特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

6-4・因果律違反とは何か?(順序が逆転して見えただけでは因果律違反にはならない件)

2023-08-10 04:44:20 | 日記

まずは「3-1 相対論的因果律」から引用します。

https://wwp.shizuoka.ac.jp/tomita/fast3/

https://archive.md/WLIC5

『超光速度パルスによって搬送できる情報については、SommerfeldやBrillouin以来、長い間、議論がなされてきた。相対性理論からは、超光速度での情報伝達は因果律に抵触する。

図3-1は、相対論的因果律を説明する。静止系(赤色座標系)から見て、原因となる事象が先に起こり、結果となる事象が後に起こったとしよう。この2つの事象を超光速度の情報伝達によって結ばれていると仮定する。静止系からみで等速度運動をしている慣性系(緑色座標系)では、同時刻線はローレンツ変換によって傾いた線(緑破線)になる。

この慣性系では、結果となる事象が先に起こり、原因とる事象が後に起こることになる。ある日、携帯電話がなって出てみると明日の世界の誰かからの電話であったということが起こりうる。したがって、超光速度での情報伝達は因果律に抵触する。』

そのページにわかりやすい3-1図が示されています。

原因にいる狙撃主が結果に置いてあるガラスコップめがけてタキオン弾を発射した、そういう絵と理解しましょう。

その時にその狙撃主とガラスコップが静止系(赤色座標系)にあったとしたら、それは前のページで議論した事と状況は同じで、ただタキオン弾のスピードが遅くなっているだけであります。

そうであれば「静止系に対して等速度運動をしている慣性系(緑色座標系)」からみて結果か先に見えて原因が後から視界に入ってきた、としてもそこには何の因果律違反にかかわる問題もない、という事はすでに述べた事でした。

それは前に「静止系の中で起きた出来事を静止系に対して相対速度を持った慣性系の中の観測者がその事象をどのような順序で見ようともそれは勝手ではありますが、それを見て『因果律違反だ』といちゃもんをつけるのはナシだ。」という事でした。

 

それで今度はその狙撃主とガラスコップが「静止系に対して等速度運動をしている慣性系(緑色座標系)に属していた」とした場合の事を考えます。

その場合は「狙撃主とガラスコップは緑色の斜交座標の時間軸と書かれた線に平行に斜め上方に移動中である」という事になります。

そうして、その「静止系に対して等速度運動をしている斜交座標の原点に立つ観測者の同時刻線」は緑色の破線で示されています。

 

この時に同時に静止系(赤色座標系)の原点に立つ観測者も同じ位置=原点にいますが、その赤色観測者には緑色観測者が相対速度Vをもって右に移動している事を認識しています。

そうであればその赤色観測者にとっては「これから狙撃主がタキオン弾を発射しそれがガラスコップを砕くのを見る事になる」のです。

ちなみに赤色観測者には現時点では「銃を構えている狙撃主が自分の右側1.3光分ほど離れた場所にあり、まだ割れていないガラスコップが自分から7光分ほど離れた右側にあり両方ともに右側に移動中である」とその様に見えているのです。

 

しかしながら緑色観測者にとってはその状況は「ガラスコップと狙撃主は静止していて、なおかつガラスコップは緑色観測者にとってはすでに過去の時点で粉々になっており、しかしながら狙撃主はまだ銃を構えているだけでタキオン弾は発射していない」という事を示しています。

さて混乱するやもしれませんが「狙撃主とガラスコップが静止系に対して等速度運動をしている慣性系(緑色座標系)に属する」とした場合はそのような解釈になります。

そうしてそのMN図はそのような状況にある2つの慣性系=赤色と緑色のそれぞれの原点に立つ観測者がちょうどすれ違う、その一瞬を切り取って示したものになっています。

まあそうであればそのMN図の上では「どちらの時間も止まっている、その瞬間を表している」という事になります。

 

さて赤色観測者にとっては緑座標系上の動きはよく分かります。

しかしながら緑色観測者にとって3-1図に描かれた状況がどのような状況であるのか、赤色観測者の立場に立っている我々にはなかなか理解できないのです。

しかしながら緑色観測者にとっては「粉々になったガラスコップは自分から7光分ほど離れた右側に静止しており、いまだタキオン弾の発射を確認していない狙撃主は右側1.3光分ほど離れた場所で同様に静止していて、その狙撃主は1分後にタキオン弾を発射する事になる」という状況を示しています。

