蜻蛉・莞爾の無責任漢字樂院

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「おちる」

2009年10月02日 | 「語句」「言葉」~動詞扁(あ行~な行)
【「おちる」】

≪辞書で調べてみますと・・・(ちょっと長いですが!?)≫
<落ちる>
(1)高い所から低い所へ移動する。
(ア)(「墜ちる」とも書く)それ自身の重みによって上から下へ移る。
「屋根から―・ちた」「過って池に―・ちた」
「滴が―・ちる」「財布が―・ちている」
(イ)空から雨・雪などが降る。
「大粒の雨が―・ちて来た」「雷が―・ちる」
(ウ)勢いよく降りる。
「滝となって―・ちる」「大鹿二つ妻鹿一つ…一つの谷へぞ―・ちたりける/平家 9」
(エ)光や影が物の上に映る。
「並木の影が路上に―・ちる」「月影が水に―・ちる」
(オ)橋など高い所にあるものが崩れてこわれる。
「橋が―・ちた」「壁が―・ちた」

(2)もとあったものがなくなる。
(ア)付いていたものがとれて、なくなる。
「汚れが―・ちる」「葉の―・ちた木」
(イ)含まれているはずのものが、なくなる。
「彼の名が名簿から―・ちた」
(ウ)病気・狐など身にとりついていたものがなくなって、正常に戻る。「憑(つ)き物が―・ちる」
(エ)そろっているはずのものが抜けて、不完全になる。
「一夜も―・ちず夢(いめ)にし見ゆる/万葉 3647」

(3)程度が低くなる。
(ア)高い程度・段階にあったものが低い程度・段階に変化する。
「人気が―・ちる」「スピードが―・ちる」「風が―・ちる」
(イ)良い状態にあったものが悪い状態に変化する。
「味が―・ちる」「鮮度が―・ちる」
(ウ)他に比べて劣った状態である。
「量産品は品が―・ちる」「兄より弟の方が成績が―・ちる」
(エ)(話が)卑猥なことにふれる。みだらになる。
「あいつが入ると話が―・ちる」

(4)社会的な地位や所属が上位から下位に移る。
(ア)身分・家柄などが低くなる。
「二軍に―・ちる」「かうまで―・つべき宿世ありければにや/源氏(蓬生)」
(イ)(「堕ちる」とも書く)人間の品格などが下がる。堕落する。
「かつての英雄も―・ちたものだ」
(ウ)(「堕ちる」とも書く)望みや救いのない所にはまり込んで身動きできなくなる。
「地獄に―・ちる」

(5)ある水準や条件に達しないために受け入れられない。
「試験に―・ちる」「前回の選挙で―・ちた」

(6)その状態を持ちこたえられなくなる。
(ア)(都などから)逃げ去る。
「西国に―・ちる」
(イ)白状する。
「さすがの犯人も子供の写真を見せられると―・ちた」
(ウ)相手に従う。
「金では―・ちない人だ」

(7)決着がつく。
(ア)ある所に落ち着く。
「最後は身の上話に―・ちた」「眠りに―・ちる」
(イ)入札・無尽などの結果が出る。
「絵は A 氏に―・ちた」
(ウ)手形などが決済される。
「手形が―・ちない」

(8)(動物が)死ぬ。(柔道などで)気絶する。
「小鳥が―・ちた」


≪「おちる」と訓読みできる≫


ラク/* luo4 / lao4 / la4 常用漢字
おちる おとす <死ぬ><始まり><建物完成の祭り>
<まがき><村里><出来上がった鐘にいけにえの血を塗ること>
1122/09936

<解字(常用字解)>
音符は、洛(ラク)。
各には、「上から下へ降る」という意味がある。
  ∴サイ(口)の上に神(夂)が降る形
木の葉が露に濡れて下へおちる ⇒ 落
全てに対して「おちる、くだる、やむ」の意味


堕 墮
タ/ダ duo4 常用漢字
<こわす><こわれる>(おとす)(おろす)おちる(おこたる)
0285/02012・02013

<解字(常用字解)>
土主(土地の神)に祭肉を供える形 ⇒ 墮 堕
 ∴多くの祭肉を盛り上げるように供えるので、
 「崩れおちる」の意味
 「おちる、くずれる、こぼる、やぶれる」の意味に
●堕・墮・墯・?(02089:[土隋]・は同字


墜 墜
ツイ/ズイ zhui4 常用漢字
おちる(おとす)
0291/02091・02092

<解字(常用字解)>
阝の前に犠牲の獣である[隊-阝]を置く形 ⇒ 隊
∴神の降り立つ所を示す
饅頭形に丸めた台の上に土地の神を祭り、
神の降り立つ所とする ⇒ 墜 墜
∴「地面におちる」こと
「とち、つち、ところ」の意味 ◎「地」の元の字



イン/* yun3
しぬ おちる
0719/05883

<解字(漢語林・蜻蛉)>
「員」は「丸くなる」の意味。
歹は、残骨のしるし。「死没」の意味。
「隕」と通じ、神がのぼる神梯(シンテイ)から、丸く転げ落ちて死ぬこと。



