歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

“ピーター=フランクルになりそびれた男”の母国での評判(15)

2010-01-20 23:02:18 | トルコ関係
→(14)からの続き

本人が意図した通りの成果を上げたか否かは別にして、日本での“成功”を背景に母国での知名度を上げつつあったセルカン氏のもとに、破綻は突然のように訪れました。

2009年の秋頃から2chを中心にネット上で盛り上がったセルカン氏の経歴・詐称追及運動が日本の大手メディアを動かし、11月の中旬までには朝日、日経を始めとする主要紙がセルカン氏の“偽宇宙飛行士”疑惑を報道。

そして、11月20日にはついにトルコの方でも、全国紙“スタル新聞”がこの動きを報じるに至ったのです。

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「NASAの狡智」   スタル紙     2009年11月20日
原題:NASA kurnazı
http://www.stargazete.com/guncel/nasa-kurnazi-haber-226650.htm

※ あちらでは、例えば、バザールでまがい物を売りつけて法外な金額をぼったくるとか、目先の利益のためならいかなる違法行為もインチキも辞さないような悪知恵のことをよく“Şark kurnazı”(東方の狡智)と言うが、それをもじったものだと思われる。日本語だと“NASA騙り”とか“NASA詐欺”とでも意訳した方が自然かも。

NASA職員にしてトルコ人初の宇宙飛行士を自称。その肩書きの信憑性を高めるため運輸省の名で公文書までも偽造していたセルカン=アヌルルが、日本に混乱をもたらしている。 この偽宇宙飛行士の所業については、NASAの保安部門も調査を開始した。

トルコで初の民間宇宙飛行士を自称するセルカン=アヌルルが、日本の世間を騒がせている。東京大学で教職に就くアヌルルは、日本の新聞各紙の取材に対し、一時期、自らが米国航空宇宙局(NASA)で58人のチームを統括する職にあったこと、現在ではトルコで初めての正式な民間宇宙飛行士候補であること、などを語っていた。

しかしながら、記事の内容が事実に反するとの投書が極めて大量に寄せられたことで、新聞各紙はNASAに対しアヌルルが実際に訓練を受けたか否かを照会。NASAから否定的な回答が得られると、これを在東京トルコ大使館に報告した。それについて調査を行った大使館は、セルカン=アヌルルがトルコ運輸省の名で自らを“トルコ初の民間宇宙飛行士”とする偽造文書を作成していたことを確認。日本の新聞各紙が謝罪記事を掲載する一方で、NASAの保安部門は本件の調査を開始したのだった。

日本宇宙開発機構(←日本宇宙航空開発機構=JAXAのことらしい)もまた、アヌルルのものではないと確認できた論文4本を年報のリストから削除したのである。


合成写真までも使っていた


投書があった後、その件について調査することを決めた新聞各紙が最初にコンタクトを取ったのは、TÜBİTAK (トルコ科学技術研究協会)だった。

TÜBİTAKから“そんな人物は知らないし、当協会とは何の関係も無い”との返答を得た各紙は、今度はNASAに照会。そのNASAの当局も、セルカン=アヌルルの名で訓練を受けた人物の記録は存在しないとして、“このような人物はまったく知らないし、当方で職務についていた事実も無い”と回答したのだった。NASA当局はさらに、その知らせによってNASA内の治安部門がアヌルルに関する捜査を開始したことを告げ、同時にアヌルルが自らのHPに載せていた宇宙飛行士姿の写真もまた、合成によるものだと説明したのである。

新聞各紙から状況の報告を受けた東京大学も、セルカン=アヌルルに対しそれら全てのことに対する釈明を要求。アヌルルは自らが“トルコ初の民間宇宙飛行士候補”であることについて、これを証明する文書を持参できるとして、その一週間後、大学に運輸省民間航空局局長アリ=アルドゥルの署名入り文書を提出したのだった。


アルドゥルの署名すら偽造


この件について調査した在東京トルコ大使館は、上述の文書が偽造であることを確認。運輸省に事情を報告した。日本の新聞各紙は謝罪記事を掲載し、そこではアヌルルが自著であると称していた学術論文の多くが実は他の研究者のものであったり、また出版されたと語っていた論文のいくつかは出版などされていないことが明らかにされたのだ。


本紙に対しても自ら“日本のNASAたるJAXAの職員だ”と語っていた。


セルカン=アヌルルは日本人のみならず、トルコ人をもまた騙していた。アヌルルは、多くの出版メディアに対してそうしたように、2006年には本紙スタル新聞の取材にも応じているが、そこでも話を自ら作り上げたシナリオに置き換えていたのだ。アヌルルは、本紙に対し自らをNASAの日本版たるJAXAで働く唯一の外国人だと語り、日本のTV局NHKに耐震住宅や宇宙エレベーターについての知識を提供。それを基に製作された子供番組が日本のTVの高視聴率記録を塗り変えた、などと説明していたのである

※この記事のことだろう。


350万円の助成金を得ていた模様


 日本の新聞各紙は、教育省(←文部科学省のことか?)が科学研究助成の名目でアヌルルに対し2006~2007年の間に350万円を支払っていたこと、この時期に出版された4冊の学会誌で発表された論文が、いずれも盗作ではないかと疑われていることを指摘。他方、日本に暮らす他のトルコ人研究者や留学生たちが困難な立場に置かれていること、また、日本人が今や自国人の挙げた研究成果に対してまでも懐疑的に接していることなどを報じている。

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記事の内容は、朝日と日経の記事をそのまま足したような感じですね。ただ、全体的に見ると、主要紙でこの件を記事にしたのは“スタル新聞”のみで、これまでセルカン氏を持ち上げてきたヒュリエット紙やザマン紙などは、今に至るまで黙殺状態だったりします。

そのスタル紙の記事は、一応色んな掲示板に貼り付けられてはいるものの、“スタル新聞”のそれも含めてコメントはほとんどついていませんね

結局のところ、トルコ社会でのセルカン氏の知名度はその程度のものだったということでしょう。

とはいえ、例外的にコメントが沢山ついている掲示板もないわけではありません。 その中でも最も活発だったwww.mcpsp.comの掲示板は携帯型ゲーム機PSPのファンサイトで、書き込んでいる住民の年齢層は推定で10台後半~20台とかなり若いことから、“アニメ・漫画・トルコ”などを見てアニメ経由でセルカン氏を知った人々が多いのではないかと思われます。

