当時のストレス解消をかねて三か月くらいかけて書いた特撮オタ全開エントリーです(^^;)
前にも書いたことがあるが、日本では巨大ロボット自体がヒーロー。もしくはビジュアル的な主役という特撮作品は非常に少ない。その代わりに大量のロボットアニメが存在するが、ほとんどのロボットアニメはあまり巨大感を感じさせていない。軽々と地面から自身の数倍の高さまでジャンプするのは当たり前、飛んだり跳ねたりといったアクション、目にもとまらぬ速さの肉弾戦。どれをとっても製作者は巨大感にこだわっている様子はない。もっとも、視聴する側としてはそれに慣れ過ぎているので巨大感にこだわってゆっくりした動きの巨大ロボットアニメを作ったとしてもウケが悪いだろうし、一時少しあった覚えもあるが、その路線の後継はない。
一方、人間が中に入るスーツ形式の特撮は、いかにもロボといった外見で作られるとどうしても動きにくくなるめに動きがゆっくりになり、巨大感が増す。それでも想定サイズがらすると速すぎるものの、実写ならではの空気感もあって特撮形式はアニメより本来巨大ロボット表現に向いた方式だと言えよう。しかし、アニメは軍団・集団を描くに向いた方式ということもあってそちらに発展することで特撮を置いてけぼりにしてきた。
一面では優れている特撮による巨大ロボット表現ではあるものの、映画ではほぼ敵役として出てくるだけであり、それ自体が映像の中心という作品は、「ガンヘッド」の他は比較的近年の「THE NEXT GENERATION -パトレイバー」や「鉄人28号」(2005年)くらい。特に後者二本は完全な人型ロボットであるにもかかわらずスーツ方式ではなくCGを活用して巨大ロボットを表現しているうえ、想定サイズも巨大ロボットの中ではかなり小型な部類に入る。これはリアルな映像を追求するとそうならざるを得ないからだろう。元来特撮はもっと自由な発想でやるべきだと思うのだが。
テレビシリーズも残念ながら巨大ロボットがビジュアルの中心という作品は少ない。近年作は戦隊シリーズにせよ超星神シリーズにせよ、巨大ロボットは主人公たちヒーローの最強の武器に過ぎず、ビジュアル的な主役にはなっていない。
そんな中、スーツ方式で作られた元祖巨大ロボットものと言えば、やはり鉄人28号(実写ドラマ)になるだろう。ただし、鉄人のサイズはせいぜい2m強程度で合成やミニチュアを使うほど巨大ではない。作品は意外に原作に忠実でドラマとしてみれば悪くないが、それゆえに序盤のスパイアクションばかりが延々と展開し、なかなか鉄人は活躍しない。たまにある敵ロボットのバトルシーンも、両者パチパチと叩き合いながら煙を噴くだけ、という全く迫力のないもので、おそらく視聴者であった当時の子供たちは落胆したに違いない。むしろ敵の手にあって人々を襲う怪ロボットとしての鉄人の方がずっと迫力があるくらいだった。結局13話の、それも普通に次回に続くとしか思えないところで放送は終わってしまう大失敗である。のちのアニメ版鉄人28号が序盤は原作を踏襲せずにさっさと鉄人を正太郎のものにしてしまうのはドラマの失敗を踏まえてのものかも知れない。
ちゃんと合成やミニチュアなどの特撮技術を使い、巨大ロボットを中心に添えたテレビ作品、となるとほぼ1960~70年代の一時期、10年間の間にそのほとんどが作られているようだ。わたしの調べた限りでは、以下の作品があげられる。
・ジャイアントロボ(1967)
・アイアンキング(1972)
・ジャンボーグA(1973)
・スーパーロボット レッドバロン(1973)
・行け!グリーンマン(1973)
・スーパーロボット マッハバロン(1974)
・大鉄人17(1977)
