恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

『ふたり暮らし』

2015-02-27 07:48:35 | 年上の彼女

 10歳上の女性との恋愛。譲二さんはヒロインからみて年下の若い男性なんだけど、色気のある大人の男性で頼りがいも包容力もあるという、ものすごくおいしい男性になっちゃいました。

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 譲二ルート以外のどれかのルートの譲二さん。
 本編のヒロインは大学を卒業して就職、クロフネを出ている。


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『ふたり暮らし』~その1


〈奈実〉

和成さんから隠れるためという理由で、クロフネでの同棲生活が始まった。

あれから和成さんからの接触は今のところない。

伊藤くんには「知り合いのところに下宿させてもらうことになった」とだけメールを入れた。



譲二さんのために色々してあげられるようになったのが、私には嬉しかった。

朝食の準備を2人でしたり、譲二さんのカッターシャツにアイロンをあてたり。

忙しい時間帯はクロフネの手伝いもした。

昼食は交代で賄いになるけど、夕食は2人で相談して作る。

同じメニューでもそれぞれのレシピは異なっていて、レシピの交換も楽しい作業だ。


常連さんからは

「あれ新しいバイトの子が入ったんだね」

「百花ちゃん以来だね」

「バイトは美人さんばっかりで、マスターも隅に置けないね」

と言われて、ちょっとくすぐったい。

譲二「奈実には自分の仕事もあるんだし、無理しなくてもいいのに」

奈実「ここに置いてもらうんだから、自分の食い扶持くらい稼がないと」


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ハルくんとタケくんに話を聞いてもらっている。

変装してクロフネまで来た話は2人にひどく受けた。


春樹「その2人の様子、見てみたかったなあ」

剛史「ニンジャの扮装が必要だったら、また貸しますよ」

奈実「え?ニンジャ?」

春樹「それなら俺も魔法使いの扮装ならお貸しできます」


私は吹き出してしまった。


奈実「それどういうこと?」


 笑いころげる私に2人は代わる代わる高校時代のクロフネでのハロウィンの話をしてくれる。


奈実「わあ、そのみんなの仮装ぜひ見てみたかったなあ。今年のハロウィン、仮装でパーティしない?」

春樹「ええ? 仮装ですか…」

剛史「いいですよ」

奈実「ふふっ。それで譲二さんは何の仮装をしたの?」

春樹「譲二さんはあの時仮装しなかったからなあ」

奈実「そうなんだ。じゃあ、今度は何を着せよう?」

剛史「マスターの仮装か…」


 その時チャイムがなった。


奈実「あ、りっちゃん」

理人「みんなで何悩んでるの?」

奈実「今年のハロウィン、譲二さんにも何か仮装をさせようと思って」

理人「ハロウィンの仮装なら、奈実さんは何着るの?」

奈実「私?」

理人「マスターはメイド服が大好きみたいだから、奈実さんもメイド服を着せられるよ」

奈実「ええ⁈40過ぎた女にメイド服なんて無理!」


 そこへ譲二さんが割って入る。


譲二「奈実にメイド服なんて絶対に着させません」

剛史「断言した…」

春樹「聞いてたんだ…」

理人「マスターずるい!僕らの百花ちゃんには『絶対メイド服だ』なんて言って着せといて、自分の彼女には着せないなんて」

譲二「ずるくありません」


その2へつづく


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『ふたり暮らし』~その2


〈奈実〉

 

 若い常連さんたちの中でも、剛史くんとは特に気があった。

 私がボケてみせると絶妙なタイミングで、突っ込んでくれるし、タケくんの好きなマンデーは昔少年マンガの方が好きだった私の愛読書だったから。

さすがに今は読んでないけど、今の作品でも気に入って単行本買いをしているものがあるので、マンガの話ではいつも2人で盛り上った。

 そんな時は後で譲二さんがヤキモチを妬くのでおかしかった。


譲二「奈実は若い男に囲まれてると、生き生きしてるんだよな。」

奈実「あらっ、私は若い男性の精気を吸って若返ってるのよ。知らなかった?」

譲二「え?」

奈実「今一番私が精気を吸い取っている若い男性は、クロフネっていう喫茶店でマスターをしている人なんだけどね」


 譲二さんは苦笑しながら私を抱きしめる。


譲二「奈実にはかなわないなぁ…。俺をこんなに夢中にさせて…」

 



