前にバルナウール韓国人留学生惨殺事件についてのエントリーでも触れたように、最近のロシアでは、モスクワから遠く離れたシベリアの地方都市にすらネオナチ組織が存在し、非白人的な容貌の持ち主はロシア国民であろうが外国人であろうが関係なく、しばしば襲撃の犠牲となっています。
その中でも、モンゴル人や、ロシア国内の少数民族であるブリヤート人やカルムイク人といったモンゴル系の民族は、文字通りの“モンゴロイド”風の見てくれで目立ちやすいためか、漢人や中央アジアの諸民族と並んで標的になりやすいようで...。
例えば、2008年の冬頃、モスクワの日本大使館が在留邦人向けに発した安全情報の中でも、サンクト・ペテルブルクの地下鉄内で発生した、ブリヤート人に対する暴行事件が挙げられています。
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在サンクトペテルブルク総領事館管轄地域
www.ru.emb-japan.go.jp/APP/anz_sankt.xls ...
地下鉄ツルゲーネフスカヤ駅付近を走行中の車内で11日、ブリヤート人乗客が5人のスキンヘッド集団に暴行を受けた。
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もちろん、日本人も例外ではありません。あまり被害の話を聞かないのは、そうした人々に比べて、単純に在露邦人の数そのものが少ないからでしょう。
実に理不尽な話です。理不尽な話なのですが、驚いたことに、最近では何とそのモンゴルにも“モンゴル人のネオナチ”がいるらしい。 モンゴル人のネオナチ...何か、ナチ的な人種理論からしたら“ロシア人のネオナチ”以上に違和感のある響きですが、ロシアのそれとは違って、彼らが主に目の敵にしているのは他の人種ではなく、同じ黄色人種の漢民族だったりするようで。
その辺りの背景については、英国“ガーディアン”紙2010年8月2日付けのこの記事↓に詳しいのですが、
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“Mongolian neo-Nazis: Anti-Chinese sentiment fuels rise of ultra-nationalism(モンゴルのネオナチ:反中感情が促す超民族主義の興隆)”
http://www.guardian.co.uk/world/2010/aug/02/mongolia-far-right
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これをそのまま和訳+要約したような記事が“サーチナ”の方にもありました。こちらを読んだ方が早いかも。
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モンゴルで排他的・民族主義が隆盛…主な攻撃対象は中国人
2010/08/04(水)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0804&f=national_0804_073.shtml
モンゴルでは近年来、ネオ・ナチズムを標榜する排他的な民族主義団体が多く設立され、その主張に共感する国民も増えている。外国人敵視の特徴があるが、主要な攻撃目標は中国人という。中国新聞社が報じた。
これまでにも、極右団体のダヤル・モンゴル(汎モンゴル)のメンバーが、「中国人と性的交渉を持った」との理由でモンゴル人女性を「丸刈り」にしたり、「フフ・モンゴル(青きモンゴル)」の幹部が、「中国留学の経験がある」との理由だけで、モンゴル人男性を殺害したとして有罪判決を受けた事例がある。
「ツァガーン・ハス(白いかぎ十字)」の指導者は「ヒトラーを尊敬している。民族の認識を教えてくれたから」と述べた。同団体は、「かぎ十字」はアジアで古くから用いられたマークで、ナチス式の挙手の礼もアジア由来のものと主張し、ナチスの特徴とアジア人としての自己認識が矛盾しないよう「理論武装」しているという。
「ツァガーン・ハス」の23歳のメンバーによると、「われわれは、民族の純潔を守らねばならない。中国人との混血が始まれば、われわれは飲み込まれてしまう」、「金持ちの外国人が、モンゴル人女性に食指を動かしている」などと主張。幹部メンバーの1人は「われわれは『公務執行団体』だ。ホテルやレストランを臨検し、モンゴル人女性が外国人相手の売春を行っていないか調べる」などと述べた。
モンゴル国民の間では、ナチズムを標榜する団体への共感が高まっているという。一方で、若者が留学などで国外に出る機会が増えれば、極端な民族主義は徐々に勢力を失うとの見方もある。
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とりあえず、ネット上に散らばっている彼らの写真を見てまず最初に感じたのは、
北~東アジアの人間がドイツ式制服(あるいはネオナチ風ファッション)で身を固めても、
1. 単なるコスプレにしか見えない
2.さらに、スキンヘッド+サングラスだと誰もが“サンプラザ中野”になりがち
という,厳しい現実でした。
サングラスを取った、“サンプラザ中野”氏。意外と良い人っぽい。
ネオナチだけど….。
でもまあ、この人らはたまたま政治的レトリックとファッションの趣味が最悪だったり、行動があまりにアレだったが故に、こうやって世界のメディアでも話題になっているわけですが、その主張自体は、グローバル化による人口の流動化に伴って、世界各地で盛んになっている民族主義運動のそれと大して変わらないかもしれません。
特に、
中国経済の成長を背景に続々とその数を増し、着実に稼ぐ中国商人
vs.
