特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

6-2・静止系が客観的な存在だと何が困るのか?(超光速通信or因果律違反)

2023-07-20 02:20:40 | 日記

前のページからの続きです。

参照の為に図1と図2を示しておきます。

図1:時計AがY軸で、つまりは静止系で時計Bが相対速度0.8Cで時計Aから離れていきます。

y=0,x=0,y=1.25x,x=4,y=5  プロット  -10<x<10, -10<y<10

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D1.25x%2Cx%3D4%2Cy%3D5%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-10%3Cx%3C10%2C%E3%80%80-10%3Cy%3C10

時計A時間で5日経過した所で時計Bの時刻を確認すると3日経過しています。

3=5*sqrt(1-0.8^2) です。

 

図2に時計Aと時計Bの立場を入れ替えた状況を示します。

y=0,x=0,y=-1.25x,x=-4,y=5  プロット  -10<x<10, -10<y<10

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D-1.25x%2Cx%3D-4%2Cy%3D5%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-10%3Cx%3C10%2C%E3%80%80-10%3Cy%3C10

今度はY軸が時計Bを示し、左上に上がっていくコトブキ色の線が時計Aを示します。

あとの議論は上記とまったく同じでただ時計Aの立場と時計Bの立場が入れ替わっただけです。

 

そうして前のページの結論はこうでした。

『そうしてこの場合は時計Aの主張と時計Bの主張は独立していて、お互いにそれを否定する事はできません。

そういう関係に時計Aと時計Bはなっています。』

 

さてここで「タキオン反電話の登場」となるのです。

この装置は「タキオンを通信に使う事で過去に情報を送れる」と言うものがうたい文句です。

そうして通説の理解では「タキオンが存在すると過去に情報を送れるために因果律違反が発生する」となっています。

したがって「タキオンは存在しない」、あるいは「存在しても我々の宇宙とは相互作用しない」と想定されています。

さらには「従って光速をこえる通信、情報伝達はできない、というものが特殊相対論の結論である」と広く信じられています。

さてこの結論は本当でしょうか?

タキオンを使った「タキオン反電話」は本当に過去に情報を送れるのでしょうか?(注1)

「時間の遅れを直列接続する」と「情報は過去に戻る」のでしょうか?(注2)

 

さてそういう訳でまずは「タキオンが存在すると過去に情報が送れる」と主張する通説の説明を見ていきます。

前提は時計Aと時計Bが登場し0.8Cの相対速度で時計Bが離れていく、と想定します。

その状況は図1で示した通りのものです。

それで「時間の遅れはお互い様」では「タキオンレーダーで時計Aが時計Bの時刻表示を読みとった」のですがここでは時計Bが時計Aからのタキオン通信を受け取る、という設定になります。

時計Aからのメッセージは次のようなものです。

「当方の今の時刻は時計Bすれ違い後5日経過した」

その時に時計Bの時刻は3日経過でした。

しかしながら時計Bにしてみれば「移動しているのは時計Aだ」となります。

この主張はアインシュタインの教義その1「全ての慣性系は平等である」に基づいています。

さてそうであれば時計Bにしてみれば状況は図2に示すようなものになっています。

 

但しここで注意が必要なのは「図2そのままではなくて図3になっている」という所にあります。

図3:時計B時刻で3日経過した時に時計Aからのタキオン通信が届いた事を示す図

y=0,x=0,y=-1.25x,x=-2.4,y=3  プロット  -10<x<10, -10<y<10

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D-1.25x%2Cx%3D-2.4%2Cy%3D3%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-10%3Cx%3C10%2C%E3%80%80-10%3Cy%3C10

Y軸に時計Bがいて左上に離れていくのが時計Aの軌跡。

時計Aからのタキオン通信は時計B時刻で3日後に届いたのだからY軸の値が3の紫色の横線が時計Aからのタキオン通信波を示す。(と時計Bは解釈するのです。何故なら「タキオンは水平に飛ぶからである」と言うのが時計Bの主張となります。)

 

さてそれで時計Bは時計Aからのメールに対して以下の様に返信をだすのです。

「当方、時計Aとのすれ違い後3日けいかした。

>当方の今の時刻は時計Bすれ違い後5日経過した。」

まあこれが大抵のメールの返信の仕方であります。

 

さてこれを即座に時計Aに返信しますが、そのタキオン波を示すものは上記と同じ紫色の横線となります。(ここでは時計Bはディレイタイムゼロで返信できるとしています。)

