牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

11月3日(土) 「ポジショニング戦略」 アル・ライズ&ジャック・トラウト著  海と月社

2012-11-03 16:24:55 | 日記

 本書は30年間読み継がれているマーケティングの基本書と言える本だそうだ。いかに自分たちの商品を売るか、がテーマだ。著者は「ポジショニング」というキーワードを通して、消費者とのコミュニケーション理論を展開している。すなわち消費者の頭の中に、商品を位置づける(ポジショニング)方法論だ。今は情報化社会だ。数多くの情報がある中で、自分たちの商品を消費者の頭の中に入れるのは簡単なことではない。自分が消費者の立場で考えてもそうだ。情報が多すぎで迷うことがしばしばだ。ほとんどの情報は頭の中に残らない。いや残さない。
 私は大学で経営を学んだので、経営やマーケティングの本は読んでいて楽しい。経営は会社の経営が一番念頭におかれているが、農業経営、また広く見れば教会経営にも役立てることができる。

 本書で著者が一番言いたいことは次のようなことだ。「情報を発信する側ではなく、情報を受信する側に注目し、人々がメッセージをどのように受け止めるのかに集中しなさい。自分や会社や商品を見つめるのではなく、消費者の頭の中を見つめなさい。企業の側からではなく、消費者の側から考えなければならない。商品を客観的に評価し、消費者の目で商品を見なさい。」

 たくさんのことが書かれていたが、自分の印象に残った提案は以下の通り。本からの引用
 「情報社会でベストなコミュニケーション法、それは、メッセージを単純にすることだ。」 
 「消費者の頭の中に入り込む簡単な方法は、一番乗りすることだ。」
 「ポジショニング戦略の中で最も難しい点は、売り込みたいコンセプトを一つに絞り切るところにある。消費者の無関心の壁を突き動かしたいなら、何が何でも一つに絞り切らねばならない。」
 「あなたがなすべきことは、自社の商品やサービスやコンセプトを、既に消費者の頭の中に存在しているものに関連づける方法を探すことである。」
 「ポジショニングとは、累積的なコンセプトである。長期的に広告し続けてこそ効果が出る。何年間も同じ事にこだわり続けなければ意味がない。」


 
  読んでいると納得するのだが、実際に自分たちの経営やマーケティングに反映させるのは難しい。でも何とか本で学んだことを少しでも生かしたいといつも考えている。さて直売の経営を考えると、一体どのように適用することができるのだろうか。自分たちが生産している野菜(トマトやカボチャなど)がある。私たちはどうしてもいかに自分たちが生産したものを売るかを考えてしまう。でもこの本で言っている「ポジショニング」理論では逆の発想だ。消費者にとって魅力がある野菜や直売所はどのようなものか、と考える必要があるのだろう。数多くの野菜がスーパーや直売所で売られている。その中で自分たちの直売所に来てもらい、野菜を買ってもらうというのは、簡単なことではない。私たちはホームセンターで直売所をさせてもらっているが、お互いにとって相乗効果を期待している。ホームセンター側としては直売所があることによってホームセンターに来る方が増え売上も増えることを期待し、私たちの側としてはホームセンターは集客力があるのでホームセンターに来た方の目にとまって野菜や果物を買ってもらいたい。それなりにうまくいっていると思う。私たちは去年も今年もこのホームセンター内の直売所の売上で北海道一だ。今日も直売所に行ってきたが土曜日ということもあってたくさんのお客さんが買ってくれていた。嬉しい。でもまだまだだと私たちは思っている。

 通り過ぎる人もいる。一度手に取って置いて去る人もいる。そもそもこの直売所に来ない人がたくさんいる。どのように他の直売所やスーパーと競争し、差別化を図るか。値段の安さは大事な要素だが、値段の安さでは勝負できないと思う。安く売っている店が結構あるからだ。ではどうすれば良いか。やはり品質(美味しさ、新鮮さ)と安全さ(カボチャは無農薬、有機栽培、放射能検査)だと思う。また地元産をアピールすべきであろう。でもこれでは結局自分たちの側から見ていることになるのか。消費者にとって魅力的な直売所とは何か。多くの品が揃っていることか。そうであれば大型の直売所には絶対に勝てないことになる。そうするとどうすれば良いか。自分たちも大きな直売所を目指すのか。それとも大きな直売所に参入する方が良いのか。大きな直売所になくて自分たちにあるもの、自分たちが用意するべきものは何か。いや消費者が求めているが、現在どの直売所にもないものを探すということか。これらは大きな課題であり挑戦だ。

 あとは広告や宣伝方法の工夫もする必要があるだろう。とにかく情報化社会において消費者の頭の中に自分たちの生産物がポジションを取ることを望む。一歩一歩あせらずに着実にやっていこう。