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特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その9ー2・時刻合わせの一般式

2025-06-21 01:00:55 | 日記

「その9ー1・時刻合わせの一般式」で記述した以下の内容について誤りがありましたので訂正します。

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『注2:アインシュタインはローレンツがローレンツ変換を導出する為に導入した局所時間について「それは仮想的な時間ではなくて実在している時間の事である」と見抜きました。

これはローレンツの解釈、それは「局所時間は単に数学的なテクニック(=トリック)であって物理的な実在ではない」という見方を超えていて正しいものでした。

しかしながらアインシュタインの理解の仕方は「時間は運動によって遅れが発生する」という事が「ローレンツが局所時間で示した事の物理的な内容のすべて」でした。

従って「運動系の時間軸ではずれが発生している」という「ローレンツの局所時間が示している本来の内容」については「1905年の論文で示されることは無かった」のです。』

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『しかしながらアインシュタインの理解の仕方は「時間は運動によって遅れが発生する」という事が「ローレンツが局所時間で示した事の物理的な内容のすべて」でした。

従って「運動系の時間軸ではずれが発生している」という「ローレンツの局所時間が示している本来の内容」については「1905年の論文で示されることは無かった」のです。』<--この部分の記述が違っていました

1905年の論文では「同時性の相対性」という章で「運動系で時刻合わせを行った2つの時計の時刻」について「それを静止系から見るとその2つの時計の時刻が合っていない=ずれている」という事が記述されていました。

その時もちろん「運動系内では2つの時計の時刻は合っている」のです。

なんとなれば「時刻が合うように時刻合わせをしたから」ですね。

従ってアインシュタインは「静止系と運動系の時間軸を比較すればそこには時刻のずれが生じている」という事を認識していたのです。

さてしかしながらそれを「ローレンツの局所時間」とは呼ばずに「同時性の相対性」と呼びました。

そうであればアインシュタインが「静止系と運動系の時間軸を比較すればそこにはローレンツの局所時間が現れる」という事を認識していたかどうかは不明なのですが「そうやって比較すれば時刻にずれが生じている事」は理解していました。

 

ちなみにその部分の日本語訳は次の様になっています。

『そこで、同時刻という概念に、絶対的な意味を与えてはならないことが分かる。すなわち、ある座標系から見たとき、二つの事件が同時刻であるとしても、この座標系に対して動いている他の座標系から見れば、それらの事件を互いに同時刻に起きたものと見なすわけにはいかないということが分かる。』: https://archive.md/hjDby#selection-3151.0-3151.8 :<--この章の一番最後の記述。

 

それに対して原典ではこうなっています。

『Wir sehen daraus, daß dem Begriff der Gleichzeitigkeit keine absolut objektive Bedeutung zukommt, sondern daß zwei Ereignisse, die nach einem Koordinatensystem gleichzeitig erscheinen, nach einem anderen,gegen dasselbe sich gleichförmig bewegenden Koordinatensystem, nicht mehr als gleichzeitig angesehen werden können.』

この部分のグーグル訳はこうです。

『このことから、同時性の概念は絶対的に客観的な意味を持つのではなく、1 つの座標系に従って同時に発生する 2 つのイベントが、同じ座標系に対して均一に移動する別の座標系に従っても同時であるとは見なされなくなることがわかります。』

 

ちなみに英訳ではこうです。

『So we see that we cannot attach any absolute signification to the concept of simultaneity; that is, events which are simultaneous with respect to some system of co‑ordinates are not necessarily simultaneous with respect to another system moving relative to the first.”』

この部分のグーグル訳はこうです。

『したがって、同時性の概念に絶対的な意味を付与することはできないことがわかります。つまり、ある座標系に関して同時である出来事は、最初の座標系に対して相対的に動く別の座標系に関して必ずしも同時であるとは限らないということです。』

 

さて「何が言いたいのか?」といいますれば「同時刻である事」と「同時であること」の議論をする際に「アインシュタインがそれについて一体どのように語っていたのかを確認する」という事は「結構大変な事である」という事です。

 

・・・話がそれました。

話を戻すならば「そのような立場に立つアインシュタインにとってNT時間軸とBT時間軸はどのように理解されることになるのか?」が問題になります。

2つの相対速度をもって併進運動している慣性性のそれぞれの内部で2つの時計の時刻合わせはアインシュタイン同期でできます。

そうしてその場合「それぞれの慣性系の中では『自分の慣性系のX軸の時間軸はNT時間軸になっている』と認識することになります。」

しかしながら並行して相対速度Vで走っている相手の慣性系の時計を見るならば『X軸の時刻がずれている』と観測することになります。

そうしてそれは「お互いに相手の時間軸がその様に『X軸の時刻がずれている』と認識することになる」と言うのがアインシュタインの立場となります。(注1

 

ちなみにアインシュタインは「NT時間軸になっている自分の慣性系の座標値(t、x)をBT時間軸になっている相手の慣性系の座標値(t’、x’)に変換する座標変換」としてローレンツ変換を導出しています。

そうしてその際にキーになる考え方が「BT時間軸になっている相手の運動系であっても2つの時計の時刻合わせはアインシュタイン同期でできる」と言うものです。

これは言い換えますと「こちらから見れば時間軸はずれている(BT時間軸になっている)にもかかわらずそちらの慣性系では『自分の時間軸はNT時間軸である』と認識している」という事です。

従ってその状況は「一見すると矛盾している」様に見えるのです。(注2

しかしながらその状況を数式化する所がスタート地点になっていて「そこに現れている矛盾に見えるもの」を解消するのが「ローレンツ変換」という事になるのが(あるいは『そのようにするのが』)アインシュタインのローレンツ変換導出のストーリーなのです。

 

