の点数かなぁ。
恐怖症、とまではいかなくてもピエロの姿に楽しさより怖さを連想してしまう人は結構いるのではないでしょうか。それは新作映画も公開予定の「IT」の影響でしょう。IIT自体を見ていなくても、ここに登場するピエロの姿をした悪魔ペニーワイズを模倣してピエロを悪魔や恐怖の対象として書いた作品は多数作られたため、それらを通して間接的に影響を受けている人は少なくないと思います。まして日本ではいわゆるピエロはマクドナルドのキャラクターを例外としてそれほど馴染みのある存在ではありませんから、ユーモアより怖さが先行してもおかしくないでしょう。
先日BDが発売され、今回取り上げた映画「キラークラウン」はそうしたピエロが恐ろしい存在として描かれる映画ですが、実は「IT」がテレビ映画として公開された1990年よりも早い1987年製の映画です。なので直接影響を受けた映画ではありません。が、ITの原作小説は1986年にすでに発売されていましたし、おそらく映像化も予想できたでしょうから、その先手を打つ便乗映画であった可能性は高い作品です。なお、クラウンとはピエロのことです。
キラークラウン ―HDリマスター版― [Blu-ray] | |
グラント・クレイマー,スザンヌ・シュナイダー,ジョン・アレン・ネルソン,ジョン・ヴァーノン,マイケル・シーゲル | |
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レビューなどを見ると、内容は50~60年代のチープなSF映画をモチーフにしたバカ映画。登場するピエロは宇宙人で、愛すべき内容だが全編悪ふざけ・・・という印象をもっていました。もちろんその手の映画は大好物ですので、発売が決まった時は即飛びついて、届くのを待ってさっそく鑑賞。うーん、何か思っていたのとは違う映画でした。
と、言ってもほぼ全面的、特にストーリーはそうした典型的バカ映画を狙っています。田舎町(B級映画の典型的舞台)サーカスのテントのような建物の中で多くの人がつかまり、殺され、綿アメ状の物質にパックされて食糧に変えられている様を目撃した主人公たちはピエロが撃つポップコーン状の銃に襲われながら命からがら逃げだし、地元の保安官に助けを求めに行きますが、如何せんキーワードが「サーカスのテント」「ピエロ」「綿アメ」「ポップコーン」なため、全然まともに取り扱ってもらえません。やがて街にやってきたピエロたちは悪ふざけをしながらものすごい力で人を殺し、ある時は不思議な芸でひきつけた人をまとめて捉え・・・といった内容でした。登場人物描写やストーリーはともかく見せ場であるピエロの暴れっぷりは案外地味で、かつわたしの目にはかなり生真面目に作ってあるように見えました。特に特撮の出来はB級映画としては良好です。ピエロは多数登場しますがアンバランスさを出すためかメーキャップを使わず全員被り物、それでいてちゃんと表情が出せるように作ってあるのです。しかも似てはいても全員別々のデザインとなっており、非常に凝っています。悪ふざけの芸の一つに影絵を操るシーンがあるのですがこれもストップモーションアニメを駆使して丁寧に作ってあり、登場人物のモブでなくても目を引かれるもの。クライマックスに出てくる巨大ピエロは9メートル前後という絶妙な大きさで、ワゴン車破壊もミニチュアを感じさせないなかなか見ごたえのあるものになっていました。これら特撮シーンからはむしろ作り手の生真面目さを感じます。実際監督・脚本を手掛けたキオド兄弟は「コクーン」シリーズなどで特撮を手がけた専門家とのことですし、お手伝いのスタッフも一級の作品の経験者が多く、安易にB級と称するにはもったいない出来の良さです。
本作に登場するピエロたちは会話ができる相手なのですが交渉は一切通用しない相手です。作中で殺した人間を腹話術の人形のように操り、一方的に「みんな殺してやる」と通告するシーンがあるので地球人側の言語を解するのは確かですが、会話する気は毛頭ないのです。知能は高く、殺傷能力は圧倒的、なのに人間を搾取の対象くらいにしか思ってない、会話ができるのに通用しない、ある意味もっとも恐ろしい存在です。
こうした怖さを徹すればホラー映画として完成されたものになったかも知れません。が、どうしてもバカ映画にしたかったのか、店の品物をかたっぱしからひっくり返すだけで殺傷や捕獲につながらない悪ふざけがあったり、パイ爆弾は人間をドロドロに溶かして骨だけにしてしまう破壊力があるのにポップコーン銃はまったく威力がなかったり・・・。なんか全体を通してチグハグな印象を受けてしまいます。特撮シーンに感じた生真面目さが本来のこのスタッフなんだろうなぁ。脚本や打ち合わせの段階はともかく現場では真面目にふざけられない人たちなんでしょう。それゆえ、バカ映画ともホラー映画とも中途半端にしか感じられない映画でした。どちらかといえば特撮映画として楽しむものだったでしょう。
なお、「キラー・クラウン」と呼ばれた人物はかつて実在しました。33人もの男娼を中心に20歳以下の少年ばかりを殺したジョン・ゲイシーです。詳細はリンク先のWikipediaに詳しく書いてありますが、あまりにもホラー映画そのものの人生で、細部は少々盛ってあるでしょうが全体を見ても実在したことが信じられないような人間です。平日は実業家として忙しく働き、休日にはピエロの「ポゴ」に扮してパーティーや福祉施設を訪れる、尊敬される子供たちの人気者。その正体は男色の殺人鬼・・・。事件が発覚したとき、ジョン・ゲイシーはマスコミから「殺人道化、キラー・クラウン」と呼ばれました。まさにホラー映画の世界です(ジョン・ゲイシーそのものを描いた映画も作られていますが、残念ながら日本未公開)。おそらく「IT」も、そして本作「キラークラウン」は間違いなくそのジョン・ゲイシーから影響を受けているでしょう。だからこそユーモアの中にある恐ろしさを描くことに徹していれば、もっと面白い作品になっただろうなぁ・・・。もったいない作品です。実際公開すぐに劇場から姿を消してしまったそうですが、テレビ放送で繰り返されるうちにカルト人気が出てこんにちまで生き残っている、人によっては絶賛する作品でもあります。ただ、わたしとしては届いた即日鑑賞してブログに書くまでの時間の長さが評価の点数かなぁ。
クラウン恐怖症は米国ドラマの主人公が実はこれで対処(治療)「リハビリ、治療プログラム」
受けると言うのは時々有るストーリーだけど
書かれてる様に日本人は関係無いよなー
最近見た映画前の宣伝で新チャッピーが子供が出てるのでITを少し思い出しまた。
そう言えばSF系のB級映画で殺人魚フライングキラーとかピラニアのプロデューサーは
日本人の筑波 久子氏で日米で俳優してた人ですよねー
日本人だとなじみないんですからね。怖さを感じるのはトラウマというよりイメージでしょう。
俳優もやってましたっけ。そういえばフライングキラーはまだ見てないな。ある意味映画史に残る映画なのに(^^)