2000年に「鉄甲機ミツルギ」が撮られているが、映画並みの予算をかけているうえ、放映が一部地域に限られていて未見であり、ちょっと忘れていた(笑)こともあって今回は例外扱いとする。マグマ大使(1968)、恐竜大戦争アイゼンボーグ(1977)を入れるか迷ったが、マグマ大使はロボットのように表現はされているものの「ロケット人間」であり、アイゼンボーグの後半のヒーロー・アイゼンボーも変身サイボーグの感が強いので見送った。ただ、残りの作品も如何にもロボットとしている作品ばかりかと言えばそうでもない。特に「アイアンキング」の巨大ロボット感は皆無であり、登場の演出も戦闘の姿もウルトラマン型の巨大ヒーローにしか見えない。ただ、予告編に「ロボ対ロボの激しい戦い」というナレーションが充てられたことがあるので設定上はロボットであるのは間違いないので加えた。「ジャンボーグA」や「行け!グリーンマン」もヒーローの姿だけを見れば変身ヒーローのソレだが、演出でロボット感を出す工夫はなされていた。特に「ジャンボーグA」は後半になると2号ロボのジャンボーグ9が登場するが、パイロットが主人公一人しかいないために両者の同時使用ができず、スピードや空中戦が必要な時はA・肉弾戦主体なら9と使い分ける必要がある点が独特だった。
鈍い動きや重量感まで含めて如何にも巨大ロボット、という感触まで表現した作品となると、東映の「ジャイアントロボ」「大鉄人17」と日テレ系の「スーパーロボット レッドバロン」「スーパーロボット マッハバロン」の4本だけとなる。共通点としては2クールないし3クールで終了と当時の番組としては短命な部類であったことがある。しかし、ジャイアントロボに関しては資料がないが、他の3作品に関しては関連商品、特におもちゃが記録的な売り上げだったほどヒットしたそうだ。つまり番組そのものは好評だったのである。にも拘わらず短命に終わり、かつ後続番組がないのは当時の日本の経済事情、特にいわゆるオイルショックによるダメージが大きく、スポンサーが倒産したり、あるいは予算が厳しくてお金のかかる特撮を続けるのは難しかった、などの理由があるようだ。後続番組がないのは、アニメの制作技術が向上して表現力があがり、バンクを利用すれば予算を節約できることも大きかったように思う。実際1974年には「宇宙戦艦ヤマト」、1979年には「機動戦士ガンダム」と言った特撮では難しい空間を広く使った巨大メカの集団戦闘が描かれた作品が作られ、視聴を魅了するようになっていっている。そうしたアニメブーム直前に作られた「大鉄人17」に、今回はスポットを充ててみた。
大鉄人17(ワンセブン)は当時東映と主に実写作品において企画原作を作っていた石ノ森章太郎による特撮巨大ロボットものである。タイトルからして横山光輝の「鉄人28号」を意識しているだろう。鉄人28号のデザインが西洋風のフルプレートアーマーをベースにしているのに対し、ワンセブンのシルエットは日本の鎧兜をベースにしてデザインされたと思われるところからも推測できる。大量のキャラクターを創造した石ノ森章太郎ではあるが、こうした他者作品を参考にしただろう作品も案外少なくない。あまり言う人は見たことはないが、代表格である「仮面ライダー」とて元祖国産ヒーローと言われる「月光仮面」にかなり影響を受けているはずだ。
1970年代前半は「変身ブーム」と呼ばれる特撮作品のブームがあったが、77年ころにはおそらくそれも去り、むしろ冬の時代に差し掛かろうとしていたのではないかと思う。実際老舗である宣弘社も先の「スーパーロボット レッドバロン」を最後に特撮からは手を引き、ピー・プロダクションや東宝も撤退、円谷プロですらウルトラシリーズを中断して次の段階を模索していた中、東映だけは仮面ライダーシリーズこそ中断したものの、その中で気を吐いていた。制作数もすさまじい。「大鉄人17」はテレビ放送開始とほぼ同時に"東映まんがまつり"で第一話をベースにした劇場版(DVDに収録)が公開されているが、その中に当時東映製作で放送中・あるいはこれから放送開始の以下の番組の宣伝がある。
・ロボット110番 ・快傑ズバット ・氷河戦士ガイスラッガー ・5年3組魔法組 ・ジャッカー電撃隊
このうち「氷河戦士ガイスラッガー」だけはアニメだが、あとの4本は特撮ものとされる子供向け実写ドラマである。それに本テーマの「大鉄人17」が加わるわけだから、週に5本だ。とてもブームの後とは思えない。しかも各作品ともテーマが異なっている。「ジャッカー電撃隊」は所謂戦隊ものの走り(ただし、空気感は現在のスーパー戦隊とはだいぶ異なる。事実本作と「秘密戦隊ゴレンジャー」がスーパー戦隊シリーズ扱いされたのはかなり後年になってのことであり、それまでのスーパー戦隊シリーズは「バトルフィーバーJ」を元祖としていた)で王道だが、「快傑ズバット」は基本変身するのは主人公だけで敵は暴力団組織の長やその用心棒という異色作。