特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・ 円運動を使った基準慣性系の判定

2022-09-11 02:41:46 | 日記

さて地球が基準慣性系に対してドリフトしている速度を0.001Cとした経緯は :単振動を使った基準慣性系の判定:の 追伸の2:宇宙マイクロ波背景放射(CMBR) :で以下の様に示しました。

『 https://math-ucr-edu.translate.goog/home/baez/physics/Relativity/SR/experiments.html?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc#CMBR

『CMBRは拡散性でほぼ等方性のマイクロ波放射であり、明らかにすべての空間を満たします。
それは一般的にビッグバンの遺物であると考えられています。
SRのテストではありませんが、一部の読者はCMBR測定に関心があるかもしれません。
地球の近くには、双極子モーメントがゼロである独特の局所慣性系があります。
このフレームは、太陽に対して約370 km / sの速度で移動します。』


以上の議論においてCMBに対する地球の移動速度を約300 km / sと近似しています。
従って前提は「基準慣性系に対するドリフト速度は0.001C」となります。』

さて、そうであればいままで当然のごとくに単振動、あるいは円運動にて運動する速度を0.9994Cと設定してきた理由も説明する事になります。



ブルックヘブン国立研究所 ミューオンストレージリングでのミューオン寿命の正確な測定

https://www.sas.upenn.edu/~tqian/thesis.pdf

その論文の1ページ 前書き・まとめに『0.9994Cでミューオンを回した』とあります。

そうでありますから運動速度は0.9994Cなのでした。

そうしてその時のミューオンの観測された寿命は

τ=64408.4±2.3ns

それで、論文によればこの時のγは

γ=29.314

従って静止時のミューオンの寿命τ0は

τ0=64408.4/29.314

=2197.189・・・

となるはずですが、何故か論文では

τ0=2197.301±0.200 ns

としています。(注1)



さてそれでういきによれば、静止時のミューオンの寿命は

寿命(τ0)=2197.034 ns  (注2)

そうであれば、前のページ :円運動を使った基準慣性系の判定:の議論に従って

静止時の寿命/円運動している時の寿命=R を計算します。

R=2197.034 ns/64408.4ns

=0.0341109855236・・・

さて、本来であればこの数字は前ページで示した様に

『A:地球が基準慣性系だとしたら円運動による時間の遅れは

2番結果/1番結果(2パイ)=0.217623272870553・・・/2π

=0.034635819609184・・・

B:地球が基準慣性系に対してドリフトしていたとしたら円運動による時間の遅れは

3番結果/4番結果

=0.217623381563・・・/6.2831821655861474

=0.0346358542260・・・

AとBを比較すると有効数字で7ケタ目に違いがみられます。

従って最低でも有効数字8ケタの測定精度が必要になります。』

のA、あるいはBのいずれかに近い値になるはずなのですが、実測値による計算では有効数字3ケタ目でA、Bの両者に対してすでに異なっており、そうはなってはいない模様です。

まあもっともBNLでのミューオンの静止寿命計算値は

τ0=2197.301±0.200 ns

とされており、ここですでにういきでの値

寿命(τ0)=2197.034 ns 

と有効数字5ケタ目で相違がみられます。



従いまして

「BNLでのミューオンの寿命測定データを用いて地球が基準慣性系であるのかどうか、判定する事はできない」
=「円運動での寿命測定は最低でも有効数字8ケタの測定精度が必要」を満たさず現状では「有効数字4ケタが限界の模様である」

がここでの結論となります。



注1:このτ0を基にして逆に周回速度を求めますと

周回速度=0.99941790・・・

となります。

この場合γは

γ=29.312227・・・

です。

注2:ミュー粒子: https://archive.fo/R5JLh


追記
上記論文はミネソタ大学の2008年に出された博士論文の様です。

ミューオンの静止寿命についての詳細なまとめはP147,8章:8-1にあります。

それで、それに先立って行われたセルンの論文(要約)を以下に示しておきます。

円軌道における正および負のミューオンの相対論的時間の遅れの測定(1977年7月28日)

https://www-nature-com.translate.goog/articles/268301a0?error=cookies_not_supported&code=8d483127-6468-49be-a9f5-c19a4e15772a&_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

追記(2024/3):ミュー粒子の寿命を時計代わりに使った、なおかつミュー粒子を円運動させて時間の遅れを発生させて地球が基準慣性系であるのかどうか、というテストは相当に難しい事が判明しました。

その第一の要因は「μ粒子をストレージリング内で円運動させている時の実際にミュー粒子がリング内でたどっている軌道を正確には把握できない、したがってどれほどの速度でリング内をμ粒子が移動しているのか把握できない」という点にあります。

これは後述する事になりますが「μ粒子の異常磁気モーメント測定」という話の中で明らかになってきた事と関係しています。

さてそうなりますと「地球が基準慣性系であるのかどうか?」という問いの答えはこれも後述している「ISSを使ったハーフェレ・キーティングの実験を行う」と言うのが現実的な実現可能な提案となります。

そうしてこれは「『地球が基準慣性系であるのかどうか?』を実験で確認する事は結構難しい事である」という事になります。

 

PS:相対論の事など 記事一覧

 

https://archive.fo/PCYMw