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「トルコの知識人を自称していたセルカン=アヌルルは“ホラ吹き”だった」
原題:Kendini Türk Bilim Adamı Olarak Tanıtan Serkan Anılır 'Sahtekar' Çıktı!
http://www.mcpsp.com/teknoloji-bulteni/19857-kendini-turk-bilim-adami-olarak-tanitan-serkan-anilir-sahtekar-cikti.html

俺もセルカン=アヌルルのとあるセミナーに参加したことがあるんだ。その内容を、友達にまで説明したもんだよ….。セルカンという人物はドイツでは省エネの分野で第一人者だったとか、光エネルギーを実際に電気エネルギーに変えた最初の科学者たとか、日本で凄く大きな仕事をした、みたいなことをな。でも、実際は単なるホラ吹きだったようで….(怒)。俺は本当に怒っている。いったいこいつはどれだけ多くの人間を騙したり、あっち(日本)にいるトルコ人の首を絞めたりしてるんだ…..。

論評ハルク1号
病気だな、多分…..。


論評ハルク2号
この国が(ハサン=メザルジュのように)“俺はイエスだ!メシア(救世主)なんだ!”とか自称する人間を輩出していることを思えばだな、そういう奴らが出てきても何らおかしくはない。俺はその論文とかいうのに興味があるな。一体どんなことが書いてあるのか….。

※ ハサン=メザルジュ(Hasan Mezarcı 1954~):トルコの急進的なイスラーム主義者にして政治家。かつて福祉党(当時)から出馬して、国会議員を務めたこともあり。近年はドイツに移住して自らイーサー(イスラームにおける預言者の一人。キリスト教のイエスに相当)を名乗るなど、その奇矯な言動が何かと話題になっている。


論評ハルク3号
こいつのサイトがこれ (←セルカン氏のサイトらしきリンクが貼ってあったが、開けなかった) だ…。

こいつが書いた本もあってな…俺の友達もその本読んでたんだけど、このニュースを知って、すごいショックを受けてたよ。そいつとはMSNのアドレスやfacebookで繋がってるんで、教えてやったんだけどな。

一体いくつの学校で講演をやったんだ?少なくとも5~6万の人々がこいつのことを信じてるなんて、本当に冗談みたいだ…。俺たちの学校の校長ですら、すげえ誉めてたんだけどな。でも見たことか、こいつはキチガイだったわけで….。


論評ハルク4号
大好きなアニメにしても、その文化や歴史にしても、俺は日本人をリスペクトしている。その彼らが、こんなホラ吹きのお陰で今後はトルコ人のことを色眼鏡で見るようになるとしたら、本当に悲しいことだな。本気で心配してるよ。こんなレベルの低い人間のお陰で、凄く恥ずかしい気分だ。


論評ハルク5号
こういう志の低い奴らのおかげで、世界でのトルコの評判はひどく悪くなってるってわけだ。


論評ハルク6号
一体どういう人間性なんだよ。こいつ自身は金儲けができていいんだろうけど、こんな詐欺師のお陰で7000万(トルコの全人口)の信用に傷がつくっていうのは….。
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 もう一つはポータルサイト“donanimhaber”の掲示板。これも、書込んでいる人の年齢層はかなり低そうですね。

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「NASAの狡智」
原題:NASA kurnazı
 http://forum.donanimhaber.com/m_35901183/tm.htm


論評ハルク1号

ジャッカルじゃねえかw

 ※“嘘つき”とか“ずるっこい奴”を意味する隠語


論評ハルク2号
トルコの叡智だ。


論評ハルク3号
日本へ行こうと思ってたんだけどな。もうこのロクデナシのせいで、日本人たちにどう顔向けしていいか分からんよ


論評ハルク4号
くだらないインチキに費やす時間を実際の勉強に割いていれば、色んなことが実現できてたかもしれないのにな。嘘つくにも限度を知らなかったんだろw。


論評ハルク5号
 www


 論評ハルク6号





今(フォトショップの使い方を)勉強してるんだけど、耳の部分の加工が面倒だったんでこうなった。もっと進化させて、完璧な“セダト・アービー”にしたいもんだ、インシャッラー。

※“セダトの兄貴”の意。詳しい元ネタはよく分からないが、最近、トルコのネット上では有名人の写真にこの“セダトの兄貴”の顔をコラージュするのが流行っているらしい。

その一例↓
http://www.asil-turk.org/komik-fotograflar/15542-sedat-abinin-yasam-oykusu-270-resim.html
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最後に、ニュースサイト“haber.mynet.com”から。先に挙げた2つに比べると、ここの書込み年齢層は比較的高そうな感じがします。

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「NASAの狡智」
原題:NASA kurnazı
http://haber.mynet.com/detay/yasam/nasa-kurnazi/480972

論評ハルク1号
おお、なんと抜け目のない。まさにトルコの叡智だ。賞賛に値するな。


論評ハルク2号
後々、“トルコ人はこうだ、トルコ人はああだ”とか言われたときに、“いやいや違うよ、兄ちゃん!ちょっといいかい?と言い返したい奴にはちょうど良いネタができたってわけだ。そういう奴らに、アーフィエト・オルスン!

※食事の際によく使われる決まり文句。“召し上がれ”の意。


論評ハルク3号
お前らな…..この手のインチキに何で支援コメントなんて書いてんだよ?こいつの嘘っぱちと詐欺で俺たちも、日本人たちも、お偉いさんたちも騙されたのに、どうして“よくやった!”なんて言えるんだ?

1、2年前、CNNのタハ=アクヨルの番組にこの男が出てきて、延々と喋りまくってたのを覚えてるよ。その時は俺も“おお、すげえ!”って思ったもんだ….何て賢い人間がいるんだろう。大したもんだ!てな。

※トルコの著名なジャーナリスト。

でも、それから2年くらい音沙汰がないと思ったら、まさか妙な風に人を騙して、日本人たちから寄付金を巻き上げていたとは。ヤクザ(原文ママ)でもやらないぞ、そんなことは。まったく…..。

お前らな、こういうのを叡智だとか知性だとかいったら駄目だ。完全な泥棒だろうが…..。

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こうやって見たところ、セルカン氏の悪行を賢さの現われだとして賞賛するような不謹慎な書込みもあるにはあるものの、大半の、特に若い層の反応はかなり常識的ですね。 奇しくもセルカン氏がトルコの将来のため、啓蒙すべしと主張していた世代です。

