「ういき特殊相対論」: https://archive.md/Tsk4p :の「ローレンツ変換の具体的な形」に提示されているイラスト: https://archive.md/ND6P3 :を使います。
これはMN図のなかにローレンツ変換座標を示したものになっています。
それでこの場合黒座標は静止系で赤座標が運動系。
運動系はほぼ+0.58Cで静止系の+X方向に動いている。
そうしてこの2つの慣性系に作ってある直交座標の原点がちょうど重なり合った時の状況をこのイラストは示しています。
で、黒座標視点で描いてありますから黒座標は直交座標になっていますがそこから見た赤座標は斜め右方向につぶれた斜交座標になって見えています。(注1)
そうしてこの斜交座標がそのまま相対速度V≒0.58Cでのローレンツ変換を示しています。
さてそれでこのMN図の中に2つの世界点A、Bを決めます。
Aは黒座標(7,12)でBは黒座標(10、11.5)に取ります。
点Aは黒マス目を数えると分かる様に赤座標のY軸上にあります。
そうであればこの座標値から赤座標の移動速度=相対速度が分かるのです。
相対速度V=7/12=0.58333・・・≒0.58C
点Bは黒座標(10、11.5)ですので黒座標での相対速度V1読みは
V1=10/11.5=0.869565217・・・≒0.87C
さてそれでこの時に点Bの速度は赤座標読みでは幾つになっているか、それをイラストから読み取ります。
点B赤座標(4,7)です。(きれいに読める点を点Bに選んだのですからそうなります。)
そうすると赤座標での点Bの相対速度V2読みは
V2=4/7=0.571428571・・・≒0.57C
さて速度の加法則によれば
V1=(V+V2)/(1+V*V2)
となっているはずです。
でV1=0.87
次に(0.58+0.57)/(1+0.58*0.57)は
=0.86427・・・
読み取り誤差などを考慮すれば
0.87≒0.86427・・・
として良いでしょう。
つまりは「MN図の上でも速度の加法則は成立している」という事がこれでわかります。(当然そうなっているであろう、という事の図形上での再確認でした。)
あるいは「赤斜交座標は確かにローレンツ変換を表している」と言えます。
さてそれで次は時間遅れについてです。
点Bの黒座標読みでの時間遅れ割合は
sqrt(1-0.87^2)=0.4930517・・・
黒座標に対して相対速度0.58Cで移動している赤座標の時計の遅れ割合は
sqrt(1-0.58^2)=0.8146164・・・
そうしてその赤座標に対して相対速度0.57Cで動いている点Bのsqrt(1-0.57^2)の値は
sqrt(1-0.57^2)=0.8216446・・・
ここで時間の遅れ合成則は
sqrt(1-V1^2)=sqrt(1-V^2)*sqrt(1-V2^2)/(1+V*V2)
となります。
でsqrt(1-V1^2)=0.4930517・・・
次にsqrt(1-V^2)*sqrt(1-V2^2)/(1+V*V2)は
=0.8146164*0.8216446/(1+0.58*0.57)
ウルフラムを呼んで
https://ja.wolframalpha.com/input?i=0.8146164%EF%BC%8A0.8216446%2F%281%2B0.58*0.57%29
答えは
0.503025・・・
0.4930517・・・≒0.503025・・・
これもまあそれなりの精度で成立している事がわかります。
つまりは「時間遅れの合成則も図形的に確認できた」のです。
ちなみにこの時に「全ての慣性系は平等である」というスタンスに立つと
sqrt(1-V1^2)=sqrt(1-V^2)*sqrt(1-V2^2)
でよい、という事になります。
しかしながら
sqrt(1-V^2)*sqrt(1-V2^2)
=0.8146164*0.8216446
ウルフラムを呼んで
https://ja.wolframalpha.com/input?i=0.8146164%EF%BC%8A0.8216446
答えは
0.669325・・・
sqrt(1-V1^2)=0.4930517・・・ですので
sqrt(1-V1^2)はsqrt(1-V^2)*sqrt(1-V2^2)ではないのです。
つまりは「全ての慣性系は平等である、は成立していない」
という事が分かります。
これはつまり「時間遅れの合成則は『全ての慣性系は平等である』という対称性を破っている」のです。
さて以上の様に「速度の加法則」も「時間遅れの合成則」もNM図上で表したローレンツ変換図形で確認した場合でも成立している事が確かめられました。
それはつまり「時間遅れの合成則」はローレンツ変換の当然の結果であって、特殊相対論の中に入っているルールの中の一つである事が図形的に確認できたのであります。
注1:もちろん赤慣性系に立てばこの赤斜交座標は直交座標になっています。
そうしてそのかわりに黒座標が今度は反対方向に(左方向に)つぶされた斜交座標として表される事になります。
追記:点Bについて黒座標から赤座標にローレンツ変換で変換すると
黒座標(10、11.5)ーー>赤座標(4,7)
となります。
この時に黒座標で点Bの固有時を計算すると
11.5*sqrt(1-0.87^2)=5.67009・・・
同じようにして赤座標で点Bの固有時を計算すると
7*sqrt(1-0.57^2)=5.7515128・・・
読み取り誤差を考慮すれば
5.67009・・・≒5.7515128・・・
理論上は「固有時はローレンツ変換では変わらない=保存する」となっていますので、一応それも成立している事がわかります。(注2)
ちなみにここで固有時とは点Bが原点から黒座標(10、11.5)まで速度0.87Cで等速直線運動した時にどれだけの時間が必要だったのか、点Bに設置されたストップウオッチで測定した時に得られる値の事です。
そうであればこの点Bのストップウオッチに表示された値は異なる速度で移動しているどのような慣性系=観測者からみても同じ値になるのは「自明な事」=「必要な事」であります。
そうであれば「固有時を保存する様にローレンツ変換は点Bの座標を変換する」のです。
それはつまり「そのようになる様に赤座標の目盛り=マス目の大きさがローレンツ変換によって決定されている」という事であります。
そうしてまた赤座標のX軸、Y軸の傾きは赤座標の黒座標に対する相対速度Vで決まってしまいます。
こうしてローレンツ変換を表す赤座標は一義的に決定されるのですが、その結果は驚くべき事に「全ての慣性系は平等である、という宣言が成立しなくなる」という結果に必然的に結びつく事になるのでした。
つまりは「ローレンツ変換は固有時の保存の方を優先していて、その為に『全ての慣性系は平等である』という対称性はやぶれている」のでした。
さてこれは本当に皮肉な結果であります。
アインシュタインは「全ての慣性系は平等である」宣言の下で特殊相対論を作ったのですが、その結果出てきたものが「『全ての慣性系は平等である』という宣言は成立していない」という事態に至ったのですから。
そうであればこの結末には「アインシュタインもビックリ」という事になります。
注2:ミンコフスキーによれば黒座標(10、11.5)の値を使って計算した
S^2(黒座標)=10^2-11.5^2=-32.25
という値は世界間隔Sを表していて、この値もローレンツ変換では保存される、となっています。
そうであれば赤座標(4,7)のS^2を計算してみると
S^2(赤座標)=4^2-7^2=-33
であってこれもまた「読み取り誤差内で一致している=保存している」という事がわかるのです。
ちなみにこの値の符号をひっくり返してルートをとると黒座標では
sqrt(32.25)=5.67891・・・
赤座標では
sqrt(33)=5.74456・・・
となりこれは最初に計算した固有時の値になっている事が分かります。
つまりは
sqrt(-(世界間隔S)^2)=sqrt(-S^2)=固有時
になっていて、従ってこの2つの値はローレンツ変換では同じように保存されるのです。
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