さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

「水雷屯」(卦辞)

2024-08-31 | さわやか易・講座

「屯は元亨利貞。往く攸(ところ)有るに用ふる勿れ。侯(きみ)を建つるに利し。」
序卦伝の始めに、「天地有りて然る後に万物生ず。天地の間に盈つるは、唯だ万物なり。故に之を受くるに屯を以てす。屯は物の始めて生ずるなり。」とあった。屯は難きなり。すべて物の始めて生ずるとき、事の始めて起こるとき、創業の際には、必ず屯難がある。
 
「水雷屯」の象は上の水は陥る、困難、悩みの種であり、下の雷は行動、創造である。つまり、行動しようとする者が、行く手に困難が待ち受けており、進むに進めない状態を表している。
 
又、屯という字は、草木の芽生えを表しており、地中にある芽が地上に出ようとするが、中々出られないという形である。行き悩んでいる姿である。ここから、全ての事業、大は大なりに、小は小なりに、事を始めるものには、屯難があるのである。屯難なくして物事の創業はないのである。
 
又、この屯難は産みの苦しみとも言える。赤ちゃんが産まれる時の母親の苦しみでもある。芸術家が新しい作品を生み出す困難でもあろう。大きな屯難、小さな屯難が何処にでもある。早い話が、私が作っている「さわやか易・講座」も正に屯難の最中にあると言える。
 
「屯は元亨利貞。」は乾為天と同じであるから説明は省略する。「往く攸(ところ)有るに用ふる勿れ。」は乾為天の初九、「潜龍、用ふる勿れ」にも共通しているが、屯難の時はむやみに焦って進まず、じっと進むべき機会を待つべきである。
「侯(きみ)を建つるに利し。」ただ、じっと何もしないで待つのではなく、諸侯に抜擢する人材を選ぶなり、その計画を立てるべきである。直ぐには行動出来なくとも、着々と準備を整えて置くべきである。
孔子の解説には、「雲雷は屯なり。君子以て経綸(けいりん)す。」とある。屯の時代は世の中が乱れ、安心出来ない時代ではあるが、国を立て直すには好機到来、君子は天下のことを経綸し、天下を治め、屯難の行き悩みを救済する時であると述べている。
「水雷屯」は「坎為水」、「沢水困」、「水山蹇」と並んで4大難卦と言われる。しかし、この卦辞は「屯は元亨利貞。」で始まるので、困難ではあるが、希望を伴う困難である。