■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 014 独創技術が営業・予算要らずのメッキ屋を育む 7B01-0512-014
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■ 独創技術が営業・予算要らずのメッキ屋を育む 7B01-0512-014
◆営業をしない、予算も売り上げ目標もない、中長期の計画もない…。ないないづくしの経営を実践し、好業績を収めている企業がある。清川メッキ工業(福井市、清川肇社長)がそれ。ないないづくしを可能にしたのが「参考書がなく、聞く人もいない中で挑戦し開発した」(清川社長)というバレル式めっき工法をはじめとする独自技術の数々。同社が40年ほど前に定めた企業理念『自由なる創意の結果が、大いなる未来を拓く』の正しさを身をもって証明しているところだ。
◆同社は清川現社長の父親である清川忠現会長が1963年に創業した。新卒採用はゼロ、途中入社の社員はすぐ辞めるといった厳しい状況が長く続いたが、どんな注文に対しても「できる」「やれる」と応える創業者の前向きな姿勢が徐々に実を結び、経営基盤は少しずつ固まっていく。さらに、コンピュータ・半導体メーカー、電機メーカー、商社に勤めていた長男、次男、三男が相次いで入社し、それぞれが技術・開発、製造・品質保証、総務・人事を担当する体制が構築されたことで、企業体質はより強固となり、今日に至る。
◆長男で、1991年に入社、2010年に父からバトンを受けた清川肇社長は、地元・福井大学大学院で成膜技術を修めたエンジニア。前向き姿勢を貫き通す創業者、技術者魂にあふれる2代目-の親子コンビは、独創的なメッキ技術を数多く生み出す。その最たるものが、バレルという容器の中で、電子部品などの小物に対してまとめて、めっきを施す工法。清川社長は「大学の先生もどうしたらいいか分からず、自分で考え、数打ちゃ当たると試行錯誤を繰り返し、実用化に結び付けた」と説明。「先生のいない仕事が一番面白い」とも言う。
◆「主要顧客は輸出部品メーカーで動向が読めないから営業はしない」(清川社長)という同社は、予算も売り上げ目標も中計も持たない。「加工業で自社製品はなく、あるのはめっき技術だけ。客の都合で計画や予測は変わってしまうため、来るもの拒まず去る者追わずで、臨機応変に経営している」(同)。この臨機応変の経営は、高い技術力の為せる業といえそうだ。もっとも、営業はしない中でも、ホームページでの情報発信や展示会出展には力を入れており、それらの効用を「千に三つの確率だがホームランも飛び出す」(同)と評している。
◆清川現会長は約40年前、冒頭に記した『自由なる…』の企業理念を打ち出した。以後、代が変わっても受け継がれ、同社のDNAとなるこの理念の正当性は、安倍首相が15年春、福井の中小企業代表として同社を訪問したことが雄弁に物語る。清川社長は「東京五輪のメダル制作を当社で手掛けよう」と、ないないづくし経営には珍しく明確な目標を設定。金・銀・銅のメッキ技術を通して、清川メッキの名を世界に轟かせようとしている。
出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成