「ロボット110番」は友達ロボットのコメディだし、「5年3組魔法組」は学園ファンタジーだ。これに新企画を入れ込むとなると、巨大ヒーローを原則やらない東映として残るのは巨大ロボットものかスペースオペラくらいしかなかったのだろう。後者は「スターウォーズ」にあやかる形で作られた劇場作品「宇宙からのメッセージ」をたたき台とした「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」で実現するが、この時点では巨大ロボットものとして「大鉄人17」が作られた。5本もの作品を同時に制作するには特撮の比重が大きすぎると思える「大鉄人17」だが、他の4本を見ると意外と特撮の比重は少ない。特撮として火薬や合成・ミニチュアを使うのではなく、毎回使いまわせるスーツを着てアクションを行うだけ、の作品が多いのだ。特に「快傑ズバット」はオープニングで毎回使われた病院破壊シーンを除けばおもちゃのために作られただろうズバッカーの飛行シーンくらいで、あとは爆発なども滅多にないので本編演出とスーツアクター・スタントマンに殺陣師によるアクションで十分である。4作で一番特撮が多いのは「5年3組魔法組」ではなかろうか? と思うくらい少なめに抑えられている作品が多い。その分特撮担当の特撮研究所の仕事は「大鉄人17」に向かったものと思う。作品を見ると、東映作品とは思えないほど本編と特撮のつながりが多い。乱暴な言い方をすると東映のテレビ特撮というのは敵を格好良く倒すことを最重要視した、本編とはかなり独立した存在の印象が強いのに対し、「大鉄人17」は敵の攻撃で逃げ惑う人々が挿入されたり、主要登場人物の乗る乗り物がミニチュアでも再現されたりといった、本編を補足しうる連携した特撮シーンが非常に多い。中でも巨大ロボット17は主人公の三郎少年との間に交流があるため、頻繁なやり取りがある。こうした本編と密着し、補足しあう特撮作品というのは意外とテレビ作品では少ない。「大鉄人17」は例外と言ってもいい。
その特撮も非常に丁寧に作られている印象だ。巨大感をあおるローアングルからの視点の多様に、ミニチュアによる都市の再現もちゃんと自動車を走らせるなど、細部がかなり凝っている。その最たるものは、主人公ロボ、ワンセブンの変形モデルだ。ワンセブンはopの歌詞にある要塞ワンセブンと呼ばれる全身を箱型に折りたたんだスタイルで洞窟内に潜み、飛行する際にはその姿のまま、背中の翼を広げて飛ぶ。現場に到着するとそこから人型に変形するが、それを巨大モデルを使ってワンカットで見事に変形させる芸当をみせるのだ。この変形の凄さは今の水準で見ても、いや、今だからこそ圧巻と言うしかない。アニメやCGではこの重量感の再現は無理だろう素晴らしいシーンである。当時大ヒットとなった大鉄人17のおもちゃも、この変形を再現できたもののようだ。実際、後年発売された「大人向けおもちゃ」の大鉄人17の超合金シリーズでは、この変形を自動で行うギミックが搭載されている。そこまでやらないと当時のおもちゃを超えられないほど出来は良かったのだろう。
![]() | 超合金 GD-17 超絶自動変形 大鉄人17 |
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とは言っても子供向けのテレビドラマ。決して予算は潤沢ではなかったと思われる。が、本作はそこを逆手にとってうまく立ち回っている。本作の所謂"正義"の側に属する部隊、レッドマフラー隊はジープに乗り、主な武器は拳銃。あとはせいぜいバズーカや手榴弾といった、実際ありそうな携行武器しか使わない。別動隊によるの対ロボット攻撃に出る部隊も実在兵器の戦闘機や戦車を使う。これは作品や映像にリアリティを生むと同時に、特撮の予算を削減する役割もあっただろう。自衛隊などの記録フィルムを部隊の展開や発進などに使えばその分特撮で再現する時間を短くすることができるからだ。欠点としては架空兵器のおもちゃ展開が出来ない点があるので、最初からスポンサーの意図としておもちゃは絞るつもりだったと思われる。同様な工夫はワンセブンのスーツにもみられる。番組開始当初はツヤがあり、ピカピカだったワンセブンのボディが、番組が進むごとに傷が増え、汚れていっているのである。作中で毎回激しく戦う17の体が時間が経つごとに汚れていくのはむしろ自然なこととして意図的に汚していったのだろうが、同時に撮影によってついたスーツの傷をごまかす意味もあっただろう。そうした工夫が随所に感じられる。
