歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

アゼルバイジャン人から見た日本の写真家たち

2009-04-24 23:27:32 | アゼルバイジャン関係

考えてみれば、このブログを開設してから訳したのってロシア語の掲示板ばかりですね。まがりなりにも〝対象地域=“旧ソ連圏”と銘打っているからには、たまには他の言語のものも扱った方がいいんでしょう。

とういうわけで、試しにアゼルバイジャンのポータルサイト“EylencE(Əyləncəエイレンジェ=“娯楽”の意).az”の掲示板をのぞいてみました。

アゼルバイジャンというのはイランの北西にある人口約800万の小さな国で、主にトルコ語に近いアゼルバイジャン語が話されています。

アゼルバイジャンの位置  出典wiki


住民の大半がシーア派のムスリム。1991年にソ連から独立したのですが、歴史的には約200年前に帝政ロシアに併合されるまで、ずっとイラン文化圏の一部でした。一般に、イランの民族主義者というのは「歴史的なイラン文化圏=本来あるべきイラン国家の領域」とみなしがちなのですが、そうした経緯から、彼らにとってこの地域は(現地の住民の希望とは関係無しに)「未回収のイラン」ということになっているらしい。中華民族主義者にとってのモンゴル国みたいなものでしょう。

それはともかく、例のごとく最初は日本に関わりのあるものを取り上げようと思ったのですが、それっぽいスレはほとんど皆無。ロシアのとは大違いですよ。

まあ、日常的にロシア語で何か読んでいる人間が世界全体で少なくとも1億人以上いるのに対し、アゼルバイジャン語の読み手は多くて800万足らず。とにかく、母集団の規模が違いすぎるロシアとアゼルバイジャンの間のネットの普及度の違いを考えれば、その差はさらに大きくなるでしょう。

※実は国境を挟んだ南側のイラン領にも千数百万に及ぶアゼルバイジャン語の話し手が住んでいるのですが、イラン政府は彼らに対し母語による教育を認めておらず、公の場で使われるのは専らペルシア語です。彼らの間では、アラビア文字を使って書かれたアゼルバイジャン語の書物が流通していたりもするのですが、一般人はラテン文字で書かれたアゼルバイジャン語が読めません。

アゼルバイジャン語が話されている地域   出典wiki


そもそも、アゼルバイジャン人でも教育程度の高い人々は普通にロシア語が読める、というか、首都に住む上層階級の連中はアゼルバイジャン語よりも、むしろロシア語の方が得意だったりしますから、アゼルバイジャン語のサイトで自分の興味の対象が見つからない場合は、とっととロシアのサイトに飛ぶでしょう。というか、アゼルバイジャン語のサイトなんて最初からスルーしているかもしれない

こうした状況は、実はバルト三国を除く旧ソ連圏の各国に共通しています。帝政ロシアの時代からこのかた、主にロシア語を通じて近代文明を取り入れてきたインテリ層にとってみれば、「俺たちの国は独立したんだ!さあ、これからは民族語だけで読み書きしろ!」なんて言われても厳しいわけですよ。

何しろ、紙メディアにしてもネットにしても、各民族語よりもロシア語の方が圧倒的に選択肢は多いですから。それに、人間は難しいことを考える際は、やはり学校教育を受けた言語で考えがちなものだと思うのですが、彼らの多くは幼稚園の段階からロシア語で教育を受けている。

もちろん、これにも地域によって差があって、例えばソ連時代から民族語が大きな力を持ち、独立後は公の場からひたすらロシア語の排除が進んでいるグルジアみたいな国もあれば、ロシア語抜きだと高等教育もままならない中央アジアのカザフスタンやクルグズスタン(キルギス)みたいな国もあります。アゼルバイジャンはその中間くらいでしょうか。件のポータルサイトも、アゼルバイジャン語とロシア語の2言語対応になっています。

ちょっと話がそれました。そんな具合で、掲示板の方には日本関係のスレはなかったのですが、このサイトの管理者のブログにはけっこうそれ関係の記事がありました。これもその一つです。

-------------------------------------

「日本の写真家たちw」
原題:Yapon fotoqraflar :)))
http://www.eylence.az/blogs/index.php/eylence/2007/11/27/p8413#more8413
















