kirekoの末路

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短編:『餓え』

2008年05月02日 22時44分13秒 | 短編



腹が減った。
もう三週間も何も食ってない。

腹が減った。
最後に胃に入れたのは、泥水だけだ。

腹が減った。
こんな暗い夜道に食べ物は落ちてないか。

腹が減った。
犬ころも美味そうだ。猫も美味そうだ。

腹が減った。
だが、腹が減りすぎて捕まえられやしねえ。

腹が減った。
誰か俺を満腹にしてくれ、腹が減った。

腹が減った。
うらぶれた路地の裏から、ぶくぶく太ったボウズが出てきた。

腹が減った。
幸せそうに買い食いしているボウズの手には、てりやきバーガーとポテトとジュース。

腹が減った。
てりやきバーガー落ちろ。ポテトも落ちろ。

腹が減った。
器用にチューチュー吸ってるジュースも落ちろ。

腹が減った。
おいしそうにむしゃむしゃしやがって。ちくしょう。

腹が減った。
周りに誰も居ないのを確認して、噛み付いた。

腹が減った。
痛がってうるさい。首をへし折って黙らせた。

腹が減った。
赤色のジュースが美味い。肉は焼いて食べれる。

腹が減った。
まだ食べたい。

腹が減った。
ちぇっ、カバンはプラスチックか。これは美味しくない。

腹が減った。
あらかた食べ終わった。ちとぶかぶかだが、服はもらっとこう。

腹が減った。
血まみれの俺を血相変えて捕まえる警官。いてえよ、なにしやがる。

腹が減った。
がみがみうるせえ。俺はイラッとして、そいつを食おうとした。


バキューン!


うぇっぷ、満腹だ。
こんなマズイもの、腹に入れるなよ。いてえし、重たいじゃねえか。





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■あとがき

人間なんでも究極を突き詰めると、理性よりも本能が先に出るもんだ。
食うにしたって、死ぬにしたってしかり。