牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

11月8日(木) 「分断されるアメリカ①」 サミュエル・ハンチントン著  集英社

2012-11-08 16:39:13 | 日記

 アメリカ大統領選挙が終わり、オバマ大統領が再選した。

 以前にサミュエル・ハンチントン著の「文明の衝突」を読んだが、今日は同著者の「分断されるアメリカ」の第1章~第3章を読んだ。本書は副題が「ナショナル・アイデンティティの危機」で、アメリカ人の国民としての自己認識に生じつつある変化を扱っている。

 本からの引用。「アメリカの中核にある文化はこれまでも、また現在もなお、主としてアメリカの社会を築いた17世紀および18世紀の入植者たちの文化である。その文化の中心的な要素は様々な方法で定義できるが、そこにはキリスト教の信仰、プロテスタントの価値観と道徳主義、労働倫理、英語、イギリスの法の伝統、司法、政府権力の制限、およびヨーロッパの芸術、文学、哲学と音楽の遺産が含まれる。この文化をもとに、初期の入植者はアメリカの信条を築き上げ、そこに自由、平等、個人主義、人権、代議政体、そして私有財産の原則を盛り込んだ。その後にやってきた移民は何世代にもわたってこの建国の入植者の文化に同化し、それに貢献し、手を加えていった。

 続いて本からの引用。
 「1820年から2000年の間に、およそ6600万の移民がアメリカにやってくると、アメリカの国民は祖先と民族性および宗教の面で非常に異質な人々の集まりに変わった。」
 「しかし、アメリカの人口に占めるイギリス系アメリカ人の割合は減少したものの、入植者だった祖先のアングロ ー プロテスタントの文化は、アメリカのアイデンティティを決定づける要素として300年にわたって生き残ったのである。」


 確かにアメリカは変化している。これまでは大半が白人・キリスト教のプロテスタントだったのが、今では人種も宗教も多様化している。今回の大統領選挙を見てもよく分かる。黒人であるオバマ氏が大統領に再選し、モルモン教徒のロムニー氏が大統領選挙を戦った。今までだったら考えられなかったであろう。日本だったらたとえ日本人であっても、また日本国籍を持っていても、他人種や多民族の人が日本の総理大臣に選ばれるのは無理だと思う。そもそも日本はアメリカのようにこんなにも多くの移民を受け入れることができないであろうし、私も正直に言って他の国々から大量の移民が来たら違和感を覚えるであろう。

 私はニュージーランドへ聖書を勉強するために留学していたことがあるが、ニュージーランド人は移民の受け入れに関してアメリカ人ほど積極的ではなかったと感じた。特にアジア人の移民に対して。ニュージーランドも基本的にはアメリカ同様、アングロ ー プロテスタントの 文化だ。ニュージーランドにはイギリス人が入植する前からいた先住のマオリ族との関係を調整する問題も抱えているが、白人中心の文化を壊されたくないという気持ちが強くあると思う。ある意味それは当然の心情ではないだろうか。ニュージーランドは全人口が約400万人しかいない小さい国だ。北海道の人口よりも少ない。そこに中国人、韓国人、日本人、インド人などが大量に流れてきたらどうだろうか。あっという間に国が変わってしまう。すなわち国(国民)のアイデンティティを失ってしまうであろう。そのように他の国々と比較すると、アメリカは懐が広いなあ、器が大きいなあと感じる。