<ハルグのコメント>

※ハルグ(xəlq)=アゼルバイジャン語で“人民”の意。


論評ハルグ1号
最後の写真はいいなww。


論評ハルグ2号
これらの写真は、本当に現実を映していると思う。ww日本の人々は誰もがとても文化的で、鷹揚で、“繊細な“性格の持ち主なんだ。彼らがこのような姿勢で写真を撮っているのも、まさにそれが原因だろう。俺自身の経験に基づく、主観的な感想だけどww。


論評ハルグ3号
俺には…これはちょっとできないかも。日本人から学ぶべきことは本当に”たくさん“あるな。本当にたくさん….。全ての領域、そして全てのことにおいて….。


論評ハルグ4号
実に刺激的な写真家たちだ!スレ主はハンドル名変えたんだね。おめでとう。で、一番目のコメントに同意。俺も、彼らがこの姿勢で写真を撮っているのは、その誠実さと鷹揚さの現われだと思う


管理人(女性らしい)
ありがとう。でも、内輪では前から使ってた名前なんだけど。


論評ハルグ5号
素晴らしい姿勢で立ってるな!www


論評ハルグ6号
えーと、私が思うに、これは彼らが堂々と仕事をしている証だと思う。つまり、何よりもまず責任感をもって仕事に取り組んでるってこと。他人からこんな変な姿勢でいるところを撮られたくないのなら、ロボットみたいにぼーっと突っ立って撮ればいいわけでしょ?でも、そうすることでより注意深く、より良い写真が取れるのなら、こっちの方が良いはず。

写真ありがとね>管理人

※日本人に対する褒め言葉としては、ロシアの方でもよく使われます。


論評ハルグ7号
こいつら皆マイケル・ジャクソンからダンスの手ほどきを受け....,,,それを撮影技術に応用したんだろwwww最後の写真の女なんて、もはやジェニファー・ロペスの域に達しているな。wwww


論評ハルグ8号
彼らは写真を撮ってるんじゃない、苦行に耐えてるんだ!wwwこの写真家たちを撮った奴自身は、一体どんな格好で撮ってたんだろう???wwwww 管理人よ、素晴らしい写真をありがとう。

※原文は“onlar shekil yox ezab cekirler:))”と、同じ動詞を用いる慣用句“Şəkil çəkmək=煙草を吸う“+”Əzab çəkmək=苦しみに耐える“が掛詞になっています。それを反映させたような、うまい訳が思い浮かばなかった...。


論評ハルグ9号
管理人さんは、7番目の写真は俺たちのことを考えて貼ったのか?ww


論評ハルグ10号
写真家って良い仕事だよな。俺も写真を撮るのが好きなんだけど、残念ながら300万画素のカメラが付いた携帯が買えないんだ。いつかは1200万画素のデジカメを買いたいもんだけど…。

写真家なのか?w

---------------------------------------
ここに書き込んでいる人々の年齢は、多分大学生くらいではないかと思うのですが、ネタとして笑うにせよフォローするにせよ、東アジア人の行動に無理やり“精神性”を読み込んで解釈しようとするのは、やっぱりロシアのインテリと同じ感じがしますw。

もしこれが隣のイラン人とかトルコ人であれば、単に“変わった容貌”で、“変わったファッションセンス”を持つ人たちが、“変な格好”をしているから笑うという、ある意味正常なw反応を示すのではないかと。

それは別にいいのですが、問題なのはああいうカンフーの基本姿勢みたいな構えで写真を撮ったり、不思議な角刈り頭だったりする人たちは果たして日本人なのかってことでw。

そういえば、以前、中央アジアのタジキスタンの山中にある村の学校を訪問した際に、教室の壁には「世界の人々」と題して、雑誌か何かから切り取ってきたような世界各地の民族の写真が貼られていたのですが、その中の“日本人”貼りついたような笑顔をした60年代っぽいファッションの男女が海岸を走っていて、よく見たら胸には金日成バッジみたいなのがついてた覚えがw......。

ここいらの普通の人は、東アジアの主要三民族の違いなんてロシア人以上に理解していません。「日本人ならブルース・リーの本当の死因を知ってるはずだ!一体死因は何なんだ?」みたいなことを言われても驚いたり、日本と中国の文化的な違いを説明するなんて無駄な努力はせず、「実は、あれはフリーメイソンの陰謀で云々...」と冷静に正確な情報だけを伝えるよう、心がけるべきなのでしょう。