金を持ってる中国人に対する嫉妬+移民の増加により自らの生活世界に変化が生じることへの不安から、民族主義に走る現地人
という構図は、中国周辺の小国では共通して見られるように思えます。
我らがクルグズスタンもモンゴル同様、海外貿易に占める中国の割合はダントツに高く、商売や留学等のためこの地で暮らす中国人の人口は急速に増えているのですが、記事の中で“「ツァガーン・ハス」の23歳のメンバー”が言っているような不安は、クルグズ人の間でも既に大分前から議論の種となっています。
4月の革命の際、首都ビシュケクで暴動が起こると、暴徒により真っ先に焼き討ちに遭ったのが中華系のスーパーだったという事実は、まさに現地人の複雑な感情の表れではないでしょうか。
という風なことを書くと、ほら、やっぱり中国人が問題なんだ。現地人への倣岸な態度と阿漕な商法が災いしたに違いない。みたいなことを言う人が出てきそうなのですが、彼らに“郷に入っても郷に従わない”傾向があるのは事実とはいえ、クルグズスタン在住の中国人留学生、商人たちは都市部にチャイナ・タウンなど作るでもなく、極めて地味に暮らしていました。中華系スーパーが炎上した後に、トルコ系のスーパーなども次々と襲われたことを思えば、中国人であれトルコ人であれ、やはり“よそ者”の経済的な存在感それ自体が狙われる原因ではなかったかと思うのです。
これについては、南部のウズベク人問題と絡めて、後ほどまた詳しくまとめる予定です。
それにしても、このサーチナの記事のまとめ方は、
>一方で、若者が留学などで国外に出る機会が増えれば、極端な民族主義は徐
>々に勢力を失うとの見方もある。
みたいな感じで歴史的な文脈を無視し、問題をモンゴル人の側の狭量さに押し付けようとしているきらいがありますね。
それについては、一応こういう↓フォローはつけてありますが,
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◆解説◆
中国、モンゴルの両政府は、安全保障や経済発展を念頭に、親密さを高めている。一方で、モンゴルの一般大衆の間では、中国・中国人に対する不信感や警戒感が根強い。中国があまりにも大きな存在で、経済・社会面でモンゴル国に極めて大きな影響を及ぼすことになったことが理由のひとつ。
また清朝末期から中華民国期にかけて、中国(漢人)側の搾取(さくしゅ)や略奪の行為が多かったことが、現在まで影響している。 たとえば辛亥革命から中華民国期にかけて、「革命軍」と自称する中国の軍隊が、モンゴル人に対して略奪を行うことが極めて多かった。そのため、モンゴル語では「ガミン」が盗賊を指す言葉として定着した。中国語の「革命(グーミン)」が語源だ。外モンゴル(モンゴル語では北モンゴル、現在のモンゴル国)が中国の支配を離脱してソ連の傘下に入ったのは「中国の横暴に耐えかねた」との側面が強かったとされる。
中ソ対立期に、モンゴル国(当時はモンゴル人民共和国)では、「内モンゴル地域は完全に漢化された。モンゴル民族の特徴は失われた」との政治宣伝が盛んに行われた。自国民と内モンゴル内のモンゴル民族の連帯感を断ち切るためだったが、現在のモンゴル国民が不用意に過去の宣伝にもとづく発言をして、内モンゴルの「同胞」との間で感情のもつれが発生することがある。
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要するに、サーチナの言い分だと、モンゴルの反中感情は、中華民国時代初期における軍閥による略奪や中ソ冷戦期にモンゴル(←ソ連側に属していた)国内で行われた反中プロパガンダが原因ということになるらしい。
それ自体が中国の軍事的圧力によるものですからねぇ。
なんか哀れ。
http://archive.mag2.com/0000012950/20100707203835000.html
なんか本当に一歩間違ったら死んでいたくらいな、激しいものだったようで、無事だったので胸をなで下ろしました。
ロシアの新聞に載ったという事件なら、人権団体のSovaセンターのサイトに、ニュースとしてアップデートされるはずだし、日本大使館も邦人被害として在留邦人に警戒メールを流すはず。なのにこの事件はニュースも見つからず、大使館からのメールも来なかったし…。
そもそも、アパート出入口の電子ロックドアは数字を打ち込んだだけで開くわけがないし。
少なくともスキンヘッドに迷彩服はキモいだけ
内モンゴル出身の子に聞いてこの祭りの存在を知りました。
日本人の知り合いに「内モンゴルって、だいぶ漢化されてるんじゃないの?」と言われたことがありますが、その説の出所が分かりました。
モンゴル&内モンゴルがいっしょにいる場面には遭遇したことはありませんが、
内モンゴルの子たちは、心の底から完全にモンゴル人で、なかには漢人を目の敵にするような発言をする人もいます。。
モンゴルのネオナチ・・・なるほどという感じです。内モンゴルにも支持者がいそうですね。
上記のモンゴル祭りは、モンゴル本国出身の留学生が主催しているものですが、内モンゴルの子たちも参加していて、
やっぱり内モンゴルはモンゴルに対して連帯感を持っているんだな~と思ったのです。
モンゴル本国の人は内モンゴルに対して(ブリヤートに対しても)どういう印象を持っているのか、聞いてみたいところです。
日本人も問答無用でボコられるのでしょうか?もし仕事でモンゴルへ行くような事が有ってサンプラザ中野を見かけたら、気を付けようっと。