 

そうして赤色観測者からみれば「右上上方に光速は超えてはいますが未来方向に飛んだタキオン弾によってこれからガラスコップが破壊される事」になっています。

しかしながらその状況は緑色観測者にとっては「自分の右側1.3光分ほど離れた場所にいる狙撃主が1分後にタキオン弾を発射するであろう」という事を示しており、また同時に「いまだ発射していないタキオン弾によって自分から7光分ほど離れた右側にあったガラスコップは1分ほど前に破壊された」となります。

つまり3-1図に示された緑色観測者の目には「1分ほど前に原因不明でばらばらに爆発したガラスコップと、そのガラスコップから発射されたかのように見えるタキオン弾が自分の右側4光分ほどの所をこちらに向かってきているのを見ている」となるのです。(注1)

 

さて以上の緑色観測者の観測結果をもって通説では「緑座標系では原因の前に結果が出現している=因果律違反が起こっている」とされてきました。

そうしてこの緑色観測者は「自分の慣性系の中で起きている出来事を観測している」のでありますから「他人の慣性系の中で起きた出来事を見て『因果律違反だ』といちゃもんをつけている状況とは違う」という事になります。

その緑色観測者にとっては本当に「因果律違反が起きている」かのように見えるのです。

 

まあもっとも「タキオン弾はガラスコップが爆発する事では生成しない」というものが「物理法則であるならば」という前提条件はつきますが。

「タキオン弾はガラスコップが爆発する事で生成する」を認めますと「因果律違反である」という主張は成立しなくなり「因果律に従った現象が起きている」とそう解釈される事になります。

しかしながらここでは「タキオン弾はガラスコップが爆発する事では生成しない」という事を「物理法則として認める」という事にしましょう。(注2)

さてその場合は「因果律違反が起きた」のでしょうか?

アインシュタイン流の解釈によれば「起きた」となります。

アインシュタインによれば「赤色観測者と緑色観測者の立場に違いはない=両者は平等である」と主張するからです。

そうであれば「緑色観測者の観測結果をもって、光速を超える速さのタキオン弾は否定された事になる」とその様に主張するのです。

 

他方で「客観的に存在する静止系を認める立場」では「赤慣性系は緑慣性系より優先される」ので「赤色観測者の主張が緑色観測者の主張より優先される」という事になります。

従ってこの場合は「赤色観測者から見た緑色慣性系の中の出来事の解釈」になるのですが「因果律違反=原因の前に結果が存在した、という事にはならない」となるのです。

さてその場合には前のページで示した「他人の慣性系の中で起きた出来事を見て『因果律違反だ』といちゃもんをつけるのはナシだ」という主張はどうなるのでしょうか?

答えは「その主張よりも赤色観測者の主張が優先される」という事になるのです。

 

つまりは「緑色観測者は自分の慣性系内の出来事を『因果律違反が起きた』とみるのですが、その原因は緑慣性系が静止系に対して相対速度Vで右側に移動している事に起因して起きている『見かけ上の因果律違反である』」となります。(注3)

そうであれば「タキオン弾が光速を超えて飛んだ事」は原因ではなく、従って「因果律違反が起きたのでタキオン弾の存在は否定された」という事にはならないのです。

 

さて、このようにして考察してみるならば「時間の遅れはお互い様」が成立していれば「超光速通信は存在しない」となり、「時間の遅れは一方的」であるならば「『超光速通信は存在しない』という主張は成立していない」=「宇宙の最高速度は光速Cを越えてもよい」という事になるのです。

 

注1:緑観測者が「1分ほど前に原因不明でばらばらに爆発したガラスコップと、そのガラスコップから発射されたかのように見えるタキオン弾が自分の右側4光分ほどの所をこちらに向かってきているのを見ている」と書きましたが実際は「1分ほど前に原因不明でばらばらに爆発したガラスコップと、そのガラスコップから発射されたかのように見えるタキオン弾が狙撃主の方に向かっていくのを観測する」のは「ガラスコップの横に立っている観測者」です。