「大鉄人17」の敵であるブレインは、本来は地震災害などを予測する、現代でいうところの地球シミュレーターのような発想で作られた巨大コンピューターだが、超生産能力というスプーンから宇宙船まで、さらには兵器として使える巨大ロボットまで作ることができる能力を持ち、壊れても自分で直してほとんど瞬時に再生する自己再生能力として使用することもできる。ブレインは本来は平和のために作られたコンピューターだが、地球の平和のためには人間を抹殺しようという判断を下すようになった。そのために開発者の一人であるハスラー教授を配下にして凶悪な犯罪者を集めてブレイン党を作り、破壊活動を始める。ワンセブンはブレインに作られた17番目のロボットであるが、他のロボットと違いブレインにも使われているオートダイオードワンセブン(ワンセブン内部で活動する修理ロボット、ロボターを「そのロボットがオートダイオードワンセブンだ」と佐原博士が第13話で語っており、自己判断で物事をなす機能のこととと思われるが、詳細は不明)を使い、動いて攻撃できるブレイン自身の分身として動くスーパーロボットとして作られた特別な存在である。だが、あまりに完璧に作ったために良心まで持ってしまい、ブレインとは異なる判断、「地球は人間が住むべき星であること、人間は、永久の平和を維持できる知能と心を備えた生物である」を導き出した。そのために一度ブレインから封印されるが、自分を覚醒させた主人公の三郎少年と共鳴し、活動する。三郎はワンセブンの作ったヘルメットを通じて意思の疎通ができる唯一の人物であり、それゆえにブレイン党から命を狙われる。一方、レッドマフラー隊もワンセブンを味方にするため、同時に三郎自身の身を守るため、レッドマフラー隊へ入隊させる。ワンセブンは守るべき人間の基準を三郎ととらえているように見える。三郎の入隊以前にレッドマフラー隊自身が三郎を偽装的にだが危機に陥れてワンセブンを呼び出す手段として使えるかどうかのテストをしようとしたことがあった。結局はレッドマフラー隊の偽装攻撃を利用してブレイン党が三郎の乗ったバスを攻撃したのだが、レッドマフラー隊の銃口が一度は三郎に向けられたことは間違いない。その際にワンセブンは三郎の要請があってなおレッドッマフラー隊への協力をためらうだけでなく、ワンセブンの性能を記録するための撮影をレッドマフラー隊のヘリが行っていることを察して戦闘を放棄し、攻撃こそしないもののそのヘリを取り押さえるという乱暴な行為に及ぶ。まるでどこかの国際救助隊のような振る舞いだが、三郎郎を味方につけない限りワンセブンは完全な味方にならないということが強く印象付けられる。仮にレッドマフラー隊と三郎が完全に敵対することがあったとしたら、ワンセブンはレッドマフラー隊と戦っていた可能性さえ感じる。
俳優陣は特撮的にかなり豪華で、主人公・南三郎役に「人造人間キカイダー」「電人サボーガー」でほぼ毎回登場したレギュラーだった神谷政浩、ブレイン開発者の一人であり、レッドマフラー隊の指導者である佐原博士には「電送人間」の中丸忠雄、その娘で三郎と同い年のルミに「がんばれ!ロボコン」のロビンちゃんの島田歌穂と言った面々もいいが、なんと言ってもブレイン党の幹部、指揮官のキャプテンゴメスに「愛の戦士レインボーマン」ミスターKの平田昭彦・その片腕で実行部隊のチーフキッドに「仮面ライダーV3」ライダーマンや「電人ザボーガー」大門豊を山口暁名義で演じた山口あきら、この二人が格好良すぎる。レッドマフラー隊の部隊長、剣持とは「お互い手の内は知り尽くした間」とライバルと認める間柄であり、互いの作戦を読み、ある時は裏をかき、ある時はそれを利用しようと知略と知略、そして武力の火花が散る。その厳しく激しい戦いの間では主人公と言えども子供である三郎に割り込む余地はない。
