恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

気になるひと

2014-12-23 08:02:51 | 年上の彼女

 男性が10歳上の恋愛がアリなら、女性が10歳上の恋愛というのもアリなんじゃないかと考えたのがこの話の発端です。

 女性の年齢ですが、「最後の恋、僕にください」のヒロインが34歳なので、敢えてアラフォーの女性にしてみました。

 そして、譲二さんルート以外の譲二さん(つまり彼女無し)で、年齢は35歳の時ということにしてみた。

 ということなんですが、この話を書いた後に『ひとつ屋根の下』でヒロインの母親、16歳上の女性と譲二さんを結びつけちゃったので、もう10歳上なんて年の差、大したことない…と思えるようになりました。

 そして、この話のヒロインにとって、譲二さんは10歳も年下の若い男性なんだけど、色気のある大人の男性で頼りがいも包容力もあるという、ものすごくおいしい男性になっちゃいました。


☆☆☆☆☆

 譲二ルート以外のどれかのルートの譲二さん。
 本編のヒロインは大学を卒業して就職、クロフネを出ている。


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気になるひと~その1

〈奈実〉
 もう恋など諦めて久しいのに、好きな人ができた。

 その人の名前は茶倉譲二さん。

 クロフネという喫茶店のマスターだ。

 年は34歳、私より10歳年下になる。




 譲二さんと初めて出会ったのは、異業種交流会でだった。

 同じグループで席が隣りになって、いろいろ話していたら、お互い歴史好きなことが分かって2人で盛り上がった。

 しかも、譲二さんと私では好きな時代に微妙な差があって、彼の話には私の知らないこともたくさんあって、とても楽しかった。

 その時、たまたま年齢の話になって、歳を誤魔化すのが嫌いな私は正直に自分の歳を言った。

 譲二さんはとても驚いたようだった。

譲二「え?そうなの?奈実さんは俺と同じくらいかと思ってた。」

 私は小柄で童顔だから歳より若く見えることはたしかだけど、流石に10歳も若く見えるなんてことはない。

 だからそれは彼の精一杯のお世辞なんだと受け取ることにした。

譲二「でも、それだと、タメ口じゃなくて敬語を使わないといけないかな?」

奈実「敬語なんか使ったら、話しかけられても返事しないから」

譲二「それは困るなぁ」

 譲二さんの笑った顔はまるで少年のようで、なんだか心惹かれた。

譲二「でも奈実さんは変わってるね」

奈実「どうして?」

譲二「だって、奈実さんは若く見えるんだから、サバをよんでも誰にも気づかれないでしょ?
大抵の女性はサバをよむか誤魔化して自分の歳なんか言わないよ」

奈実「だって。その時は誤魔化せても、学校時代の話や子供時代の話題を話したらすぐにばれちゃうでしょ?」

 譲二さんは感心したように微笑んだ。

奈実「それに歳をバラしてあったら、自分より若い人たちの中でいるとき、自虐ネタで話を盛り上げることが出来るもの」

譲二「あっ、それ、俺にはよく分かるかも。
うちの常連で10歳年下の奴らがいるんだけど、そいつらと話す時は口癖のようにオジサンて言ってしまうんだよね」

奈実「譲二さんと10歳違い?
譲二さんがオジサンなら私はおばあちゃんになるわね」

と、いつものノリで返したら、譲二さんはちょっと困ったような顔をした。

譲二「奈実さんはおばあちゃんなんかじゃないよ…」

 ともかく、その歳を誤魔化さなかったと言うのは、大きなポイントになったようだった。


 異業種交流会ではちょっと大きな記念行事があり、その企画をくじ運の悪かった私と譲二さんが担当することになった。

 イベントが終わるまで、私たちは毎週顔をあわすことになり、メアドも交換した。

 みんなからは凸凹コンビとからかわれた。

 そう、譲二さんは183cmもあるそうで、自称151cm(多分150cmには届かない)の私は絶えず上を向いて見上げないと、譲二さんの顔も見ることができない。

 とにかく、私たちはイベントを成功させるべく、2人で頑張った。

 クロフネにおじゃまして、打ち合わせしたり、メールでも頻繁に連絡をとった。

 何かと協力しているうちに、私たちは結構気が合うことに気づいた。

 譲二さんは私のことをどう思っているのだろうと思う。

 私が小柄なせいか、譲二さんはよく「奈実さんは可愛いね」と言ってくれる。

 でも、10歳も年上の女性のことを本気で好きになるとは思えないから、それは単にお世辞なのだろう。


その2へつづく

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気になるひと~その2
〈譲二〉
 異業種交流会で一人の女性と知りあった。

 初めて会ったとき、彼女は俺の隣りに座っていた。

 随分小さい可愛らしいひとだなぁというのが、第一印象だ。

 話してみると、実は俺と同じ歴史好きで、何だか気が合いそうだった。

 話し出すと止まらない俺の歴史ネタを楽しそうに聴いてくれる。

 しかも、それに対する質問が的確だ。

 彼女は明石奈実と名乗った。

奈実「そんなに歴史に詳しいなんて、譲二さんはいくつなの?」

 俺が34歳だと答えると、にっこり微笑んで「あら、じゃあ私の10歳下なのね」と言う。

 俺は驚いた。とてもそんな風には見えなかったから。


 可愛らしくて女らしい、それでいて気取らない彼女に俺は惹かれた。

 そして、幸運なことに俺と彼女は異業種交流会のイベントの企画担当にくじであたった。

 彼女とメアドも交換した。

 それから彼女と週に一度は会ってイベントの企画をし、メールも頻繁にやり取りした。

 俺より10歳上だと言ったが、そんなことは全く気にならないほど彼女と過ごす時間は楽しかった。

 そのうち打ち合わせ以外にもクロフネに訪ねて来てくれるようになった。

 彼女は俺のことをどう思っているのだろう?