〈譲二〉
 ひょんなことから奈実と同棲することになった。

 本当は彼女と早く結婚してしまいたいところだが、俺の不安定な収入を思うとプロポーズはためらわれた。

 だから、次善の策として同棲はずっと考えていたことだった。

 でも、彼女は一人立ちした大人の女性だし、俺より9歳年上というのをひどく気にしていたから、その話の持って行き方をどうしようかと悩んでいた。

 それが元夫から彼女を守るためという大義名分ができて、2人で暮らせるようになったのだ。

 今のところ元夫からの接触はなく、ちょっとホッとしている。

 大げさな逃避行も奈実の安全を考えてのことだったが、今は笑い話になっている。

 女性との二人暮らしは百花ちゃん以来だが、奈実と暮らすのは毎日が新鮮な驚きに満ちている。

…なんていったら大げさだろうか?

 今まで一人でしていたことを2人でするようになり、日々のちょっとした相談事も奈実には気軽にできる。

 俺はいろんなことを自分の中に溜め込んで、1人で解決しようとするところがあるが、奈実にはどんなことでもぽろっと漏らしてしまう。

 可愛らしく見えてもやはり年上の女性だから、俺はうまくあやされているのだろう。

 それでいて、奈実はまるで俺の力で解決しているようにうまく思わせてくれるのだ。

 俺はもう奈実に夢中だった。寝ても覚めても彼女のことを考え、彼女のために何かしたいと思っている。

 


その3へつづく


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『ふたり暮らし』~その3


〈譲二〉

 

 ハルやタケたちにせがまれて奈実を紹介した時には、彼らと奈実がここまで親しくなるとは思っていなかった。

 しかし、奈実がクロフネに毎日いるとなると、以前のように毎日集まることは無いとは言っても、彼らとの接触は多くなる。

 あいつらといる時の奈実は水を得た魚のように生き生きしていて、俺の嫉妬心をあおり立てる。


奈実「だって20歳も違うんだよ。譲二さんと違って、親子という可能性だってある年齢差なんだよ。
あの子たちだって、恋愛感情抜きで話せるから懐いているに決まってるじゃない」


 そういって、奈実は笑い転げる。


譲二「そうは言っても、奈実は俺といる時より楽しそうに見える…」


 なおも奈実は笑いながら俺を抱きしめた。


奈実「私が一番楽しいのは譲二さんと一緒にいる時に決まってるじゃない。
そんなの譲二さんが一番わかっているくせに…」


 そして、背伸びして俺の首に手を回すとキラキラした目で俺を見つめる。

 そうなると俺は彼女にキスせずにはいられなくなる。


 ただ、あいつらが俺たちの中に加わってよかったなと思うことが一つあった。

 20歳年下というあいつらがいるだけで、俺との9歳の年齢差をあまり気にしなくなったことだ。

 年齢という線引きで考えると、俺はどうもあいつらではなく、奈実と同じグループになるらしい。

 俺と付き合い始めたばかりの頃より明るくなった奈実をみて、ほっとしている。


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 窓からの月明かりの中、奈実と抱き合っている。素肌に奈実の柔肌が触れて心地よい。


奈実「私もう譲二さん無しでは生きて行けない…」

譲二「ありがとう…。俺も奈実無しでは生きて行けないよ…」

奈実「ずっとずっと一緒にいてね」

譲二「ああ、もう離さないよ…」

奈実「離れようとしても、しがみついて離れないから…」

譲二「それは嬉しいな…。俺、奈実が思っている以上に奈実に夢中だから…」


奈実が俺の胸に顔を埋めた。

 俺は奈実を妻にするために、実家の手伝いをすることも検討し始めた。

 


 

『ふたり暮らし』おわり。続きは『忍び寄る影』です。




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