録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

あの作品の原点?「H.G.ウェルズの奇蹟人間」

2012-03-10 22:23:30 | 特撮・モンスター映画
注:ほとんどDVDの内容を書いてしまっています。

届いたのは先月でしたが、録画の消化に忙しくてなかなか見られなかったDVD、「H.G.ウェルズの奇蹟人間」を東京まで持ってきてようやく見ました。この作品のことは事前には全く知らず、タイトルにあったH.G.ウェルズという名前を見ただけで、「とりあえず買っておくか」とAmazonから申し込んだだけのものです。H.G.ウェルズといえば「宇宙戦争」や「ドクター・モローの島」などのSF作品で知られる作家。それにしてはB級っぽいタイトル、販売はどちらかといえばB級の多いWHDジャパンですから、「まぁほどほど面白ければいいか」程度の期待しかしていませんでした。だから手元にあったにもかかわらず、放っておいたのですが。

神の実験というか気まぐれによってたまたま"万能の力"、奇跡の力を得てしまった男、フォザリンゲイが本作の主人公です。はじめのうちは使う奇跡もたわいの無いもので、ちょっとしたお遊びだったり好きな女へのサービスだったり仕事をさっさと終わらせようとするため程度でした。ところが、その力を知った雇い主が「この会社のためだけに力を使ってくれ」と頼んできたり、紹介されて自分はどうすればいいのか相談にいった医者がノリノリで「その力は世界平和のために使うべき」とはしゃいだり。そのつどフォザリンゲイは流され、また別の人物の言葉に惑わされます。にもかかわらず、好きな女は自分など奇跡以外に興味を持ってくれず、別の男の方しか向いていません。奇跡は人の心を変えることだけは出来ないのでした。
そのうちにフォザリンゲイは調子 に乗り出し、惑わされた人々の言葉をごちゃまぜにした行動に出始めます。自分のために好き勝手する反面、世界中の権威のある人間を集め、無理やり世界平和を実現させようとするなど。大見得切ってそれらの前で演説を始めますが、中身は支離滅裂。強引にことを進めようとするあまり、とうとうとんでもない失敗をしでかしてしまいます・・・。

こういった展開に、妙に親しみを感じました。コメディ調ではありますが話そのものは淡々としていてともすればつまらなくなりそうなのに、目が離せません。もちろんありがちなB級映画とは一味違う巧みな人物描写のたまものなのですが、それだけではないように思えます。
さえない男が突然超人的な力を手に入れ、いたずらしたり女の気を引こうとしたり、最後には調子に乗りすぎて暴走して失敗・・・。こう書き連ねて初めてその親しみやすい原因が分かりました。この展開、「ドラえもん」にそっくりなんです。警官を地獄に落とすシーンなどは、「独裁スイッチ」を思い出しましたよ。
ただ、この映画は1936年、藤子・F・不二雄氏の生誕は1933年。ちょっと見ていたとは考えづらいですし、そもそも日本で公開されたかどうかも不明なようですから。後年何かの形で見ていた可能性はありますが、低そうです。ただ、偶然とは言い切れないほど似ていますので、大変みやすく、理解しやすかったのは確かです。

そう、この作品は1936年度作品。年代が信じられないほど特撮は丁寧で、特にクライマックスのスペクタルに入る一瞬は今の目で見ても大迫力で、あっけに取られます。途中の奇跡を再現する特撮は牧歌的ですが、かえって寓話性が高まったように思います。今リメイクするとしたらもっと細部にこらざるを得なくなりますが、ヘタにリアリティな映像は作品の雰囲気を損なうことになるでしょう。ピッタリあっています。
DVDの解説には"サイキック映画"とありますが、内容はあくまでファンタジー。後で落ち着いて考えると、それまでの奇跡は整合性なんてまるでとっていなかったのに、何で失敗した奇跡だけSF要素が加わってくるのかヘンではありますが、あのクライマックスが一番書きたかったシーンなのは確実ですからやむをえないとも言えます。ちなみに、B級B級と書きましたが、スタッフは同じH.G.ウェルズの「来るべき世界」を作った人たちが再集結したもので、予算はともかく人員は一流ぞろい。淡々としていながら実に面白く作られていたのは当たり前のことだったのです。

古い名作はしばしば後の映画やマンガにオマージュとしてシーンや内容が使われることがありました。そういう引用されたと推測できそうなものを見つけるのも、昔の映画を見る楽しみでもあります。現在で同じことを行うと「パクリ」といわれて非難されてしまいますが、これは非常に残念なことと思います。

H.G.ウェルズの奇蹟人間 [DVD]
ローランド・ヤング,ラルフ・リチャードソン,ジョーン・ガードナー,アーネス・セジガー,ソフィー・スチュワート
WHDジャパン

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