その彼らも、恐らく今回の事件を通じて“安易にエコやら科学やらを騙る詐欺師には気をつけるべし”と情報リテラシー能力を向上させることでしょう。また、際限なく嘘に嘘を重ねることで破滅したセルカン氏を反面教師とすることで、“複数の嘘をつく場合はその整合性に気をつけるが吉”といった処世術も身に付くかもしれない。

その意味では、セルカン氏も結果としては彼らの教育に立派に貢献できているわけです。

まさに、男子の本懐ではありませんか。

“ピーター=フランクルになりそびれた男”の母国での評判(14)

2010-01-20 21:08:49 | トルコ関係

→(13)からの続き

この記事に対するトルコのアニメ・ファンの反応はどうだったのか?ポータルサイト“donanmhaber.com”の掲示板に、スレッドが立てられていました。

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「トルコ人のアニメ監督!!!....」

原文:TÜRK ANİME YÖNETMENİ!!!...
http://forum.donanimhaber.com/m_22979467/tm.htm

<ハルクのコメント>

論評ハルク1号
だからといって、“トルコ語で作って、日本語の字幕を付けろ!俺たちが何を撮ったか誰もが分かるようにな”なんてやるんじゃないぞw。


論評ハルク2号
この記事、長すぎ。要約とか無いの?


論評ハルク3号
良い記事だな。アニメからトルコの抱える問題まで全てのことに触れてるし。


論評ハルク4号
何か誤解されてるような気がするんだけど。そのアニメでセルカン=アヌルル博士はコンサルタントをやっていて、彼の書いた小説のいくつかは脚本化されてるって話だろ。つまり、彼のことをトルコ人のアニメ監督だというのは間違いってことになる。


論評ハルク5号
>1号
>だからといって、“トルコ語で作って、日本語の字幕を付けろ!俺たち
>が何を撮ったか誰もが分かるようにな”なんてやるんじゃないぞw。


www


論評ハルク6号
基本的に、日本のある大学に勤める科学者が書いた2冊の本もアニメ化されないといけないって話だな。

※セルカン氏が日本語で出版した他の二冊の著作、“タイムマシン”と“ポケットの中の宇宙”のことか。


論評ハルク7号
セルカン=アヌルル博士は“宇宙エレベーター”とかいうプロジェクトを立ててたような気がする。確か、海底での生活に関わる何かだったな。トルコ語の著書もあるぞ。


論評ハルク8号=4号
>7号
>セルカン=アヌルル博士は“宇宙エレベーター”とかいうプロジェクトを
>立ててたような気がする。確か、海底での生活に関わる何かだったな。ト>ルコ語の著書もあるぞ。


何かさ、“ガンダム00”を見て書き込んでるだろ。


論評ハルク9号=7号
>8号=4号
>何かさ、“ガンダム00”を見てから書き込んでるだろ。


分からん。


論評ハルク10号
>8号=4号
>何か誤解されてるような気がするんだけど。そのアニメでセルカン=アヌル>ル博士はコンサルタントをやっていて、彼の書いた小説のいくつかは脚本
>化されてるって話だろ。つまり、彼のことを“トルコ人のアニメ監督”だとい>うのは間違いってことになる。


悪いけど、よく分からない。そのサイトのアニメ情報のコーナーで、“監督”の所にセルカン=アヌルル博士の名前って書いてなかった?


論評ハルク11号=8号=4号
>10号
>悪いけど、よく分からない。そのサイト(=“アニメ、漫画、トルコ”)のアニ
>メ情報のコーナーで、“監督”の所にセルカン=アヌルル博士の名前って書い
>てなかった?


↓英語版“Real drive”の製作スタッフ表

/////////////////////////////////////////////////
>Director: Kazuhiro Furuhashi

>Series Composition: Jun'ichi Fujisaku

>Original creator: Masamune Shirow

>Character Design: Tetsuro Ueyama

>Art director: Mio Ishiki

>Sound director: Tomoaki Yamada
////////////////////////////////////////////////

セルカン=アヌルル博士の役割は、監督補佐/コンサルタントだ。


論評ハルク12号=11号=8号=4号
>9号=7号
>>何か、“ガンダム00”を見てから書き込んでるだろ。
>分からん。


宇宙エレベーターは海底で生活するためのものじゃない。太陽から無限のエネルギーを生み出しつつ、液体燃料を使わずに宇宙へと行き来できるようにするという、理論的には100年近くもの間議論され、開発されてきたプロジェクトだ。あんたは“ガンダム00 ”の“軌道エレベーター”を見て、そういう風に考えたのかもしれないってこと。


論評ハルク13号=10号
>12号=11号=8号=4号
>セルカン=アヌルル博士の役割は、監督補佐/コンサルタントだ。


なるほど、分かったよ....ていうか、俺が知ってる限り、あんたは“アニメ、漫画、トルコ”の常連メンバーだよな。だったら、サイトの管理者にアニメ情報を訂正しろって注意できるだろ。何しろ、あそこだと、こういうアニメについての情報は間違ってるみたいだからな。

こんな↓感じで


「Space Elevator(宇宙エレベーター)」

監督:セルカン=アヌルル

脚本:セルカン=アヌルルマサノリ=イウチ(井内雅倫)

音楽:ススム=ウエダ(上田 益)

キャラクターデザイン:ヨシユキ=モモセ(百瀬ヨシユキ)

原作:セルカン=アヌルル

※くどいようだが、実際は以下↓の通り
http://space-elevator.jp/cast/index.html

企画監修:日本科学未来館

脚本:井内雅倫

音楽:上田 益

キャラクターデザイン:百瀬ヨシユキ

製作・著作:日本科学未来館/ウォーク/エッグボックス/シブヤテレビジョン

監修:アニリール・セルカン(東京大学助教 建築学/宇宙飛行士候補)
            青木隆平(東京大学教授 航空宇宙工学)
            原島博(東京大学教授 大学院情報学環)



論評ハルク14号=12号=11号=8号=4号
>13号=10号
彼らには注意するつもりだったんだけどな。とにかく今日はチャンスが無かったんだよ。明日書くことにしよう。

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 例のインタビュー記事を読んでみて感じたのは、セルカン氏のアニメに対する理解と敬意の欠如でした。アニメそれ自体を一つの表現とは認めず、単なる売名+プロパガンダの手段としかみなしていない気配が非常に濃厚なのです。

氏と日本との関係も似たようなものなのでしょうね。こちらに長居しているのも、他の先進国に比べて人間が騙しやすく、架空の業績と名声を得るには都合の良い環境だったというだけの話で。

トルコのアニメ・ファンたちは、これを読んでどう思ったのか?