 彼女は独身だとは言っていたが、恋人はいるのだろうか?

 あんなに魅力的な女性だから、きっと恋人はいるんだろうな…。



 夕方から奈実さんがクロフネに来ていた。

 いつものごとく彼女に上手くのせられて、俺は歴史の話を1人でしゃべっていた。

 にこにこと微笑む彼女があまりに可愛くて、見とれてしまう。

奈実「私の顔に何か付いてる?」

譲二「いや、奈実さんて、本当に可愛いなって思って」

 奈美さんはふふっと笑った。

奈実「譲二さんて、本当にお世辞がうまいよね。本気にしちゃう。
それで何人の女の人を泣かせて来たの?」

 からかうように俺を覗き込む瞳がキラキラと光った。

譲二「嫌だなぁ。俺は本当のことしか言ってないのに…。
それに俺はそんなにモテないよ。振られてばっかりだ」

奈実「うそ。譲二さんを振る女の人がいるなんて信じられない」

譲二「じゃあ、奈実さんは俺が好きだって告白したら、振ったりしない?」

奈実「え?」

 いつもなら適当にジョークで返す奈実さんが、大きな瞳を見開いて俺を見つめる。

 本心ではあるけれど、軽いノリで言った言葉をそんな風に返されて、俺はドギマギしてしまった。

譲二「…あのさ、失礼なことを聞いてもいい?」

奈実「何? 大抵のことは平気だよ」

 ああ、いつもの奈実さんに戻った。

譲二「奈実さんて…独身だって言ってたよね…」

奈実「そうだよ。だから一人暮らし」

譲二「でも、恋人はいるんでしょ?」

 突然、奈実さんは笑い出した。

譲二「え? 俺、そんなにおかしな質問した?」

奈実「ごめんなさい。譲二さんが急に改まってそんなことを聞くから…」

譲二「もう、そんなに笑わないでよ。
そんな風に誤魔化すってことは、やっぱりいるんだ」

奈実「いないよ、恋人なんて…。いない歴だって長いんだから」

譲二「本当に?」

奈実「本当だよ。恋人がいたらもっと見せびらかしてる」

 言いながら、なおも笑いこけている。

譲二「じゃあ、俺、エントリーしてみようかな…」

奈実さんは戸惑ったように、笑うのを止めた。

奈実「譲二さんて、たらしだよね」



その3へつづく

 

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気になるひと~その3
〈奈実〉
 私は輸入雑貨を無店舗でネット販売しているのだが、経営についての相談を時々譲二さんにするようになった。

 彼は単なる喫茶店のマスターかと思っていたら、実家はあの茶堂院グループということで驚いた。

 子供の頃からグループで重要な役割を担えるような英才教育をさせられていたそうで、今も時々実家の経営の手伝いをさせられているという。


奈実「それなのになんで喫茶店のマスターなんかやってるの?」

譲二「それも枕詞に『はやらない』がつくんだけどね」

譲二「先代の黒船のマスターが突然亡くなって、あの店を潰したくなかった俺が名乗りを上げたってわけ…」

奈実「でも、実家の方達はそれで納得されているの?」

譲二「納得はしてないでしょ?
でもまあ、跡継ぎは兄貴がいるし、俺は次男だから…。
いなけりゃいなくてもいいってところかな」

奈実「そうなんだ。でも、経営を手伝っているっていうのは?」

譲二「手伝うというか相談を受けてるっていうか…。
兄貴はなぜだか俺のアドバイスが欲しいらしい。
といっても無報酬で…。おかげでクロフネの経営だけだとカツカツなんだけどね」

奈実「それだと、いずれは実家の会社を手伝ったりするの?」

譲二「どうだろう。俺1人の食い扶持だけならクロフネで十分だし…。
家族の増えるあてもないしね」

 譲二さんは苦笑いした。

 『家族の増えるあてはない』という言葉を聞いて、とても喜んでいる私がいる。

 なにバカなことを考えているんだろう。

 譲二さんの家族のなり手に10歳も年上の女が名乗りを上げても、譲二さんが困惑するだけだろう。

 バカな考えを振り払おうと頭を振ると、面白そうに私を見つめる譲二さんと目が合った。

奈実「えっと、スケジュールに確かミスがあって、直さないと…」

 私は白々しく話題を変えた。


その4へつづく

 

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気になるひと~その4
〈譲二〉
 イベントが無事に終わった後、俺は思い切って奈実さんを食事に誘った。

 これからは2人で会う理由がなくなってしまうのが、寂しかった。

 奈実さんは少し驚いた顔をしたが、微笑んでOKしてくれた。

 夜景の見えるホテルの最上階のレストランでの食事。

 彼女との会話は楽しかった。

譲二「奈実さん、またこんな風に時々会ってくれる?」

奈実「え?私でいいの?もっと、若くてきれいな女性といた方が楽しいでしょ?」

譲二「奈実さんは若々しいし、きれいだよ…」

奈実「またまた、譲二さんはお世辞がうまいよね」

 俺の言葉ははぐらかされてしまう。

 そのうち、俺の誕生日の話題になった。

 来月、5月1日だと言うと、

奈実「それはぜひお祝いしましょう」

と言い出した。

奈実「だって、誕生日がくれば、譲二さんは私と9歳違いになるんだもの」

と嬉しそうに笑う。

奈実「私は早生まれだから、来年の私の誕生日までは9歳違いのままよ。
こんなめでたいことは無いわ」

 本気なのか冗談なのか…彼女はそう言って俺の顔を覗き込んだ。


『気になるひと』おわり


続きは『誕生日の夜』です。





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