さてそうであれば「一番理解しにくいローレンツ変換の導出手順」はアインシュタインがやった手順であると言えます。(注3

「その分かりにくい話」を扱った記事を以下に示しておきます。

例1:fnorio氏の記事から: アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):(4)原論文§3 ローレンツ変換 : https://archive.md/hjDby#selection-3495.0-3495.16 :

例2:畔上耕介氏の記事から: 特殊相対性理論の運動学――アインシュタイン原論文の邦訳を読み解く――  : http://iitakashigeru.math-academy.net/einstein2019.pdf :

 

注1:特定の慣性系に優先権をあたえない、つまりは「客観的な存在としての静止系を認めないアインシュタイン」にしてみれば常に「自分の立つ慣性系が基準となる」のです。

そうしてそこから相手の慣性系のX軸上に並べられた「そちらの慣性系のX軸上で時刻合わせされた一連の時計の列を観測する」のです。

そうするとその時計の示している時刻はX軸上を進むにつれてずれていくのが観測できるのです。

しかしながら「この状況については実際にどのように観測できるのか」については「より具体的に詳細に検討することが必要です」。

従ってここでは「お互いが相手のX軸の時間軸を指して『おまえのX軸の時間軸はずれている』と主張することになる、というのがアインシュタインの認識である」という所に留めておきます。

注2:運動系で2つの時計の間に光で往復信号を出した場合にその光の速度が「上り光速と下り光速で速さが違う」という事をアインシュタインは「同時性の相対性」の所で指摘しています。

そうしてその事は「運動系での時刻合わせをローレンツ変換を使って行った場合に出てくる上り光速と下り光速についての結論と相似的(=数値的には異なりますが、大小関係は同じ)」です。

さてそうであれば「運動系に於いてはアインシュタイン コンベンション=行くのに必要とした時間と帰りに必要となる時間は同じ=行きの光速と下りの光速は等しい」が成立していない事になります。

しかしながら「ローレンツ変換導出の章」では「運動系に於いてもアインシュタイン コンベンションは成立している」=「運動系に於いてもアインシュタイン同期で2つの時計の時刻合わせができる」と主張しているのです。

さてこの2つの内容(=一つの指摘と一つの主張)お互いに矛盾しています。

しかしながらアインシュタインは「その2つともにその通りである」としてローレンツ変換につながる基本式を示しているのです。

さてそうであればそこにはそのままではロジックが矛盾している様に見えます。

実際に「その部分の矛盾に見えるもの」を指して「アインシュタインのミスである」とする論文もあります。: The physics of space and time II: A reassessment of Einstein’s
1905 special relativity paper  :J.H.Field : https://arxiv.org/pdf/physics/0612041 :

しかしながら実際の所は「その矛盾に見える所は『一つの時計で測った片道光速』と『2つの時計で測った片道光速を混同する所から生じているもの』」なのであります。

いいかたをかえますと「そこはアインシュタインの説明不足」となっているのです。

あるいは上記arxiv論文が主張するように「アインシュタインのロジックには飛躍がある」のかもしれません。

ちなみに「ローレンツ変換につながる基本式の中」に「運動系に於いては時刻がずれる」と言う情報が入っているのでアインシュタインはそこからローレンツ変換にたどり着けたのです。

さてそうであれば後日、ページを改めてアインシュタイン流のローレンツ変換導出の物理的なトリックを解読することと致しましょう。

そこで「アインシュタインのロジックにある飛躍が見つかる」かもしれません。

注3:アインシュタインがローレンツ変換を導出して見せた後、それに続いて多くの方が「より直接的な、簡単な方法でローレンツ変換が導出できる事」を示しました。

しかしながら「それらの仕事の全て」は「アインシュタインの仕事があって初めて登場したものである」という事ができます。

 

追記:アインシュタインが運動系の時間のずれを「これがローレンツの局所時間だ」と示さなかったことで「ローレンツの局所時間については歴史の中で忘れられていった」といえます。

しかしながらアインシュタインのローレンツ変換を導出する手順の中には「ローレンツの局所時間が入っている」のです。

そうしてまた「時刻を合わせる」という操作で「ローレンツの局所時間が現れる」と最初に指摘したのはポアンカレです。

そうしてその「時刻を合わせる」を具体的に実装したのがアインシュタインであった、という事になるのです。

さてそうであれば「アインシュタイン ルートの中にローレンツの局所時間が現れる」という事は「必然である」となるのです。

ただしアインシュタインはそれを「ローレンツの局所時間」とは呼ばずに「同時性の相対性」と呼びました。

そうして「その2つは実は同じものだった」のです。

追記の2:原論文訳注[6]にある間違い: https://archive.md/hjDby#selection-2777.3-2777.8 :

§1の最後に示されている訳注[6]をみるならば「静止系の時間」というものは「同一の時間である」とかかれています。

つまり「静止系X軸の時間軸はNT時間軸になっている」としているのです。

さてここまでは正しいのですがその次に「その他の座標系でも同じ様に時刻合わせする事ができでその座標系の時間が定義できる」としています。

さてこの文章をそのまま読むのであれば「その他の座標系でも時刻合わせされたX軸の時間軸はNT時間軸になっている」となります。

しかしながら「もしそうであるならばそこには同時性の相対性は存在しない」ということになってしまいます。

なんとなれば「同時性の相対性」というのは「一方の慣性系の時間軸がNT時間軸であるのに対して他方の慣性系の時間軸がBT時間軸になっている」という理由で存在している現象であるからです。

したがって「訳注[6]の記述は『同時性の相対性』を考慮に入れるならば間違いである」となるのです。

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「相対論・ダークマターの事など 記事一覧」

「その2:ダークマター・相対論の事など 記事一覧」

https://archive.md/EIaFS

https://archive.md/M26rR