その中でも勘の良い人間は、既に2008年の時点で“アニメ、漫画、トルコ”の記事の不自然さに気づいていたというわけです。ただし、その彼らもあくまで“アニメ、漫画、トルコ”というサイト側のミスと考え、まさかその大元がセルカン氏当人の大法螺であるとは、想像もつかなかったようですが…..。

論評ハルク14号=12号=11号=8号=4号氏が、“アニメ、漫画、トルコ”にその後どのような忠告を行ったかは謎ですが、セルカン氏関係の記事に訂正が加えられた形跡は今なお、ありません。

ところで、インタビューの方の記事内にあった“タイムマシン”“Evolution(エヴォリューション)”のアニメ化計画は、その後どうなったんでしょう?

“アニメ・漫画・トルコ”を見ていたら、インタビューから約7ヵ月後の2008年12月5日付けで、こんな↓記事がありました。

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 「セルカン=アヌルル准教授の新作アニメ映画、日本にて公開開始」
原文:Doç. Dr. Serkan Anılır'ın Yeni Filmi Japonya'da Gösterime Giriyor
http://www.anime.gen.tr/haberdetay.php?id=1110

2008年12月5日 文責:アルピン

セルカン=アヌルル准教授がプロデューサーを務め、脚本を書いた三作目のアニメ映画“タイムマシン”が、准教授本人の参加が予定されている記念式典と、学生らに向けたワークショップも伴い、2008年12月14日につくばエキスポセンターで、その後は全国にて公開が始まる。


映画は、セルカン=アヌルル准教授が2006年に日本で出版した同名の書物(←“小説・タイムマシン”のことらしい)に着想を得て、製作されたものだという。

この映画については、当サイトが今年の4月、セルカン氏本人に取材したインタビュー記事の中で言及あり。その記事については、ここを参照のこと。

映画についての更なる詳細は、セルカン=アヌルル氏のブログのこの記事を参照のこと。
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“3作目”って......その前の2作は一体何と何なんでしょうねw?ひょっとして“宇宙エレベータ”と“RD潜脳調査局”のことか?

セルカン氏の日本語ブログによれば、どうやらこれはつくばエキスポセンターが製作した科学教育用アニメを使ったイベントに、セルカン氏が招かれたというだけのことらしい。

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2008年12月14日
つくばエキスポセンター
親子ワークショップ「セルカン博士とタイムマシンについて考えよう」
http://museum-dir.jst.go.jp/e_ken08/shosai/08-006/08-00611.htm
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http://blog.anilir.net/?day=20081203
ワークショップのお知らせを致します。

僕が監修しましたつくばエキスポセンターのプラネタリウム番組
「タイムマシン~不思議な夢の時空旅行~」の上映をきっかけとし、下記の通りワークショップイベントを行うことになりました。この番組とワークショップを通じ、子供達に相対性理論を学びながら、ここに存在する「今」という時間の持つ無限の可能性を捉えてもらいたいと思っています。今年の冬は、主人公の少年航太君と時空を旅してみてはいかがでしょう?番組の上映期間は、12月6日(土)から21年3月1日(日)になります。
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当然、手塚真氏も関係ないようで。つまり、“前2作”と同じく自分が作ったアニメということにしてしまったのでしょう。

で、“Evolution(エヴォリューション)”の方はどうかというと....まあ、推して知るべきですね。これからも“幻の名作”であり続けるに違いないw。

記事が書かれたのはほぼ一年前の話なので、今はどうか分かりませんが.....件のセルカン氏関係の記事が訂正されていないのを見ても、このアルピンという人物はいまだ彼の詐欺師のことを盲信し続けている可能性があります。

悪いことは言わない。

アルピン氏よ、目を覚ませ!

→(15)に続く


“ピーター=フランクルになりそびれた男”の母国での評判(8)

2010-01-19 00:03:03 | トルコ関係
→(7)からの続き

一方、“RD 潜脳調査室”はどうかというと、

こちら↓が“アニメ・漫画・トルコ(Anime Manga Türkıye)”にある紹介ページで、

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「Real Drive(RD 潜脳調査室)」

監督:カズヒロ=フルハシ(古橋一浩)

脚本:ジュンイチ=フジサク(藤咲淳一)

キャラクターデザイン:テツヒロ=ウエヤマ(上山徹郎)、セルカン=アヌルル

原作:マサムネ=シロウ(士郎正宗)

簡介:2061年、人類はヴァーチャルな情報ネットによって互いに結びつき、共通の知識の海が生まれていた。ネット内では、個人の知識を保全するための“メタ・リアル・ネットワーク(Metal)”という名のシステムが構築されたが、時とともに、ヴァーチャルと現実の間に深刻な問題が生じ始める。サイバー・ドライバーたちの任務は、こうした問題について調査することだった。

追伸:このアニメでは、セルカン=アヌルル博士が“フューチャー・ヴィジュアル・スーパーバイザー”として助監督を務めている。また、同博士の“インフラ・フリー住宅計画”もこのアニメの中では実用化されている。

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こちら↓がWikiにあった実際のキャスト表。

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• 原作 - プロダクション・アイジー/士郎正宗

• 原作協力 - クロスロード

• 監督 - 古橋一浩

• シリーズ構成 - 藤咲淳一  • プロップデザイン - 尾崎智美

• キャラクターデザイン - 上山徹郎

• フューチャービジュアリスト - 竹内敦志


 • フューチャースーパーバイザー - アニリール・セルカン


 (以下省略)
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“キャラクターデザイン”の欄にセルカン氏の名はありません。“フューチャースーパーバイザー”というのもあくまで“未来考証”担当の意であって、“助監督”ではないでしょう。“インフラ・フリー住宅”が劇中に登場しているというのも実際にはよく分からない。

いずれにしても、両作品におけるセルカン氏の役割が必要以上に誇張されているのは明らかです。一体、“アニメ・漫画・トルコ(Anime Manga Türkıye)”はどうしてこんなことをしてるんでしょうか?

あちらの人間と話していると、海外(特に欧米)で活躍しているトルコ人への、あたかも自己の延長に対するが如き偏愛がしばしば感じられたりもするのですが、この場合も“同胞初のアニメの作り手”に対する身贔屓が少々過ぎたということか?