壮絶なのは、そのキャプテンゴメスの最期である。なんと、ブレインに対してクーデターをたくらみ、それで失敗してしまうという展開が待っているのだ(伏線も事前に貼ってあるのが見返しの楽しみを増加させる)。ブレインの再生能力を超える連鎖型爆弾を使い、ブレインに自分への服従を迫るが、ブレインはノーの一言。するとゴメスはためらいもなく爆弾を作動させようとする。作中ではブレイン支配の野望を抱いているとされたキャプテンゴメスだが、ゴメスはゴメスなりにブレインの計画を阻止しようと考えたすえの行動だったのかも知れない。だがことは露呈しており、爆弾は撤去されていて失敗する。その責任を問われ、ゴメスはブレインロボットでは珍しい人が乗る操縦型ロボット、軍艦ロボットに乗せられてワンセブンと戦わせられるが、すでに二度もワンセブンに敗れていて勝ち目のない軍艦ロボットの操縦席にいることは、生きたまま棺桶に入るに等しかった。そして自分の片腕と思っていたチーフキッドがすでにブレインの側につき、自分を裏切ったことを知り、それまで「チーフ」と呼んでいたチーフキッドを「キッド」と呼んで激怒する。最後は再び「チーフ」の呼び名に戻して軍艦ロボを爆破させる命令を出し、息絶える。ゴメスが本当に信頼できた人物、自分の決意をはっきりと表明し、遺言のようなものまで託すことができた人物はただ一人、それは決して相いれない存在である宿敵・剣持だけだった。
こうしたハードな展開は15話まで続く。が、ゴメスの死を境に「大鉄人17」の演出は大きく変わる。ゴメスに代わってブラックタイガーという呪術を使う新たな幹部が登場。強敵の細菌ロボの攻撃で重傷を負うワンセブン、とここまではいいのだが。序盤に友達を失い、レッドマフラー隊員としての登場ばかりだった三郎だが、ルミの紹介で鉄次らあらたな友達ができる。なによりその叔父で浪人の岩田鉄五郎ことガンテツというコメディキャラが登場し、作品の空気が全く別物になっててしまう。レッドマフラー隊員を自称してガンテツが三郎と行動を共にするようになってからは三郎がレッドマフラー隊員として行動することは少なくなり、話も三郎やガンテツが遊びに行った先で事件に巻き込まれ、レッドマフラー隊やワンセブンと連絡をとって事件に挑む、というのが基本フォーマットになる。他のレッドマフラー隊員もセリフが長くなり、どことなく無駄口が多くなった印象を受けるようになり、軍隊然とした印象は薄くなり、剣持も活躍しなくなる。何よりワンセブンが自身の大修理の際のどさくさに紛れて自身を大幅に改造したようで、能力が異なっている。それまで「イエス」「ノー」を信号による回答しかできなかったワンセブンが言葉を話すようになってヘルメットがなくても、また三郎以外の人間とも直接会話できるようになり、それまでのどこか不思議で理解の外にいるような神秘的な存在でなくなってしまった。ただし、あくまで三郎を守ることを第一とする理念だけは変わっていない。
こうした路線の変更を好ましく思わない人は少なくないようだ。確かにストーリーとしては路線変更以前の方が今、大人の視点で見る分には断然面白い。が、個人的には路線変更自体は否定しない。先にも書いたように15話までは大人が活躍しすぎて三郎はただのワンセブンとの意思疎通要員、いわばシャーマン的な存在でしかなく、何のために少年を主役にしたのか分からない展開が目立ったからだ。また、石ノ森章太郎の作風からすると人工知能は第1クール17の神秘的な雰囲気より擬人化しているほうが相応しいともいえる。何より三郎が同い年の友達と交流できるという設定に戻さなければ、後半の見せ場である弟ロボット18(ワンエイト)編を書くことはできなかっただろう。ワンエイトはワンセブン並の知能を持ち、ワンセブンが三郎と共鳴したように孤独な少年である矢崎(「流星人間ゾーン」のゾーンジュニア)と共鳴する。この対立と対比を描くに、ああした路線変更は確かに必要だった。
だが、それでも二点納得いかない点はある。一つは展開に不条理さが目立つようになったこと。特に二人三脚だったゴメスを裏切ってまでブレインについたチーフキッドの最期、それは作戦実行中にも関わらず飛び込んできたブラックタイガーの攻撃によって殺されるという唐突なものだ。ドラマティックで練られたストーリーで描かれたゴメスと比べるとあまりに唐突すぎる最期である。なぜか16話以降の構成はこうした伏線を消化しない、一本筋の通らないストーリー展開が多くなってしまう。