さてそれでこの時に時計Bから時計Aへのタキオン到着時刻を計算しますと

1.8=3*sqrt(1-0.8^2) となります。

つまりは時計Bしてみれば「時計Aはすれ違い後1.8日しか経っていないのに『すれ違い後5日経過した』などといういいかげんな情報を送ってきた」となるのです。(注3)

さてこの時計Bの見方が正しいとするのが通説の主張する「タキオン反電話の説明」となります。

 

通説ではまずは「時計Aが静止系だ」として「時計Bにタキオン波が届く時刻を計算します」。

そうすると時間遅れの計算に従って「時計Bは3日経過」となります。

次にここで計算の主体を(つまりは静止系を)時計Aから時計Bに「恣意的に入れ替えて」、「タキオン波が届いた時に時計Bからみれば時計Aの経過時間は1.8日だ」と計算するのです。

そうであれば時計Aは時計Bとのすれ違い後5日で出したメールの返信をすれ違い後1.8日に受けとる、つまりは「こうしてタキオン反電話は情報を過去に送れるのだ」と主張するのです。

 

この主張が本当であれば時計Aは時計Bに『当方の今の時刻は時計Bすれ違い後5日経過した。』というメッセージを出す前にタキオン通信機から

『当方、時計Aとのすれ違い後3日けいかした。

>当方の今の時刻は時計Bすれ違い後5日経過した。』

というメッセージを時計Aタイムで時計Bとの擦れ違い後1.8日で受け取る事になるのです。

 

そうしてアインシュタインもトルーマンも「そんなバカな話はありえない」、「それは原因の前に結果が来ている」=「因果律違反だ」として「光の速度を超える通信はありえない」としたのでした。

 

さて、ところで以上の話を再度時計Aの立場から振り返りますと図4の様になります。

図4:

y=0,x=0,y=1.25x,x=4,y=5,y=1.8,y=0.8x+1.8  プロット  -10<x<10, -10<y<10

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D1.25x%2Cx%3D4%2Cy%3D5%2Cy%3D1.8%2Cy%3D0.8x%2B1.8%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-10%3Cx%3C10%2C%E3%80%80-10%3Cy%3C10

図4は図1の表示に時計Bから時計Aに届いたタキオンを左下に向かうコトブキ色の線で示しています。

そうしてこれが時計Bの主張する「時計Bからのタキオンは時計Aタイムで1.8日に届く」というものを示しています。

さてそれで問題になるのは「時計Aから時計Bに出したタキオンはY軸の値が5である紫色の横線」で表されています。

このタキオンは無限大の速度を持ちますから「水平線で表すのは妥当」という事になります。

他方で図4では時計Bからのタキオンは時計Bを起点として左下に向かう線で表されY軸とは1.8で交差しています。

そうしてこのタキオンを指して通説では「光速を超えるタキオンは過去に向かって走る」と表現しているのです。

 

しかしながら時計Aから出たタキオンも時計Bから出たタキオンも「同じタキオン」であります。

そのタキオンが一方は水平に走り、また一方が過去に向かって走る、などという事は起り得ません。

どちらのタキオンも「Y軸に正しく静止系を設定したNM図では同じように水平に走る」のです。(注4)

 

従ってこの場合「時計Bからでたタキオンは図4に示された、左下に向かうコトブキ色の線上を走る」のではなくて「図1に示された紫色の水平線上を走る」のです。

つまりは時計Aは時計Bにメールを出したその瞬間に時計Bからの返信を受け取る、ごく当たり前の状況がそこにあるだけであります。(注5)

 

さてそうであれば「タキオン反電話があっても因果律違反は起らない」=「特殊相対論は光速を超える通信を排除していない」となります。

ちなみにこの様な状況にある場合には時計Aは「客観的に存在する静止系にいた」ということであり、そうして又アインシュタインの主張にも関わらず「客観的に存在する静止系は光速をこえる通信を排除しない」という事でもあります。

しかしながら特に注意して頂きたい事は「以上の内容をもってタキオンは実在する」などとは主張していない点です。

そうではなくて「手段は不明ですが、光速をこえる情報伝達があっても問題は起こらない(=因果律違反は生じない)」と主張しているのです。

 