この辺りの情報の出所としては、セルカン氏紹介ページにせよ、2つのアニメの紹介記事にせよ、同サイトの関係者で日本在住のトルコ人と思しき人物が2008年4月にセルカン氏に直接取材したという、長文のインタビュー記事が挙げられていて、そちらを読んだ方が早いのかもしれない。

かなり長いですが、全訳してみます。

→(9)に続く

“ピーター=フランクルになりそびれた男”の母国での評判(7)

2010-01-18 23:49:16 | トルコ関係

→(6)からの続き

日本での“成功”を背景に、来るべき凱旋帰国のため盛んにトルコでの知名度を上げようと努めていた節のあるセルカン氏ですが、前々々回のエントリーで取り上げた2008年8月のミリエット紙の記事でも、最初の方でわざわざ、

>セルカン=アヌルル(35歳)はトルコではさほど知られていないが、近年では日本
>で最も人気のあるトルコ人である…。

みたいな前置きが入っていた所を見るに、トルコ社会での“一般的な知名度”は、実は最近でもそんなに高くはなかったようです。

とはいえ、ある特定の分野に関係する人々の間では、氏は紛うこと無き“日本での成功者”であったわけで。 建築や宇宙関係の研究者や学生といった人々はもちろんのこと、ネット上でとりわけ高い関心を示していたのは、現在、トルコの若い層にも増えつつある日本アニメのファンたちでした。

"詐欺師”と”商業カルト”ならまだしもw、“詐欺師”と“アニメ”のどこに接点があるのかと思われるかもしれません。でも、それがあるんですよ。

実はセルカン氏は、その宇宙飛行士候補という(ただし架空の)肩書きや、“宇宙エレベーター”や“インフラ・フリー住宅”といった(今や大部分が他からの剽窃である可能性が高いとされる)先端技術についての研究実績を買われ、未来の世界を舞台とする2本の日本製アニメの監修や科学考証を任されていたのです。

その内の一つが、東京のお台場にある“日本科学未来館”が製作したプラネタリウム用のアニメ作品、“宇宙エレベータ~科学者の夢みる未来~”でした。セルカン氏は東大の他の2人の教授とともに、監修者の中に名を連ねています。

それを報じた、【やじうまRobot Watch】の2007年8月7日付けの記事は、以下↓の通り。

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未来館、夢の宇宙エレベータを描いたアニメ「宇宙エレベータ~科学者の夢みる未来~」を11日から一般公開
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/08/07/596.html

● 夢の宇宙エレベータで宇宙ステーションを駆け上る
日本科学未来館は、同館6階のドームシアターガイアにおいて、全天周映画「宇宙エレベータ ~科学者の夢みる未来~」を8月11日より一般公開する 。一般上映に先駆けて、プレス試写会が5日に開催された。

この作品は、「宇宙エレベータ」に関する物語をアニメーションで綴ったもの。企画監修は日本科学未来館、制作は独立行政法人科学技術振興機構、ウォーク、エッグボックス、シブヤテレビジョンが担当している。

宇宙エレベータとは、地球から約3万6千km離れた静止軌道上まで伸びた「新輸送システム」だ。静止軌道上に重心があるため、宙に浮いているよ う見える。ロケットなどよりも安全で、低コストで宇宙ステーションまでの輸送・運搬が可能になるといわれている。現在のところ、この宇宙エレベータは、建 設や運用面などのさまざまな問題から、まだ科学者たちの夢のレベルとして語られている。

とはいえ、このアニメーションの監修として、東京大学のアニリール・セルカン助教(建築学・トルコ人初宇宙飛行士候補)や、青木隆平教授(航空 宇宙工学)、原島博教授(大学院情報学環)が参加しており、細かい部分で専門家の意見も取り入れられている。前述のアニリール・セルカン助教は、NASA において3年間、宇宙エレベータのプロジェクトを担当していたという。

冒頭の挨拶で、セルカン助教は「宇宙エレベータについては、現実不可能なものと思われるかもしれない。しかし研究によって分かったことは、お金 は掛かるけれど現実可能であるということ。もし世界の国々が1年間だけ戦争を止めて、そのお金を建設費用にまわせば、2018年には最初の宇宙エレベータ が作れるかもしれない」と語った。

さて、今回公開 される新コンテンツについてだが、その時代設定は21世紀後半を想定している。主人公の女子中学生(朝永ミク)が手作り弁当を作り、地上4,000kmの 宇宙ステーションで働く父親(朝永秀樹)に会うために、この宇宙エレベータに乗って宇宙へ初めて旅立つというストーリーだ。

物語では宇宙エレベータのほかに、科学者たちが研究を続けている未来の世界も表現されている。

たとえば、1つの生命体のように機能する知能都市 やインテリジェントハウス、家庭用万能ロボットの「エジソン」、未来型バイクの「インテリジェントツーホイール」、3Dホログラムを備えたマネキン人形 「アクションドール」なども登場する

【まだまだ解決しなければならない課題も多く、その実現は先の話になるだろうが、もし軌道上の宇宙ステーションと地球を宇宙エレベータで結べるようになれば、宇宙空間への観光や生活も「夢の夢」ではなくなるかもしれない。

● 科学者たちが研究を続けている未来の世界
配給元となるウォークの小池裕志氏(映像事業部チーフプロデューサー)は、「2年ほど前から、このプロジェクトをス タートした。実際の製作は今年初めになってから。それまで科学的な検証などの前準備に時間が掛かった。技術的なブレークスルー後の世界を描くことで、子供 たちに頑張ってもらいたいという思いを込めて作った」と語る。

とはいえ、このコンテンツはいわゆる解説調の難しい科学アニメーションではく、未来の夢の科学について親子で語れる楽しい内容になっている。半球スクリーンのドームシアターで繰り広げられる映像は、サウンドと相まってライド感にあふれ迫力満点だ。

本コンテンツの一般公開は8月11日から。平日は1回(12:30開始)、土日祝日は2回(12:30および15:00開始)ほど上映される。 上映時間は約30分間。なお未来館で公開後、国内や世界の大型映像館、科学館、プラネタリウム館などにも配給し、順次、上映を開始する予定だ。

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このアニメの公式サイト(http://www.space-elevator.jp/cast/index.html)によれば、主要なキャラクターの一人である宇宙エレベーターの設計者の名前が“へディエ博士”で、トルコ人という設定だったりするのですが、これは監修者であるセルカン氏への配慮らしい。

