今年は日韓併合100年ということで、終戦までの日本帝国主義が行ったキリスト教への弾圧と擁護された宗教について、韓国釜山長神大学の卓志一教授が「現代宗教」12月号に「日帝下の韓国教会と異端」と題して書かれている。
統一教会の「堕落 復帰」論が金百文のコピーであることを知ってほしい。
手元にサランヘヨさんが訳された、韓国で異端の啓発活動をされている卓志一教授が「現代宗教」一二月号に寄せた記事を、卓先生の許可をとって掲載します。
異端の根を探して(7)
卓志一(本誌編集者 釜山長神大教授)
7. 日帝下の韓国教会と異端
(1)日帝の宗教政策
平壌大復興運動が起きた1907年に公表された「韓日新協約」(1907.7.24)と「保安法」(1907.7.27)によると、日帝は朝鮮ですでに立法、司法、行政の三権を掌握していた。そして、「朝鮮統治の最高方針」(1910)と「教育勅語」(1912)は朝鮮統治の究極的な目的が天皇中心の内鮮一体ということをはっきりと表している。
1919年の三.一運動以後にも、このような統治原則には変わりはなかった。朝鮮総督府の「治安維持法」(1925.4)は、変わらない天皇中心の内鮮一体を強調している。すなわち、日帝強制占領期の間、日帝の統治原則は決して変わることはなく、ただ統治方法のみが状況に合わせて変わるだけだった。
日帝のこのような朝鮮統治原則は、宗教政策にも適応された。朝鮮総督府の「布教規則」(1915.8.16)によると、宗教布教活動を願う者はもちろん(第3条)、宗教施設の設立においても(第9条)朝鮮総督府に詳細に報告し、許可を得なければならなかった。すべての宗教活動に対する総督府の包括的な統制は、もちろん天皇中心の内鮮一体という統治原則を適応していく為の事だった。
「布教規則」は神道、仏教、キリスト教に対して主に適用されていたが(第1条)、“宗教と類似した団体”にも適用することができた(第15条)。しかし、各地域で起こった新興宗教団体らを統制することは容易ではなかった。このため朝鮮総督府は1935年、村山智順が調査した1000ページもの分量の『朝鮮の類似宗教』という資料集を発刊した。この資料集は韓国で発生したすべての宗教と、特に日帝の統治に協力的ではない新しい宗教団体を(類似宗教)と分類しながら、その否定的な面を浮き出させて宗教弾圧のための口実を使った。反面、日帝は朝鮮統治の助けになる団体らは、朝鮮教会の分裂を助長するために内密に支援育成するという、二重的な政策を実施した。
例をあげると、キリスト教派運動の小宗派運動中、民族主義的な性質を持っていたパク・トンギのシオン山帝国とイ・スンファの天道教があった。
パク・トンギは彼自身の神秘体験を根拠に、カトリックの神社参拝を批判して日帝に対する闘争を主張し、1944年4月25日、シオン山帝国を設立した。しかし1945年5月21日、住民の密告で逮捕され、8月16日の出監まで酷い審問に遭った。
また、イ・スンファも彼女の神秘体験を根拠に1919年陰暦の6月29日、ソウルの四大門(注:ソウルの4つの城門。東の興仁門、西の敦義門、南の崇礼門、北の粛清門)の上に神様の啓示を受けて作ったという太極八掛を掲げて独立万歳を叫んだが逮捕され、保安法違反などの容疑で拷問を受け、3年半の間獄苦を経験した。
反面、反宣教的な感情を表しながら、いわゆる朝鮮的なキリスト教を指向したチェ・ジュンジンの自由教、イ・マンジプの自治運動、キム・ジャンホの朝鮮キリスト教などの場合には、むしろ日帝の関心と支援を受けることになった。日帝強制占領下のキリスト教異端運動などは、このような日帝の宗教政策の影響下に起きたのである。
(2)日帝下 キリスト教異端運動発興
日帝下のキリスト教異端運動は1930年代以降に本格化された。
1931年の満州事変、1937年の中日戦争、1941年の太平洋戦争を経て、日帝の大陸侵略は段々と露骨化され、朝鮮は戦時体制の下、戦争協力強要と民族抹殺政策のため苦痛を受けた。韓国教会には苦難の時期だった。
三一運動を通して成長した民族解放のための希望であった信仰は、十字架で苦難を受けられたイエス・キリストを見上げる忍耐の信仰に変わった。このような社会的な不安情勢と不確実性は、韓国教会の中に神秘主義的な傾向を持つキリスト教異端運動の発興の背景になる。
何よりも、日帝下の異端運動は救いに対する性的接近が際立っている。世界教会史は聖(spirituality)と性(sexuality)の緊張を持続的に表しているが、韓国異端運動の根にもこのような性的接近(sexual motif)が特長的に表れている。
金百文(1917~1990)が代表的な人物である。韓国異端運動の根とも言える金百文は、文鮮明とパク・テソンなど数多くのキリスト教異端運動に直接的に教理的影響を与えた。金百文の『聖神神学』(1954)、『キリスト教根本原理』(1958)『信仰人格論』(1970)に表れる主張は文鮮明の『原理講論』のそれと類似しているように見える。
金百文は『キリスト教根本原理』で堕落に対する説明を“女性エバから誘われ、善悪の実の犯行という使神[蛇]から現れた悪霊との肉体的な淫行を話すことになるが、すなわち使神と直接的な肉体性交を犯して、エバから女性の処女貞操を蹂躙(じゅうりん)することも大きく、血統に狂ったその罪悪性はまもなく肉体の性欲感をそこから受け持つことで創造本性の愛の反対の性理である情欲の育成へと悪化してしまったのだ”(485ページ)と主張する。
文鮮明も『原理講論』で“人間の祖先が天使と淫行することで、すべての人間が「サタン」の血統に生まれてしまった為だ。…我々は天使と人間の間に淫行関係があり、それが堕落の原因になっているという事実を知ることができる”(84ページ)と説明している。
このような堕落から人類を回復させるに、いわゆる“メシアの降臨とその再臨の目的”があることだ。文鮮明はこの再臨主が韓国に生まれ、地上天国を建設するのだと主張する。文鮮明が金百文の教理に影響を受けているのが明らかに分かる。
このような数々の主張は、この後の他の異端団体らの教理にも容易く発見される。金百文の堕落と復帰に関する主張は、文鮮明の影響を受けた鄭明析ジョン・ミョンソクの『30概論』にもそれが反復されている。
結果的にこのような教理によって、異端団体の教主らによる性的問題などが引き起こされていることは推測できる。すなわち性的堕落の回復は、教主との性的関係を通して成し遂げられるという、彼らの隠された主張である。このような復帰過程は、社会的通念では受け入れられない非倫理的な姿で現れ、実践法の制裁を受けた。
興味をもつ事実は、金百文の影響を受けた文鮮明系列の異端団体らは、教主を再臨主、そしてパク・テソン系列は恵みの聖霊を神格化しているのが見られることだ。これは韓国の異端運動などが独立的に生まれたのではなく、相互の影響を受け与えながら発興してきたと見える。これにより、キリスト教異端を研究する専門家たちは、韓国の異端団体らを説明しながら“系譜”という表現をする。
『現代宗教』2009.12 より引用&翻訳 訳者サランヘヨさん