注1:ちなみにこの装置の動作はまるで元祖「電話レンジ(仮)@シュタインズ・ゲート」の様であります

注2:「時間の遅れはお互い様」を言い出したのはミンコフスキーでした。

それに対してアインシュタイン自体は「時間の遅れはお互い様」とは主張せず、少し違う事を主張しました。

しかしながら「光速を超える通信が存在すれば情報を過去に送れる」と言う話はアインシュタインとゾンマーフェルトの論文で初めて登場している様です。

従ってアインシュタインは「光速を超える通信が情報を過去に送れる」という事については「最初の提案者である」としてよいかと思います。

しかしながら「情報を過去に送れる」というアインシュタイン提案の手順についての具体的な情報については残念ながら現時点では確認できておりません。

ただしアインシュタインは「光速を超える情報伝達は因果律違反を引き起こす」という認識には到達していた模様です。

注3:ここでのポイントは「時計Bは単に計算で時計Aの経過時間を算出しているだけである」という点にあります。

時計Bが時計Aからのタキオン通信を受けとった、まさにその瞬間に時計Bがタキオンレーダーで時計Aの時計が示す時刻を読み取っていたならば時計Aの時刻は「5日経過」となっていたでしょう。

そうであれば「時計Aはすれ違い後1.8日しか経っていないのに『すれ違い後5日経過した』などといういいかげんな情報を送ってきた」などと時計Aを非難する事はなかったと思われます。

注4:あるいは次のように言いかえる事も出来ます。

時計Aが出したタキオンレーダー波は時計Bの時計が指し示す時刻を読み取り即座に時計Aに向かって反射し戻っていきます。

その時の時計B反射のタキオン波は水平に飛びます。

さてその時同時に出された時計B発の返信メールを伝えるタキオン波が水平に飛ばずに過去に向かって飛ぶ、などという事は無いでしょう。

「どちらのタキオンも時計B発」なのですから「同じ軌跡を描いて飛ぶ」と言うのは常識的な判断となります。

 

さてそのように考えますと通説の主張はとても面白い内容を含んでいる事が分かります。

宇宙船の外に設置された時計Bの時刻表示部からの反射タキオン波は水平に飛ぶ、但し宇宙船の中の時計Bの横に立っている観測者が時計Aの経過時間を計算した場合は時計Bからのタキオン通信波は過去に向かって飛ぶ、という事になります。

つまり「タキオンは時計Bを積んだ宇宙船の観測者の主観が作用しない場合は水平に飛び(時計Aからのタキオンレーダー波の反射の場合)、主観が作用すると過去に向かって飛ぶ(時計Bの観測者が時計Aの時間が遅れていると判断した場合)」という事になります。

そうであれば通説は「タキオンは『私』という存在を感知し、それに応じて飛び方を変える」と主張しているのです。

さてこれは本当に奇妙に見える主張ですが「特殊相対論は主観物理学である=『私』の認識に従う物理学である」とされる方々にとっては「それは当然そうなるのであって、そこには何の問題もない」としています。

注5:ローレンツ変換は「客観的に存在する静止系が対象」であっても「それ以外の慣性系が対象」であっても同じように座標変換します。

ローレンツ変換はその2つのタイプの慣性系を区別しないのです。

その2つのタイプの慣性系を区別できるのはローレンツ変換を行う人間だけであります。

そうであれば「ローレンツ変換を行う人間」はそこの所を意識している必要があります。

コトバを変えますれば「得られたMN図においてタキオンがどう走るのか常に意識している必要がある」という事になります。

 

追記:因果律違反が引き起こすパラドックスについて

上記の例で時計Bからのメール返信をすれ違い後1.8日に受けた時計Aが「そうか、すでに時計Bは当方からのメールを受け取っているのだな」としてそこから3.2日経過した時点で「本来はその時点で時計Bに出すべきメールを出さなかったとしたら一体何がおきるのか?」、いや「起きたのか?」という事になります。

それはつまり「出さなかったメールの返信が来た」ということになり、その状態を指して「因果律違反が発生した」と認定するのです。

つまりは「そこで歴史が変わってしまった」のです。

そうして通常は「そのような歴史改変はありえない」とするのが、まあ「一般常識というもの」でしょうか。

あるいは「そのような歴史改変はしてはいけない」のかどうかは「そこは意見が分かれる所であります。」

まあしかしながら「客観的に存在する静止系」は「情報を過去に送る事を不可能にしています」ので残念ながら(?)「歴史改変は起こらない」のです。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/CieG2