もう一つの納得いかない変更は、ワンセブンの飛行姿勢に人型のまま翼だけを展開して飛ぶスタイルを追加したこと。初披露の際にはニアミスした戦闘機のパイロットから「マッハ6は出ている」のセリフがあり、速度が従来の最大速度とされたマッハ4よりアップしたことからパワーアップがうかがえる。が、その代わりに要塞体型の出番はなくなり、それまで毎回あった、ワンセブンの大きな魅力である変形シーンがほとんどなくなってしまった。あってもバンクの利用のみである。これではせっかく売れ行きの良かった変形おもちゃの販売にも支障が出たのではなかっただろうか? と心配になってしまう。これも推測だが、毎回雄姿を見せていた変形モデルに、何かしら修復不能な破損が出てしまったのではないか、と思う。都市破壊シーンが大幅に減り、ロボットの出現場所も建物のない山岳部ばかりになった後半を見る限り、工夫はしても結局序盤に予算を使いすぎて後半にしわ寄せが回った感は否めない。あれだけ大がかりな変形をこなすモデルを修理するより、小さめな立ち人形を作って飛ばした方が安上がり、そうした都合もあったのではないだろうか。
こうした路線変更は視聴率が思ったより伸びなかったためという話もある。視聴率が振るわなくてもスポンサーのおもちゃが売れたために番組が延長になったアニメ「鋼鉄ジーグ」の例もあるが、あちらはタカラがスポンサーなのに対し「大鉄人17」はポピー、考え方は違ったのだろう。当初予定した小学校高学年という視聴者層が見てくれず、低年齢層が視聴の主流に収まっていたのかも知れない。結局視聴率が回復したかは不明だが、「大鉄人17」は35話で終了する。後半の失速さえなければ、と歴史のifを言ってしまいたくはなるが、それでも本作がロボット特撮の決定版だと思う。これ以降は巨大ロボット特撮は「スパイダーマン」を経て「バトルフィーバーJ」に至り、戦隊の武器として定着する。おそらく「大鉄人17」のノウハウはそちらで生かされ続けただろう。
今年は2017年。ワンセブンと同じ数字をかざすことができる年である。ゆえに何かしら「大鉄人17」が取り上げられることがあるのか、と期待していたのだが、数年前に「仮面ライダーフォーゼ」で中途半端に登場したこともあって、このまま何もなく終わりそうで、残念である。せいぜい新型の大人向けおもちゃやDVDが出たくらいで終わりそうだ。ただ、そこをあえてひねって来年「大鉄人18」が作られるんじゃないか、などとささやかな期待をしているわたしである(^^;)
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17はスーツアクターの新堀和男氏の
試行錯誤のアクションも記憶に
残ります、次点は和製スパイダーマンの
レオパルドン、ロボットスーツアクションの
完成形と思うのはジャスピオンのダイレオンの
ワイヤーアクションが素晴らしいと
個人的には思っています。
古い作品に多い丸っこい胴体のロボ(モデルは土偶とか?)好きにはなかなかツボったビジュアルでなかなか。
個人的には巨大ロボというとやっぱり身長50mとかって感じですかね。
ガンダムとかパトレイバーとかは「巨大」というのにはちょっと控えめな印象です。(台場のアレとか見ると確かに巨大なんですけどね)
ブレインロボットが人型でない、操演のみのものも多かった中、迫力と存在感のあるバトル演技をみせてくれるのが素晴らしいですね。
ダイレオン、あの造形で跳ねたり回転したりしますからね(^^) 誰も真似できません。
>arpusさん
おお、完全に忘れてました。当時地元じゃ放送してなかったもんで。本文少し直しました。忘れていたと言えば、自主製作に近いですが「惑星大怪獣ネガドン」と「装甲巨人ガンボット」も入れるべきでした。
お台場のガンダム見るとアレ以上でかいのは無理、って思うんですけど、市街地で見るときに周囲の建物に見劣りしないサイズ、って考えるとやはり50mは欲しいなぁと思ってしまいます。
それは… ツインビルを上部で繋げてとか? やっぱり最初からロボ型に設計? 街にロボがいっぱい立ち始めたら凄い街になるだろうな とかねw
シンプルに電車のロボが見たいとか思うのですけどね 新幹線とかも解体するてきくじゃないですか あれをね…
( ・ω・)∩シツモーン
50m級とは? 3体あげるなら何を選びますか?