イン/* yun3
おちる
1395/12864

<解字(字統)>
「員」は円鼎(エンテイ)の形。
「丸くして転がる」の意味。
丸い物が降って来て、その場所を神聖な所としたことを神がのぼり降りする梯子(阝)を付けて規定した。
「隕石がおちた場所・おちる所」の意味



イン/* yun3
<かみなり、いかずち><すてる> おちる 
1411/12976

<解字(字統・蜻蛉)>
「員」は「丸くなる」の意味。
気象現象に「雨かんむり」を付ける。
天から円い雨粒が「おちる」こと。

 

レイ/リョウ ling2
<静かに降る雨、こぬか雨> おちる こぼれる こぼす レイ=0:ゼロ
1408/12951

<解字(字統・蜻蛉)>
「令」は、深い呪祈ようの帽子をかぶり、ひざまずいている人を横から見た形。
神(天)からお告げが降りてくる。
気象現象に「雨かんむり」を付ける。
その祈りに応えて、良き知らせ(瑞兆)の印として、天から雨が落ちてくること。



フン/* fen4
たおれる <やぶれる><うごく> おちる
0119/00616

 

①ヒョウ/ビョウ ②ヒョウ/* ①piao3 ②biao1
うつ <心をうつ> おちる <さしまねく><高く上がるさま>
0550/04295

<解字(蜻蛉)>
「票」は、漂(ただよう)、飄(つむじかぜ)のように、一ヶ所に留まらず「フワフワするもの」に用いる。
手ヘンを付けて、使役の意味を付け加え、引力に従って「おちる」のとを意味する。



タイ/ズイ tui2
くずす くずれる おちる <やむ、なやむ><すなお>
<のこす>
1397/12882

<解字(字統・蜻蛉)>
「貴」は、貝を両手で奉げる(臾)形。
阝は、神がのぼり降りする梯子。
神の用いる梯子の前に貝を供えるが、その高さが高すぎて、「崩れ落ちる」「おちる」の意味。


≪意味合いが「おちる」≫


シャ/* xie4 常用漢字
おろす <解く><おちる> おろし
0201/01173
●卸は本字 缷は俗字



シャ/* xie4
【おろす <解く><おちる> おろし】
1049/09210
●卸は本字 缷は俗字



①コウ/* ②コウ/ゴウ ①jiang4 ②xiang2
(くだる)(おりる)(くだす)(おろす)(ふる)(くだる)<くだす><おちる>
0297/02159
●降は正字 夅は古字



トン/* 慣用:タイ
tun4 tui4
<ぬぐ><おちる> あせる さめる(=ざめる) 
<しりぞく>
1181/10729

<解字(蜻蛉)>
「退」は、呪眼が道に施され、そこから進めず退くこと。
衤は、衣ヘン。
衣服の色が退いてします・色が“おちる”の意味。



タ/ダ duo4
【<こわす><こわれる>(おとす)(おろす)おちる(おこたる)】
0501/03796
●堕・墮・墯・?(02089:[土隋]・は同字



①タ/* ②スイ/ズイ ①duo4 ②sui2
<祭りの肉のあまり><おちる><おこたる><王朝の名>
1394/12856
●隓は隋の音符?



①タツ/ズイ ②ツイ/ズイ ③スイ/ズイ 
①dui4 ②zhui4 ③sui4
<くみ:組><中国古代の兵制>(おちる)<みち>
∴部隊:ブタイ
1394/12857・12858
●「墜」参照
 


①スイ/ズイ ②ツイ/* ①sui4 ②zhui4
(みち)<郊外><まわる><おくぶかい><おちる>
1397/12886
●「墜」参照



トウ/* ta1
<土地が低い><おちる、おとす>
0288/02052

 

テン/* dian1
いただき <おちる>
0401/02978
●巓:本字 巔:俗字



①シ/* ②チ/* ①chi2・shi3 ②***
ゆるめる ゆるむ たるむ たゆむ <てばなす><やぶれる><おちる>≪だるみ≫
0440/03237
●弛・?(03244:[施:方→弓])は同字



セイ/サイ ji3
おす(=おしおとす・おしのける) <おちる>
<そこなう><くじく>
0555/04359
 


①ホク/* ②ホウ/* 慣用:バク ①bo2 ②bao4
(やく)<火が激しい><火の音のもえる形容><おちる> はぜる
0824/06873

 

レイ/リョウ ling2
みみなぐさ~(おなもみ:草の名)<香草の名><薬草の名:かんぞう><熟語><おちる、おちぶれる><車の横木>
1105/09702


遺 遺
①②イ/ユイ ①yi2 ②wei4
(わすれる)(すてる)のこす のこる <ぬける><あまる><取り残した物><おちる><もらす>(おくる)<くわわる>
1314/11957・11958

 
飄 飃
ヒョウ/* piao1
つむじかぜ <はやて、疾風><風が吹く>(ひるがえる)<ただよう><おちる><はやい>
1441/13262・13263
「摽」参照
●飄・飃は同字


<総評>
草がおちてくるか、供え物がおちてくるのか、
神獣がおちるのか、丸い物が落ちるのか、
はたまた、雨粒なのか?

微妙な使い分けが難しいようです。

日本国語でも「落ちる」しか出ていない・教えないのは、尤もかもしれません。



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