恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

祝婚

2014-11-19 09:25:16 | ハル君ルートで茶倉譲二

ハルルートの譲二さんの話の続編
『それぞれの道』でヒロインと別れた後、七年経ってクロフネに帰って来た譲二さん。

『秘密』の続き
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祝婚

〈譲二〉
 今日はハルと美緒の結婚式だ。

 俺は2人の結婚式になんか出たくはなかった。

 しかし、美緒に「みんなに疑われるよ」と脅されて招待状を受け取った。

 一度弾みで美緒を抱いたことがあり、それが弱みとなって、はっきり断ることができなかった。

 しかし、今日は俺にとって耐え難い一日になることは確実だった。



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 教会の新婦側の席で、式が始まるのを待つ。

 俺は美緒の吉祥寺での親代わりなのだから、新婦側でいいのだろう。

 一護たちは反対側の新郎側の席に座り賑やかに話している。

 タキシードを来たハルがまず入場し、父親と腕を組んだ美緒が入って来た。

 ウエディングドレスに長いベールを被った美緒は輝くように美しかった。

 式の間、新郎新婦は頬を染めながら見つめ合っていた。

 ベールを上げ、ハルが美緒に誓いのキスをした。

 俺はそれらの儀式を無表情のまま見ていた。

 俺は…どうしてこんな残酷なものを見つづけているんだろう…?



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 教会を出て、渡されたバラの花びらを新郎新婦に投げ掛ける。

 ブーケを投げる花嫁。

 大きな歓声。

 俺はそれらすべてを無声映画でも見るように眺めていた。




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 披露宴が始まった。

 俺の席はリュウ、一護、タケ、りっちゃんと同じテーブルだ。

 みんなで嘆きながらも、会話はいつもの調子で弾んで行く。

 テーブルにはメッセージビデオの撮影も回って来て、何かしゃべらないといけない。

(美緒、俺は…。)

 とりあえず『幸せな家庭を築いてください』とかなんとか、無難な台詞をしゃべる。


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 シャンパンもワインもビールも出てくる酒はすべてガンガン飲んでいく。

竜蔵「ジョージ、そんなに飲んで大丈夫か?」

譲二「ああ」

理人「やけ酒も飲みたくなるよね…。
いっちゃんもいつもよりペース速いじゃん」

一護「これぐらいじゃ大したこと無いさ、な、マスター」

譲二「ああ、全然酔えない…」

剛史「もう少し、2人の邪魔しとくんだった」

竜蔵「俺もやけ酒飲んでいいか?」

理人「ダメ!」
剛史「飲まなくていい!」
一護「飲むな!」

 3人の声がハモる。

竜蔵「俺も今日くらいは飲みたい…」

理人「リュウ兄が飲んじゃったら、僕たちだけでは対処できないから…。
これでも飲んで我慢して」

 りっちゃんはリュウにオレンジジュースを手渡した。

 リュウは情けなさそうな顔をしてそれを飲み干した。



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 キャンドルサービスでは、うちのテーブルのロウソクにはメロンの皮だのオレンジの皮だので芯に蓋がしてあった。

 ハルは自分のロウソクの角を上手に使って払いのけ、時間はかかったが、俺たちのテーブルにも無事火が点った。

竜蔵「くそッ、つけやがった!」

理人「だからお手拭きも乗せようって言ったのに…」

一護「ハルは昔からUFOキャッチャーだの金魚すくいだのが得意だったからな…」

剛史「どうやったらロウソクに火がつかないか、家で研究してくればよかった」

 俺はあいつらの子供っぽいイタズラに苦笑しながら、美緒が俺のことを一瞥もしてくれなかったことに落ち込んでいた。



 美緒がもし一瞬でも俺を見つめてくれたら…。

 そしてその瞳の中にほんの僅かでも俺への想いを見つけることができたら、俺は…。

 俺はなんてバカなことを考えているんだろう…。

理人「マスター、今日は無口だね」

譲二「ああ、ちょっと飲み過ぎたかな。…眠たくなってきた」

 本当は眠たくもなく、酔いもまわっていなかった。



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 披露宴がお開きになり、出口で並んだ新郎新婦、それぞれの両親に一言ずつ挨拶を交わして行く。

 ハルは幸福と自信に満ちあふれた花婿だ。

春樹「ジョージさん、ありがとうございます」

譲二「おめでとう、いい式だったよ」

 美緒は幸せという輝きを身にまとって、女神のように美しく微笑んだ。

美緒「マスター、来てくれて、ありがとう」

譲二「とても綺麗だったよ。お幸せにね」

 それらの拷問を済ませるとやっと会場から外に出られる。



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一護「二次会では朝まで飲んでやる!」

理人「みんなハル君を捕まえて、絶対に美緒ちゃんと二人にしちゃダメだからね」

剛史「おう!ハルにとにかく飲ませて、酔い潰してやる!」

竜蔵「お前ら、ヤケ酒が飲めていいよなあ…」

理人「リュウ兄はしらふなんだから、ハル君を見張って絶対逃がさないようにしてよね」

竜蔵「お、おう」

一護「ハルの奴絶対許さねー」

剛史「絶対阻止するぞ!」

竜蔵「おう!」




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 二次会に行くという一護たちと別れてクロフネに帰る。


 もう一度一人で飲み直しだ。

 明日は二日酔いで酷いことになるだろが、今夜はとにかく潰れるまで飲みつづけたい。

 花嫁姿の美緒は輝くように美しかった。

 そしてハルと美緒は本当にお似合いだった。

 …俺は完敗だ。

『祝婚』おわり

次はJe te veux (おまえが欲しい)』~その1になります。


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どのルートでも、誰かの結婚式での幼なじみたちはこんな感じじゃないかな。
そして、譲二さんは自分の式以外では、ひたすら泣き崩れていると思う。




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