もう一つは士郎正宗+プロダクションIG共同原作で“攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX”の姉妹編とも言われる“RD(Real Drive) 潜脳調査室”。

2008年の4月から9月にかけて、日本テレビ系各局の地上波で放映されたアニメ作品ですが、セルカン氏はこれの“フューチャースーパーバイザー”と言われても何だかよく分からないのですが、要するに未来社会(2061年)における諸々の設定の科学考証のようなことをやっていたのだとか。

このアニメとセルカン氏の関わりについては、2008年3月8日に東京大学で開かれた“東京大学創立130周年記念事業 公開シンポジウム”でも話題になっています。

アニメ関係のポータルサイト“アニメ!アニメ”に、それについての記事がありました。

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東大シンポジウム 「アニメがみる未来」:「RD 潜脳調査室」も登場
2008年03月15日
http://animeanime.jp/report/archives/2008/03/rd.html

2008年3月8日、東京大学経済学研究科棟で「東京大学創立130周年記念事業 公開シンポジウム」が開催された。テーマは「アニメがみる未来~コンテンツが切り拓く将来~」である。

開会の挨拶は、本シンポジウム全体のコーディネーターであるプロダクションI.Gの石川光久社長が行った。挨拶の中で石川氏はプロデューサーの資質とし て「3つのS」を挙げた。それは「Spirits,Skill,Study」の3点である。石川氏はその中で特に「Spirits」について、「教えて身 に付くものとは違うので、この講演を聞いて持ち帰って欲しい」と、参加者に檄を飛ばした。

「アニメは子供に未来を見せる」セルカン氏

記念講演を行ったのは、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻助教アニリール・セルカン氏。「インフラフリーが拓く未来の社会と技術」と題した講演を行った。

「インフラフリー」とは、インフラに依存しないで暮せる空間技術(INFRA-FREE LIFE)のことである。具体的には天変地異などでエネルギー・食料・水が遮断された場合に自給自足できるシステムのことを指す。太陽エネルギーや風力発 電とも違う、ゴミとして出されたものを「社会インフラ」と利用し、循環してエネルギーを作り出すことについての研究を行っている。

未来像における具体例としてロボット技術は多くの国で挙がるが、本田技研の2足歩行ロボット“ASIMO”のように、人間との調和を連想するのは日本独 特の世界観であるという。そこで過去に科学技術が戦争に使われた例を挙げ、「科学者は開発だけが目的ではなく、何のために使うのかというビジョンを持って 研究しなくてはならない」と強調した。

アニリール氏は2008年4月から放送されるアニメ『RD 潜脳調査室』で、未来考証のスーパーバイザーを担当している。アニメは子どもに未来を見せる側面と教育を行う側面から、学者として非常に興味深い経験であったと語った。

「RD 潜脳調査室」アニメと科学のコラボを実現

続いて行われたパネルディスカッションはアニメと科学技術が交錯する未来」をテーマに行われた。司会は東京大学大学院情報学環准教授の七丈直弘氏、パネリ ストはアニリール氏、科学技術振興機構さきがけ研究員の渡邊淳司氏、評論家の東浩紀氏、『RD 潜脳調査室』の古橋一浩監督、同作のシリーズ構成を務める藤咲淳一氏、ウィルコム執行役員副社長の近義起氏という顔ぶれである。

パネルは80分という十分な時間を取って行われ、『RD 潜脳調査室』を軸に未来技術全般に話が及んだ。  この中で、アニリール氏は「大学では近未来しか研究できないので、50年後の世界をアニメスタッフたちと一緒に考える機会が得られて、大変勉強になった」と語る。  シナリオ担当の藤咲氏は「未来を描くのに環境というテーマは外せないので、人工島という舞台で新たなネットワーク社会での探偵物語を進めていく」という 見所を語った。また80歳と15歳のコミュニケーションをもう一つの軸に据えているという。また、環境と技術のバランスが崩れ始めたところで、社会の揺り 戻しが起きたり、人間の根元的なところを描く意図があるようだ。

古橋監督は「演出とは人間の価値観をどう捉えるか」という作品作りの肝に触れる。世界観も人間観も大事なものはバランス感覚で、未来技術を描くにしても人が健全に生きられる「気持ちの良い」ものが何なのかを考えるのが重要だという。

今回は、もう一つ「水」がキーになっており、シンプルで根元的な物質をテーマに描く。表面的には人間ドラマを描くが、裏のテーマとしてはシンプルで永遠不滅なものを盛り込んで、確実に「気持ちの良い」作品にするとと自信を覗かせた。

『RD 潜脳調査室』は2008年4月8日(火)24時59分から日本テレビ系(一部地域除く)で放送開始される。【日詰明嘉】
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とまあ、こんな感じで、急速に増加しつつあるトルコの日本アニメ・ファンにしてみれば、セルカン氏はいわばアニメの“本場”で“作り手”の側に立った初のトルコ人なわけですよ。野球で言えば野茂、サッカーで言えば中田英、医学で言えば北里柴三郎、国際共産主義運動で言ったら片山潜みたいなものです。

注目されないわけが無い。

トルコ語でのアニメ関係サイトの中では最も大きなものの一つ、“アニメ・漫画・トルコ(Anime Manga Türkıye)”にはセルカン氏の紹介ページまでありました。

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「セルカン=アヌルル」
http://www.anime.gen.tr/kisi.php?id=3454

セルカン=アヌルル氏とは

その研究や著書が日本でアニメ化されている、トルコ人の科学者。
アニメの監督も務めている。

(中略)

監督作品:“宇宙エレベータ”

脚本提供:“宇宙エレベータ”

デザイン提供:“RD 潜脳調査室”

原作提供:“宇宙エレベータ”
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あれ???何故かセルカン氏は“宇宙エレベータ”を監修ではなく、監督したことになっています。そればかりか、原作も脚本も書いたことになっている。

また、“RD 潜脳調査室”では、キャラクターのデザインまでやったことになっていますね。何かの間違いか?