大鉄人17には新幹線ロボってのが出てきます。まぁ新幹線が変形した、というにはデカ過ぎるんですが。特撮の場合、やや見上げるように撮影するので、ビルに紛れてしまうのと迫力でないんです。
特撮で50m級ならゴジラ、ガメラ、ウルトラマン・・・っていうとベタ過ぎてダメですか(^^;) ロボット、あまりないんだよなぁ。怪獣でいいなら市街地で迫力出てた50m前後はラドン、ゴモラ、メガギラスが好き。
といっても年齢的に断片的にしか覚えていないのですが。
その他にはマッハバロンがかっこよくて好きでしたが、内容はよく覚えていません。
確かに着ぐるみやミニチュアによる巨大メカアクションが見られないのは寂しいですね。
私は皆さんとは逆に比較的小さいロボットが好きなんです。アニメも含めて。
その方が人物や建物とうまく絡むと思います。
そういう感覚は富野監督にも通じるのかなと思ったり。
今も東映のスーパーヒーロータイムは毎週毎年見てますが、気を抜くとただのスーツを着た人のアクションになりがちな仮面ライダーよりも、戦隊物の方に面白さを感じることも少なくありません。
ただだからこそ人との対比ができない4,50メートルの大きなメカには残念な思いもしています。
あれじゃあ外からコックピットが描けない。
やっぱりおじさんなので「こんなものが実際にあったらスゴいよなあ」と思えるリアルさが欲しかったりします。
変身ヒーローものも守護神や式神のような存在のおかげでスーパーパワーが発揮できるとか(仮面ライダーだったら専用バイクの力で変身できるのとかなぜ出来ない?)、いっそ変身しないでプロテクターを着ける程度で相棒のメカと力を合わせて戦う方が"万能じゃない感"があっておじさんにはそそるものがあるのに。この構図はマンガの方でJOJOのスタンドバトルとして実現されてしまった感じだし。
スーパー戦隊なんて毎年一人ひとり用にマシンやらミニロボットを登場させているのに、ろくに活躍しないで合体してしまう。実にもったいない。
ミニプラなんか作ってると特にそう思います。
一方でロボットとか変身とかじゃない特撮もの、SFものも見たいです。
本文でも触れられていた「宇宙からのメッセージ」や「スターウルフ」は面白かったし、古代中国を舞台にした「黄土の嵐(だったかな)」も面白かったです。
なるほど、ストーリーを重視するとロボットは小型の方がいいという考えですね。わたしなんぞはまず見栄え、なもんで、ある程度大きい方を好むのですが。
スーパー戦隊の合体前のメカって、確かに全く活躍しないですね。登場回には個性があっても次からは出て即合体。もったいないですが、時間的制約もあるのかなぁ。通常のストーリーに絡んでもいいのに。
スターウルフも面白いですね。あれも大鉄人17と同じでテコ入れによって前半と後半でかなり雰囲気が違っているんですが、前半の調子だと2クールじゃ収まらない調子だったからまぁしょうがない。