それに対して狙撃主と緑観測者は「タキオン弾はタキオン銃から発射され、ガラスコップに向かって走る」のを見ます。

つまりは狙撃主と緑観測者にとっては「タキオン弾はタキオン銃から発射され、ガラスコップに向かって走り、ガラスコップを破壊するのを見る」のです。

その状況はタキオン弾から出る光がそれぞれの観測者の目に入る時間経過を追う事で確認できます。

そうして光は常に、どの慣性系においても右上、左上に45度で飛びます。

そうであればその光とそれぞれの観測者の作る世界線の交点が、その光が観測者に届いた時点をあらわす事になります。

そうして、その様に見ますれば「狙撃主と緑観測者にとっては因果律はこの場合でも保たれている」となります。

しかしながら「ガラスコップの横に立っている観測者」にとっては「この状況は不可解なものに見える」のです。

そうして何故「ガラスコップの横に立っている観測者」にとって「この状況は不可解なものに見える」のか、といいますれば「光の伝達速度がタキオン弾より遅いから」が答えとなります。

注2:つまりはアインシュタインの「全ての慣性系では同じ物理法則が成立している」という主張を認めた事になります。

注3:通説によれば「タキオンは過去に向かって飛ぶ」となっています。

それが事実であるならば「タキオン通信によって過去改変が起きる」となります。

さてそれで「タキオンは過去に向かって飛ぶ」が本当であるならば、緑観測者が「ガラスコップが粉々になったのを確認した」その瞬間にタキオン通信で狙撃主に「撃ち方やめ」と情報を出すことでタキオン弾の発射を止める事ができます。

しかしながら「タキオン通信は過去に情報を送れない」はすでに見てきた通りです。

従ってこの場合「緑観測者が『狙撃主はまだタキオン弾を発射していない』と主張するのですが、その狙撃主には『撃ち方やめ』の情報を届ける事はできない」のです。

何故ならば「緑観測者にとってはタキオン弾の発射はまだ起こってはいない事」と認識されていますが、実際には「すでに起こってしまった事」=「過去の出来事」なのであります。

さてでは「その様に緑観測者に錯覚させているものは何か」と言いますれば「ローレンツ変換がそのように錯覚させている」が答えとなります。

そうして「本当に因果律違反が起こっている=過去に情報が送れている」のか「見かけ上の『そう見えただけの因果律違反』なのか」見分けるのは簡単な事です。

「実際に過去改変ができるのかどうか」それが「本当の因果律違反と見かけ因果律違反の判別基準となる」のでした。

 

追記:この「相対論的因果律の話」は「はなれた場所にある2つの時計の時刻合わせをどうやるのか」という「時刻合わせの技術的な・手続き上の・操作上の問題」が一番の根っこにあります。

そうしてその時刻合わせは光を使ってやる以外の方法はこの宇宙にはなさそうです。

そうやって決めた「離れた場所の時刻表表示」から見ると「タキオン弾はあたかも過去にあるガラスコップを砕いた」かのように解釈される事になるのです。

そうしてその様に見える為に「タキオン弾は過去に飛んだ」とされています。

まあしかしながらこれは「便宜的にそう決められた時刻表表示に基づいた判断」ですから「本当にはタキオン弾は過去には飛んでいない」が正解となるのです。

とはいえ「それ以外の方法で離れた場所にある2つの時計の時刻を合わせる方法はない」のでありますから「相対論的因果律の話」には「特段の注意をもって行う必要がある」という事になります。

話が長くなりました。

そうではありますが、この話の状況の複雑さがご理解いただければありがたい事であります。

追記の2:

以上の様な「複雑な話」を

『この慣性系では、結果となる事象が先に起こり、原因とる事象が後に起こることになる。ある日、携帯電話がなって出てみると明日の世界の誰かからの電話であったということが起こりうる。したがって、超光速度での情報伝達は因果律に抵触する。』

とたった3行で結論を出していたのが「従来の相対論的因果律の話」なのであります。

ちなみに「静止系が客観的に存在する場合」はタキオン通信が可能となっても『ある日、携帯電話がなって出てみると明日の世界の誰かからの電話であったということ』は起こりえないのです。

そうしてそれが我々の暮らす宇宙の現実であります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/DAHjk