北沢俊美防衛相、日米で共同開発を進めているミサイルの第三国への輸出を認める方針

2011-06-14 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

ミサイル輸出 国是なし崩しにするな
中日新聞 社説 2011年6月14日
 北沢俊美防衛相はシンガポールでゲーツ米国防長官と会談し、日米で共同開発を進めているミサイルの第三国への輸出を認める方針を伝えた。武器の禁輸方針になぜ風穴を開けようとするのか。
 このミサイルは、飛来する弾道ミサイルを迎撃するミサイル防衛(MD)システムに含まれる海上発射型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」で、一九九九年から日米で共同技術研究を進めてきた。米国と日本が保有するイージス艦から発射するため、第三国への輸出は想定する必要がなかった。
 風向きが怪しくなったのは、二〇〇六年六月、日米交換公文で事前同意のない第三国への供与を禁じた時点である。事前同意さえあれば、武器禁輸の例外扱いとなっている米国を経由して、日本の技術で製造されたミサイルを第三国へ輸出できる余地が生まれた。
 米国はSM3ブロック2Aを地上発射型とする改造を進めている。オバマ米政権は核開発疑惑のあるイランの弾道ミサイルを迎撃するため、東欧にレーダー、ミサイルなどのMDシステムを置き、地上発射型のSM3ブロック2Aを一八年にポーランドへ配備する計画を明らかにしている。
 MDシステムの東欧配備は米軍が武器類を持ち込み、運用する。第三国への輸出は含まれないのに、日本に輸出容認を迫るのは、将来、SM3ブロック2Aを他国に売却する狙いと推測できる。
 一方、日本側の狙いは、かなりはっきりしている。今月二十一日、日米安全保障協議委員会(2プラス2)の開催が見込まれているが、確定していない。沖縄の普天間飛行場移設など日米が合意した案件が軒並み足踏みしているからである。せめて米国が求めるミサイルの第三国移転で正式合意できるならば、2プラス2の開催が確実になるというハラだろう。
 菅直人政権は、昨年十二月閣議決定した「防衛計画の大綱」に武器輸出三原則の緩和を含めようとした。連携を想定していた社民党の反対で先送りされたが、北沢防衛相に至っては一〇年一月、防衛産業が集まった賀詞交歓会で見直しをぶち上げている。
 ミサイルの第三国移転を認めれば、なし崩しのうちに武器輸出が解禁されかねない。ましてや菅政権は末期状態にある。日本は武器輸出三原則を堅持し、一発の弾丸も一丁の銃も輸出してこなかった。その国是を議論らしい議論もないまま転換してはならない。


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