念のため、同じサイトの“宇宙エレベータ”についての記事を見てみました。

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「Space Elevator(宇宙エレベータ)」
http://www.anime.gen.tr/animetanitim.php?id=1542

監督:セルカン=アヌルル

脚本:セルカン=アヌルル、マサノリ=イウチ(井内雅倫)

音楽:ススム=ウエダ(上田 益)

キャラクターデザイン:ヨシユキ=モモセ(百瀬ヨシユキ)

原作:セルカン=アヌルル

簡解:21世紀の後半、ミクという名の少女が初めて宇宙エレベーターを使い、地上4000mの位置にある宇宙ステーションで働く父親に弁当を届けようとしていた。彼女はこの興味深い旅行の途中で様々な冒険をしながら、多くのことを学んでいく。

追伸:トルコ人の科学者セルカン=アヌルル氏がJAXAで研究中の“ATA(アタ)宇宙エレベーター”計画と、同名の著作が基になっている。
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監督、脚本、原作の箇所にはっきりとセルカン氏の名前があります。どうも、表記の間違いではなさそうですね。

ちなみに、日本語による“宇宙エレベータ”の公式サイトでは以下↓の通り。

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企画監修:日本科学未来館

脚本:井内雅倫

音楽:上田 益

キャラクターデザイン:百瀬ヨシユキ

製作・著作:日本科学未来館/ウォーク/エッグボックス/シブヤテレビジョン

監修:アニリール・セルカン(東京大学助教 建築学/宇宙飛行士候補)
        青木隆平(東京大学教授 航空宇宙工学)
        原島博(東京大学教授 大学院情報学環)
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監督は存在せず、企画監修は“日本科学未来館”となっています。脚本は井内雅倫氏の名前だけ。セルカン氏の名は、三人居る監修者の内の一人として記されているのみですね。

また、セルカン氏がその一年ほど前に出した著作である“宇宙エレベーター”が原作になっているか否かについてですが、公式サイトの方にそういった記述は一切ありません。

そういえば、“日本宇宙エレベーター協会”のサイトにはセルカン氏の著書である件の“宇宙エレベーター”と、監修作品であるアニメ“宇宙エレベータ”双方のレビューが載っているのですが、それによると、

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3.宇宙エレベータ ~科学者の夢みる未来~ ほか
http://jsea.jp/Review03-Foreseen-by-Scientists

NASAの宇宙飛行士候補と称するアニリール・セルカン氏による、宇宙エレベーター (アニメのタイトルは「エレベータ」。以下SE)を取り上げた書籍と、監修したアニメーション作品。アニメは日本科学未来館をはじめ、全国で上映館を増やしている。

書籍については、「宇宙エレベーター」と題してはいるものの、実際にSEについて割かれているのはほんの数ページで、ほかはセルカン氏の半生やこれ以外の研究などについて述べており、全体としてセルカン氏のエッセイの趣が強い。
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何でも著書の方は、その題名にも拘わらず“宇宙エレベーター”についての具体的な記述は僅かなものらしい。

アニメの方では、そこに登場する宇宙エレベーターの構造には確かにセルカン氏の“ATA宇宙エレベーター”計画の影響が見られたり、また、登場人物の一人がトルコ人という設定になっていたりはするものの、それをもって“原作”を担当した、なんて普通は言わないでしょう。


→(8)に続く
 


“ピーター=フランクルになりそびれた男”の母国での評判(6)

2010-01-15 00:04:42 | トルコ関係

→(5)からの続き

ただ、その“健康イデオロギー”も、しばしば“食べれば健康に良い”から“食べないと健康になれない”へと先鋭化しがちであり、ほとんど宗教的ともいえる三基製品への絶対的な信仰をもたらしたり、

↓例
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http://www.sos-file.com/sossos/m_mikip1.htm

先日、友人に誘われ、ミキプルーンの東京セミナーというのに参加しました。ミキはTVのCMでもよく見るし、それほど危ない商品ではないと思うのですが、自社の商品に対する、熱狂的な思い入れを目の当たりにし背筋の寒くなる思いをしたのです。

ミキの人々は健康補助食品であるはずの「プルーン」や「プロティン」などを、あたかも癌にもアトピーにも効く「万能薬」のように奉っているのです。

中でも一番気持ち悪かったのはミキの商品で健康になった人たちの「体験談」です。いかにして自分が、家族が、健康を取り戻したのか、末期癌から生還したのか、アトピーの子どもを治したのかゥイ覆匹覆鼻」病院の治療や薬を拒否して「プルーンだけで難病を治した」という話をみんな涙ながらに聞くのです。

その話によれば、貧血も便秘も低血圧もアトピーも腎臓病も癌も膠原病もうそのように治ってしまうのです。

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http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20081018#p1

気功で癌を「治した」症例はまだ診たことはないが、ミキプルーンで脳梗塞を「治した」症例なら経験がある(■ミキプルーン、代替療法、善意の素人)。通常の経過での回復を、家族はミキプルーンのお陰だと誤認したが、いちいち指摘しなかった。もちろん、回復がミキプルーンによるものかどうか、医学的な見解を聞かれたら正直に答えただろうが、実際には「びっくりされたでしょう?」としか聞かれなかった。

私は、びっくりしたと答えた。許可なくミキプルーンを勝手に食べさせた行動にびっくりしたのは事実だからだ。今頃、家族は、ミキプルーンのお陰で医師もびっくりするほど回復した「体験談」を話しているかもしれない。
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その絶対的な信仰に、販路を切り開いて大量の在庫を捌かないといけないという経済的な切迫感、さらに時には“善意”なども綯い交ぜになって、親族や友人との間の人間関係を破壊するほどの強引な販売活動に走る人もいるようなのです。

↓例
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http://www.jineko.net/forum/%e3%81%99%e3%81%b9%e3%81%a6%e3%81%ae%e5%ba%83%e5%a0%b4/25748/

ミキプルーンを勧められて困っています。 はじめまして。双子ママといいます。自宅の隣にミキプルーンの代理店をやっている方がおられ、毎日の様にゼリーやお菓子、サンプル品をもってこられます。セミナーにも参加しないか(12000円必要)とかいわれます。双子育児中だというと、預かってあげるといいます。近所つきあいと思い、「プルーン一個かいます。」」というと、双子なんだから栄養がいってないから、子供のためにいろいろ買いなさいとまた、きりかえされました。インターホンは無く、ベルだけなので、どうしてもでてしまいます。

私の家の食費は4万円ぐらいなので、それを考えても、高額な商品は買えません。確かに栄養は重要で、未熟児でうんでしまったのも私の貧血にあるのでは?とも思っています。目上の方なので、断りにくいし、声をかけてもらうことはうれしいんです。どう思われますか?

