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DVDレビュー モスラ3 キングギドラ来襲にB級魂を感じろ

2006-07-18 01:05:17 | 特撮・モンスター映画
「モスラ3 キングギドラ来襲」、特撮系怪獣映画の大半の作品をビデオ・LD・DVDのいず
れかで所有しているわたしだが、この作品に関してだけは本当に最近まで入手するこ
とが出来ずにいた。評価が低いので買う気が起きなかったわけではない。世間的評価
はともかくわたし個人としての評価はむしろ高い方なのだ。
そのわけとして、この作品がソフト化される時期がちょうどLDからDVDへの移行時期
にあたったため、DVDが出るには早すぎ、LDを出すには遅すぎとなり、わずかなLDが
出回っただけで、市場が終了してしまったのだ。わたし自身も、今回発売されたDVD
の特典映像で初めてLDのパッケージを見たくらいだから、出回った数は少なかったの
だろう。その後も東宝はゴジラや他の旧作の特撮映画のDVD化を優先したため、
モスラ3部作は後回しにされてしまっていたのだ。おかげで入手できたモスラ3の
ソースはレンタルビデオかCSの日本映画専門チャンネル放送分くらいしかなく、これ
だけが視聴手段だった。多分モスラ3は、わたしにとって一番多くの回数を見た、
録画ソースとなっている。

タイトルが示すとおり、この作品はモスラとキングギドラの一騎打ちが展開される。
もうこれだけで巨大スケールを感じさせてくれそうだが、実際のところ、さにあら
ず。かなりせせこましい作品になっている。
その理由としては、第一にモスラ3部作が低予算で、怪獣と自衛隊や防衛隊との
戦闘シーンもない、子どもたちの冒険物である、というのが絶対の基本路線であった
ため、というのがある。それにしても、時間的な経過が短い。前日の夜に始まった
事件が、翌日の昼過ぎには終わっている、というほどの短い経過でしかない。
多分、その理由として、監督の意向があると思う。
モスラ3の監督は、3部作シリーズ第1作も担当した米田興弘氏。この監督さん、実
はモスラ第1作が初監督作品で、封切り後、その評判が気になるのか、とあるパソコ
ン通信のBBS(インターネットの掲示板にあらず)に実名で登場し、素直な感想を聞か
せて欲しいと書き込みしたのだ。これが、一部の"自称辛口派"人間の格好のおもちゃ
になってしまった。すさまじい悪口の応酬が始まったのだ。当初から新モスラは
ファンタジー系・低予算・都市破壊シーンは無し・主人公は子どもと決まっていたし、
そう情報も仕入れていたのに、とことんその辺が突っ込まれ始めたのだ。
いわく、
「怪獣が出現したら、そく自衛隊が出動しないとリアルじゃない」
「都市破壊もしないのに、怪獣出現を世界の危機のように描くのはヘン」
「モスラが失われた自然を再生させるシーンは、人間がいくら自然を破壊してもすぐ
 誰かが助けてくれる、という人任せに見える」
ひどいのになると、
「主人公の子どもの顔がかわいくない」
なんて、メチャクチャな書き込みもあった。書いた本人たちも、自分の意見が明らか
に矛盾しているのにも気が付かず、とにかくちょっとでもなにか意見のいえそうなと
ころではとにかく、悪口、悪口、悪口。その悪口を書き続ける人間の中には映画を
見ていないのに悪口を書き続ける者までいた(後で白状した)のだ。ここでは大幅に
緩和して書いているが、実際の文章はリアルタイムで見ていたわたしにとって、吐き
気がするほどひどく、読むのがつらいものだった。
ただ、それでも米田監督は、殊勝に受け止めたらしい。実際、モスラ3の特集本の
インタビュー記事の中で、上記のような悪口の一部が(大幅に緩和な文章で)引用さ
れていた。おそらくモスラ3を製作する際、これらを踏まえた上での監督の意見が
大幅にシナリオを変更させたに違いない。結果として破壊神キングギドラの復活・
都市破壊シーンの復活・自衛隊が出動する暇すらない短時間での事件収集などにつな
がったもの、と推測できる。その代わり、映画としてのメッセージ性のスケールは
前2作にもまして小さくなってしまったが、その分をキャラ付けやタイムスリップ
による別次元での時間の経過、恐竜シーンの挿入などで補う工夫がみられる。

ここで恐竜シーンにスポットを当てよう。現代のキングギドラに力でかなわないモス
ラがこれ以前に同体のキングギドラが地球に襲来した1億3千万年前にタイムスリッ
プして戦うシーンだ。ここで非常に多彩な怪獣・恐竜表現が見られる。
もちろんキングギドラは人間が中に入って演技するぬいぐるみ怪獣だし、モスラは
ピアノ線やモーターで動かしたりする、所謂操演怪獣だ。それ以外に登場する恐竜
は簡易な仕掛けをほどこしたロボットを下から引っ張って動かす、昔の遊園地の
アトラクションのごとき古い仕掛けで動かしているかと思えば、バレバレの仕上がり
ではあるものの、フルCGによる恐竜まで登場する。これだけ多様な仕掛けで複数の
モンスターを表現する映画も珍しい。操演なら操演メイン、CGならCGメインと
決まっているものだし、使い分けるにしてもそれはモンスターの種類ではなく、表現
の必要性から使用するものだが、この映画ほどこの怪獣はぬいぐるみ、この恐竜は
CGで、と複数の表現方法を場面ではなく、モンスターの種類によって使い分ける
のは他に見当たらない。おかげで日本製実写映画にしてはワンシーン登場モンスター
が多く、こと恐竜シーンに限り、わらわら感を感じる。B級怪獣映画ファンとしては
とても楽しめるシーンである。強いて言うなら、ストップ・モーションアニメを利用
した恐竜の1匹もいれば完璧なのだが・・・。ただし、怪獣たちはともかく恐竜に関し
ては出来はよくなく、恐竜映画としては物足りない。もっとも、日本製の恐竜映画
などほとんどろくなものがないが(個人的に唯一の例外と思っているのが"ドラえも
ん・のび太の恐竜"だ)。この作品が特撮担当としてはデビュー作になった鈴木健二氏
だったからこその、"なんでもあり"感だろう。前作の川北紘一氏だったら、もっと
硬く演出する反面、恐竜の数は少なかったかも知れない。

映画としてみた場合、スケールが小さくなることで少年の冒険としては分かりやす
くなり、ジュブナイル作品としての完成度はあがったように思う。前2作ほどの
不思議なアイテムを間にはさむことの無い少年とエリアス(本シリーズにおける
小美人・妖精)やモスラとのやり取りは、ストレートに分かりやすく、ゆえに命がけ
の戦いに挑むモスラや少年、それを力で圧倒しようとするキングギドラの邪悪さとの
対比が出ていた。それゆえ、ラストの、聞きなれたテーマ音楽にのって、ついに
姿を現す最強のモスラは感動的であり、キングギドラを圧倒する場面は痛快である。
看板こそ一流ながらあえて一流の振りをすることなく、子ども向けに徹したこの
「モスラ3 キングギドラ来襲」が、わたしは大好きだ。決して世間的な、特に特撮
ファンの評判はよくないが、わたしには非常に楽しめた作品だった。今回ようやく
DVDを入手でき、今まで残っていた胸のつっかえが取れたように思う。やっぱり、
買ってよかった。

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