特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

銀河の後退速度の件

2022-09-02 02:08:18 | 日記

天文学辞典 > 観測天文学 > 共通基礎 > 赤方偏移 : https://astro-dic.jp/redshift/ : https://archive.fo/dQt2J :によれば

『一般に天体の発する光の波長が伸びて観測されることを、赤い側にずれるという意味で赤方偏移という。赤方偏移が起きる原因は三種類あり、それぞれ異なる名前で呼ばれている。

第1は、相手の天体が相対的に観測者から遠ざかっている場合である。このときの赤方偏移はドップラー効果で説明され、これを運動学的赤方偏移と呼ぶ(図1参照)。

第2は、重力ポテンシャルに起因するものである。重力ポテンシャルがより深い場所から発せられた光は、観測者に到達するまでに波長が伸びる。これは一般相対性理論の効果で重力赤方偏移と呼ばれ、エネルギー保存則からも理解できる。

第3は、宇宙膨張の効果によるものである。十分遠方の天体はすべて赤方偏移を示すが、これを宇宙論的赤方偏移と呼ぶ。これは定性的にドップラー効果として説明することが多いが、厳密にはそうではない。天体を発した光がわれわれ観測者に届く間に、宇宙空間が膨張したために光の波長が伸びたのである(図2)。・・・』とある。

2番目の記述は一般相対論がらみなので、ここでは話題としない。

それで銀河の場合は1番目と3番目が関係するのだが、この文章をこのまま読むと「近くの銀河の後退速度は『ドップラー効果で説明され、これを運動学的赤方偏移と呼ぶ』」のだそうな。

そうして遠くの銀河になると『天体を発した光がわれわれ観測者に届く間に、宇宙空間が膨張したために光の波長が伸びたのである』となる。

しかし実際の所、近くの銀河であってもハッブル氏が示した様に「空間が膨張しそれに伴って我々から遠ざかる様に見えている」のである。(・・・と言うのが当方の理解である。)

そうであれば遠い、近いに関係なく「空間が膨張して、それで銀河が離れていくように見える」と説明するのが良いように思われる。



まあそれはさておき、通常はドップラーシフトの式で後退速度を算出する様である。

そうしてその後退速度から『また後退速度を用いて、ハッブルの法則(V=Hd)に代入することにより、銀河の距離も求めた。(ハッブル定数は 72km/s・Mpc とした。)』(注1)・・・と言う様に、簡略的に観測対象とした銀河までの距離を求めたりする。



さてそれで、その時につかうドップラーシフトの式であるが、後退速度V<<Cとして非相対論的な式を上記の例では使っている。

しかしながらこの時に「銀河の後退速度と距離の関係」: https://www.astr.tohoku.ac.jp/~saio/Astronomy/slides_26jan_2016.pdf :にある様に「相対論的なドップラーシフトの式を使うのがより正確である」という立場も当然ある。

それで一応レビューしておくとこの2つの式はこうなっている。

1、非相対論的なドップラーシフトの式

λ=λ0*(C+V)/C ・・・①式

2、相対論的なドップラーシフトの式

λ=λ0*sqrt(C+V)/sqrt(CーV) ・・・②式

ここで、λがドップラーシフトを受けて観測された光の波長、λ0はドップラーシフトを受ける前の波長、Vは後退速度、Cは光速である。(注2)

さてそれで「対象とする銀河によっては光速に比較して後退速度が無視できない程に大きい為に②式を使う」のであろうと思う。

しかしながらその時にそのようにして銀河を観測している観測者は「観測対象の銀河の時間の進む速さが地球の時間の進む速さより遅れている」とは想定していないはずである。

コペルニクス氏がいう様に「地球は宇宙の中心」ではなく、したがって地球で進む時間の速度と同じ早さで「観測している銀河の時間も進んでいる」と認識しているはずである。

さあそうなると、とてもおかしなことになる。

特殊相対論によれば「地球に対して相対速度Vで運動しているものは時間が遅れる」のである。

それゆえに「相対速度Vが光速Cに比べて無視できないほど大きい時は相対論的なドップラーシフトの式を使わなくてはいけない」のでしたよね。(注2)

銀河を分光観測している観測者は「銀河の後退速度と距離の関係」にあるように、そのようにされていると思います。

しかしそれらの観測者はけっして「観測対象としている銀河の時間の進行速度は遅れている」などとは考えないでしょう。

しかし後退速度が大きいので、あるいはより正確に計算する為に「相対論的ドップラーシフトの式を使う」と。


さてこの状況は「銀河の後退速度を観測しているやり方には矛盾がある」という事を示している様に当方には思われるのであります。

そうしてまたその事は「観測している銀河には地球とは異なる基準慣性系があり、従ってその銀河はその銀河に固有の基準慣性系に対して時間の遅れが定義されている」という事を「観測者は暗黙の了解として認めている様に見える」のでもありました。



注1:たとえば:分光観測による銀河の後退速度測定 : https://www.asj.or.jp/jsession/old/2005haru/30_ginga_new.pdf :では近場の銀河を分光測定して後退速度をドップラー効果の公式(この場合は非相対論式)で算出している。

注2:速度Vで動いているものの時間の遅れはこうでした。

T=T0*sqrt(1-(V/C)^2)

それで①式をこの時間の遅れ分で割りますと

λ=λ0*((C+V)/C)/T

=λ0*(C+V)/(C*sqrt(1-(V/C)^2))

=λ0*sqrt(C+V)/sqrt(CーV)

となり、相対論的なドップラーシフトの式がでてきます。

速度Vで運動 している発光対象の時間が遅れる=その分周波数が落ちる=その分波長が伸びる、という関係があります。

それでsqrt(1-(V/C)^2)<1ですので波長で計算する場合はこれで割る事になります。

以上のように「相対論的なドップラーシフトの式を使う」という事は「運動による時間の遅れ分の影響をドップラーシフトの中に入れる」と言ういう事であって、「後退している銀河の時間が地球時間に対して遅れる事はない」のであれば、「相対論的なドップラーシフトの式を使う必要は無い」という事になります。

あるいはもっと言うならば「相対論的なドップラーシフトの式を使うのは間違いである」とも言えそうです。

 

PS:相対論の事など 記事一覧


https://archive.fo/17HmL