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親戚の押し売りで困っています
http://dospara.okwave.jp/qa3409726.html

親戚がミキプルーンや健康食品を信じているらしく勧めてこられて困っています。その人は代理店をしていて毎年海外旅行に招待され、研修だからと言っていました。だいたいどれくらいの商品を販売すればそれくらいのランクになるのか、どんなマニュアルで勧誘するのか教えてください!近いうちに会うのでそれまでに断りかたを考えたいです。お願いします。

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http://www.sos-file.com/sossos/m_mikip1.htm

私は病気を患っています。食生活面で悩んでいたので、販売員に説得されてつい栄養補助食品を購入してしまいました。その後、痒み、腹痛、頭痛が続くのでこのことを販売員に報告しました。

すると、販売員はこう言うのです。「この製品は自然の食品でできているから頭が痛くなるはずはありません。」「あなたの体が病気になる前に戻ろうとしている証拠ですよ。今は苦しいけど大きな山を乗り越えて頑張りましょう。」根拠の無い言い訳に開いた口がふさがりません。
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皆が皆こんな具合ではないのでしょうが….傍から見たらマルチと言うよりも、何だか新興宗教みたいな感じですね。三基の製品自体は、“適度に使っていれば”それなりに良いものだ、というコメントも結構見かけたのですが。

で、その“キャンペーン=研修”旅行の話に戻ると、基本的にその参加者は、三基製品への“信仰心”の強い人々ばかりなわけで、カルト的な雰囲気が濃厚らしく….。

たとえば、こんな↓風に。

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http://okwave.jp/qa/q488654.html

販売方法はとても疑問のあるものときいています。

販売成績優秀な人は会社持ちで豪華海外旅行に連れて行ってもらいます。その旅行(ヨーロッパのとある都市です)の現地のガイドさんを知っているのですが、その方曰く「バスの中でもシュプレヒコールを全員でやったり、全員涙を流しながらの表彰会など、まるで宗教団体のようだった」と。ま、この話イコールマルチという訳ではありませんが、ちょっと普通じゃないですよね。

(後略)

参考URL:
http://www.makani.to/akutoku/bbs/qa/pslg69647.html

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イスタンブルでのそれも何となく想像がつきますね。前述の2chのミキ・スレッドによれば、この旅行では、組織の一大イベントとしての旅行自体にハクを付け、かつ参加者らが今後も販路拡大に邁進するためのモチベーションを高めるためか、毎年、著名人が講演に呼ばれるのが常なのだとか。セルカン氏の講演もその一環だったのでしょう。

セルカン氏がそこで何を話したか、また、氏と三基商事との間に、そもそもいかなる関係があったのかは分かりませんが、

こういう↓常日頃からのカルト的なるものとの相性の良さを見る限り、

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類はカモを呼ぶ - セルカンカレッジ静岡に集まった人々とは

http://neta.ywcafe.net/001034.html

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実は,案外深いのかもしれない。

まあ、それはともかく、

“営業所”の人々が、捌けるかどうか分からないほど大量の三基製品を一括購入、しばしば周囲との人間関係を悪化させてまでその旅行に参加した見返りが、現地での勝手な“セルカン氏の追っかけ”認定だとしたら、それはあまりにもひどい話ですね。

心から同情いたします。合掌。

話が本題から大分反れましたが、

さて、このミリエット紙が報じた若きトルコ人“科学者”の“壮挙”について、トルコの人々はどのように反応したのでしょうか?

記事のコメント欄の部分には、結構コメントがついていました。

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 <ハルクのコメント> 
http://yorum.milliyet.com.tr/Yorumlar.aspx?SayfaNo=1&&HaberKod=G_434986#Yorumlar


論評ハルク1号
大したもんだよ、おめでとう。としか言いようが無いな、本当に。


論評ハルク2号
一言で言って、完璧だ。我が国の誇りだよ。個人的に日本人にはすごく興味があるんで。彼には感謝してます。


論評ハルク3号
大したものだ!この人はそれほどハンサムではないけど…要するに日本ではカリスマだということだな(90%が女性!)。セルカンさん、もしこのコメントを読んでるんだったら、俺は言いたい。貴方のように流出した頭脳は、もはやトルコに戻るべきだ

※カリスマ云々の件はともかく、この点には心の底から同意するw


論評ハルク4号
ブラボー!ブラボー!….しかし、うちらで国家級の勲章該当者って、二流のテュルキュ歌手(テュルキュ=民謡風の歌謡曲)みたいな連中だよな。アラベスク歌手(アラベスク=日本で言えば演歌に該当するような歌謡曲)がいればそいつに国家勲章が与えられる、みたいな…..。

※いずれにしても、詐欺師にやるよりは良いと思う。


論評ハルク5号
一言で言えば“ブラボー!”だな。これは誇るべきことだ。“セルカン=アヌルル”には観光省から感状が贈られるべきだと思うよ。いや本当に!

願わくば、こういう起業精神に富んだ若者がもっと世に出でんことを、インシャッラー。ただ、政府はこの種のプロジェクトにもっと報奨する必要があるな……。

※観光省って…wあと、セルカン氏流の起業精神は全然いらないと思うw。


論評ハルク6号
うちらにもこの種の人物がいないと駄目だな。わが国にとっては凄く大事なことだ。


論評ハルク7号
偉いな。こういう知識人がいるのは実に素晴らしい。海外でトルコのことを紹介したり、観光客をトルコに呼び寄せたりするのは国威の発揚に役立つだろう。今トルコで悪いことばかりが起きているだけに、このニュースはとても良い知らせだと思う。


論評ハルク8号
セルカンさんに感謝の意を表します。 みんな、もう俺たちにもこういう人たちが必要なんじゃないか?世界は今やこんな形で発展と成功を求めている。先進国でこういうのはよく目にするわけだが、言わば俺たちでもやれるってことだ。そういうわけで、みんな、よろしくw


論評ハルク9号
おお、こんなトルコ人がいたとは….立派なもんだ。アッラーの御加護あれかし。


論評ハルク10号
 JASA(←JAXAの間違いか?)…日本のNASAで働く唯一のトルコ人であるどころか、唯一の外国人とは。おめでとう、そして有難う、セルカン=アヌルル。

※くどいようだが、セルカン氏のJAXAでの任期は2005年で既に終わっている。


論評ハルク11号
凄えよ….俺はあんたのファンであり、あんたのことを誇りに思っている….成功を祈るよ、兄弟….

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まさに大絶賛ですね。しかし、まさかこの一年後に破局が待っていようとは……。

→(7)に続く