今日の秋櫻写

こちら新宿都庁前 秋櫻舎

マナーコスモス、と映画コスモス

2011年05月23日 20時33分05秒 | きもの

本日は予報どおりの雨だった。

姐さんはさむいさむいと云っていたけど、
めちゃくちゃ寒がりのワタシは全然寒くなくて。
昨日も気温は低かったのにノースリーブで
歩いていて平気だったし。
毎年思うし、姐さんにも云われるけど、
ワタシの体温調整機能って超優秀なのか、
バカになってんのか、何なのか。


さて。
おとつい土曜日にこけら落としした
「マナーコスモス」と「映画コスモス」の様子をご紹介。

「マナーコスモス」の目的は、美しい所作を体得すること。

どんなにレクチャーを受けても、雑誌の特集などを見ても、
身体的に、つまりは3次元的にそれができているのかどうかは
別問題であるという前提のもとにスタートしたのだ。

第1回のテーマは「立つ」。
実際は「立つ」から「歩く」までをやった。



秋櫻舎にいらした方なら分かると思うが、
スペースを作るために大きなテーブルを取っ払った。

「立つ」も「歩く」も基本であることは間違いないし、
毎日毎日誰しもが、人である以上、ものすごくやっているのだけど、
「美しく」と条件がつくと、本気でびっくりするくらい難しかった。



最初に比佐子さんのレクチャーがあって、
それから実際に一人ずつみんなの前で立ってみる、歩いてみる。
そしてその様子をみんなでコメントして、またやってみる。

体の癖、力の配分と気をつけていくと、
なんと難しいことか。
人のはよーく見えるんだけどね。



これは何をしているところかというと、
立つときも、歩くときも、
360度、ぼーっと、常に、意識しながらいる、
ということを練習している。
ここでは小道具としてペットボトルの水が使われ、
背後の水がどこにあるかを意識せよと・・・。

ぴりっと意識するのではダメなのだ。
ぼーっと意識が行き渡らねばならないのだ。
小兵衛になれということだ。
小兵衛とは池波正太郎『剣客商売』の主人公だ。

だから歩く練習をしている姐さんの背後から
「でいっ!」と不意打ちで斬りつけて、
姐さんが「ふぬっ」と片身でその剣をかわす、
ということをしてみせても、

「ね、意識を広げると、ちゃんとかわせるでしょ?」

と比佐子さんは云ったりして
冗談にならないのだった。

この日はどれだけ立って、歩いてをやっただろう。
空いた場所で自主トレまでやるほどにハマっていた。

一番はっとしたのは、よく云われている
「頭のてっぺんから糸で引っ張られるように」
というやり方とは真逆だったことだ。
比佐子さんの方法論は「下から、大地から吸い上げて
根を張るように」立ったり歩いたりするのだ。

さすれば立体的になる。
つまり、ワタシという粒が立つということなのだろう。

おしっ。
ひとつひとつ体に叩きこんでいくぜよ。


そう、この日は、仙台から
とてもとてもうれしいお客さまもいらしたのだ。



呉服屋「にしむら」の大女将、西村艶子さん。
秋櫻舎からは、東北地方の呉服屋さんに
何度かに分けてお見舞い品をお送りしているのだけど、
それがとてもうれしくて、体も動くしということで、
急遽上京してくださったのだという。

なんというお心なんだろうと思う。

艶子さんは震災のときのこと、現在の東北のこと、
たくさんのお話をしてくださった。
妙に忘れられない話もあった。

「みんな元気よ。明るいし、元気にやっているわよ。
 でもね、うまく云えないけど、何か足りないの。
 疲れがずっととれないみたいなね・・・
 ほんと変な、変な精神状態なのよ」

また艶子さんのご自宅は、幸いお風呂を沸かせるので、
毎晩お風呂が壊れた人たちのために開放しているのだそうだ。
しかも、一人でも入れるようにと、ご自分は銭湯に行かれるのだという。

艶子さん、この日秋櫻舎に来て下さって
ほんとうにありがとうございます。




兎の帯!



ペコちゃんとすばらしい笑顔の艶子さん!
比佐子さんはちなみに片結びしてる。


夕方からは「映画コスモス」。
小津安二郎監督の「東京物語」をみる。



とても暑い日、しかも蒸す日だったので、
清見さんは絹ちぢみに花倉織の帯。
素材も色も、だから見た目も涼しそうっていうのは
きものの醍醐味だな。
浅草生まれの浅草育ちという清見さんは
いつもしゅっとしてて、でも女っぽくてかっこいい。



高橋さん。文楽へ行ったときと、きものと帯は同じながらも、
帯あげと帯〆を変えると、また全然印象が変わっちゃう。
印象といえば、ワタシは高橋さんの肩の印象がとてもすきで。
ラインとか、厚みとか、やさしい。





このあやめの染め帯は、
熊崎和人先生の手描き東京友禅。
そしてデザインは比佐子さん。

生地、地色、構図、モティーフを決めて
1本の帯を作っていく。

生地は絽、地色はうす紫(生地見本か色見本をつける)、
構図は、紫と白のあやめをこのようにとデザイン画を描いて、
熊崎センセにお渡しするのだ。

お次は文子さーん。



さわやかだ。やっぱりさわやかだ。

文子さんは山崎青樹先生の草木染の単。
レース織の羽織のたまご色もかわいい。
奥のコスモスがうっすら透けてるのもいい~。
げに涼やかだわ。



見終わった後は軽食をつまみながら
映画談議、当世風俗談義。



もうすっかり夜だ。
素敵なサタデーナイトだ。



半眼の姐さんも、おでこ全開なワタシも
この日はお召の単。


「東京物語」に出てくる日本人は、
淡白で少ない言葉に、言葉以上のものをのせて
会話していた。いや、交流というべきか。
気もちを汲み取りながらも、多くを語らない。
でも黙殺ではない。

「さよなら」「さよなら」
後半のシーンで原節子と香川京子がこの悲しい挨拶を
笑みながら交わすのだけど、美しくて清潔感にあふれていた。
思えば現代ではあまり使わなくなったし、
清見さんが云っていたように「さようなら」と
今は真ん中をのばす発音の仕方だ。

杉村春子、うまい!
ってこれは演技力の話か。
髪結いの女主人の役なのだけど、
当時の女性の独立した職業としては代表的なもので、
社会的にも職種的にも、普通の奥さんではない。
よって、きものも浴衣もちょっと飛んでるオシャレ。
白黒映画なので、柄と素材感のみ拝見できるが、
カラーでもみたいとすごく思った。
そうそう、お太鼓もまっすぐに作らないで、
けっこう粋がっていたのも印象的。

ヒロインの原節子。
圧倒的なオーラだった。
光り輝いてるんだもん。びっくりした。
そして彼女を筆頭に、話をするときはたいがい笑顔である。
笑いながらではなく、静かに笑みをたたえながら話をするのだ。

あざみ柄の藍染め浴衣を着て
布団に横になる一連の動きもすばらしかった。


そんなこんなで第1回目は無事終了。
楽しんでいただけたようで、それが何よりうれしかった。

次回は6月18日(土)。
詳細はまた告知します。