特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その3・正のミューオン寿命の精密測定の歴史的経緯:追補資料

2024-05-07 01:35:04 | 日記

「正のミューオン寿命の測定とフェルミ定数の百万分の1の精度での決定」(2010/12)

Measurement of the Positive Muon Lifetime and Determination of the Fermi
Constant to Part-per-Million Precision: https://arxiv.org/pdf/1010.0991.pdf :

の一部暫定訳です。

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概要を引用します。

『我々は、正のミューオンの寿命を100万分の1(ppm)の精度で測定しました。これはこれまでに測定された中で最も精密な粒子寿命です。この実験では、時間構造化された低エネルギーのミューオンビームとセグメンテッドなプラスチックシンチレーターアレイを使用して、2×10^12以上の崩壊を記録しました。2つの異なるストップターゲット構成が独立したデータ取得期間で使用されました。これらの結果を組み合わせると、τµ+ (MuLan) = 2196980.3(2.2) psという値が得られました。これは、これまでの実験の15倍以上の精度です。ミューオンの寿命は、フェルミ定数に対する最も精密な値を提供します: GF (MuLan) = 1.1663788(7) × 10^−5 GeV^−2(0.6 ppm)。また、これは、µ−pシングレット捕獲率を抽出するために使用されます。これは、プロトンの弱い誘導的疑似スカラー結合gPを決定します。』

本文の最後の部分のみ

『・・・フィットの開始時間に対する結果の安定性は、パイルアップ、ゲインの安定性、スピン効果などがすべて時間依存性を示す可能性があるため、強力な集合的診断となります。
R06とR07の両方について、ライフタイムは統計的に許容される変動を除いて、フィットの開始時間に依存しません。さらに、ラン番号や磁場の方向にも依存しません。
両走行期間の最終結果は、非常に一致しています:
τμ(R06) = 2196979.9 ± 2.5 ± 0.9 ps、
τμ(R07) = 2196981.2 ± 3.7 ± 0.9 ps。
ここで、最初の誤差は統計的であり、2番目の誤差は系統的です。R06とR07の比較は、ppmレベルでは、束縛されたミュオニウムの寿命が自由な寿命と大きく異ならないという期待があります。結合すると、以下のようになります:
τµ(MuLan) = 2196980.3 ± 2.2 ps (1.0 ppm)、これは以前の測定結果と一致しています。
誤差は、統計的誤差と系統的誤差の二乗平均であり、全エラー行列計算が使用されて、すべての相関が結合されます。
MuLanの結果は、他の個別の測定よりも15倍以上も精度が高く、そのため世界平均を支配しています。私たちの結果は、現在のPDG平均よりも2.5σ低い位置にあります。図2は、MuLan平均を含む最近の測定履歴を示しています。
τµ+の値から、フェルミ定数の最も正確な決定が導かれます:
GF (MuLan) = 1.1663788(7) × 10^−5 GeV^−2 (0.6 ppm)。
正のミューオン寿命はまた、水素[13]または重水素[14]中の通常のミューオン捕獲率を得るために使用されます。, Γcap = 1/τµ− − 1/τµ+。これらの捕獲率は、[15]で議論されているように、ハドロンの量を決定します。たとえば、新しい結果は、Ref. [13]で使用されるµ−p捕獲率を8 s^−1だけ低下させ、そのためgPを理論とさらに良い一致に向かって上方にシフトさせます。
最後に、改善された精度により、[13]でのミューオン捕獲の決定のτµ+の不確かさが0.5 s^−1以下になります。
私たちは、PSIスタッフ、特にD. Renker、K. Deiters、およびM. Hildebrandt; TRIUMFのM. BarnesとG. Waitに、キッカーの設計、NCSAにデータ解析の努力を可能にしサポートしてくれたことに感謝します。また、アメリカ国立科学財団には、彼らの財政支援に感謝します。』

『図1. 実験の概要図。ミューオンは真空ビームパイプを通じてAK-3または石英ディスクターゲットに運ばれます。このビームパイプは、内側に方位方向に偏光された0.1mm厚のAK-3箔で覆われています。170対の三角形のシンチレータ検出器が、それぞれ個別に読み出され、ターゲットを囲んで配置されています。ハルバッハ磁気リングは石英ディスク用にのみ使用されます。ターゲットが開かれたときに、ビームプロファイルを監視するためにワイヤーチャンバ(EMC)が後部に配置されています。』

『図2. 寿命測定の要約。MuLan R06とR07の結果は一緒にプロットされており、一貫性を示しています。垂直の影付きの帯は、MuLanの加重平均を中心に配置され、結合された不確かさと同じ幅になっています。』

これ以上の図1.と図2.の具体的な内容および上記以外の詳細な説明については原典を参照願います。

 

追記:MuLanコラボの実験が静止系上での実験になっている件

前のページで示した様に「地球上での全ての物理実験は静止系に対して運動している慣性上での物理実験」です。

さてそうであるにもかかわらず何故「MuLanコラボの実験は静止系上での実験になっている」と言えるのでしょうか?

その理由は「MuLanコラボのミューオン寿命の測定実験では測定対象のミュー粒子が地上に対して、実験室に対して、測定装置に対して止まっていたから」です。

ミューオン寿命の測定は実験室に置かれた原子時計の時間を刻む速さを使ってミューオンが崩壊するまでの時間を計ります。

でその時にMuLanコラボは実際にミュー粒子を観測装置内で静止させて寿命を測定したのでした。

さてそうであればこの状況を静止系からみれば「実験室に置かれた原子時計と測定対象のミュー粒子は同じ方向に同じ速度で運動している」となります。

従って静止系に置かれた時計に対しては実験室に置かれた原子時計と測定対象のミュー粒子の時間は静止系に対して運動している相対速度の分だけ遅れが生じています。

しかしながらこの時間の遅れは「実験室にある原子時計と測定対象となっているミュー粒子の両方に全く等しく生じる」のです。

そうであればMuLanコラボの実験条件では『地球が静止系に対して運動している事によって生じている効果=運動系では時間が遅れる』がキャンセルしあってその結果は「MuLanコラボの実験は静止系上での測定実験と同等になっている」のです。

しかしながら残念な事に「BNL~フェルミ研でのミューオンの寿命測定」では「測定対象のミュー粒子は地上に対して、実験室に対して、測定装置に対して運動していました」。

そうであればこの時には実験室にある原子時計に発生している時間の遅れと測定対象となっているミュー粒子に発生している時間の遅れは等しくはならず、そうであればこの場合は「この実験は静止系上での実験ではなくて、運動系上での実験として扱わなくてはならない」となるのです。

しかしながらBNL~フェルミ研での測定実験の解析ではその様には処理されず、従来の加速器実験の解析と同様に「実験室は静止系である、と言う前提で解析された」のでした。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/tXnmQ