少年事件記録廃棄問題で最高裁が謝罪 「運用適切でなかった」「裁判所全体の問題」責任認める
2022/11/22 19:10
1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件をはじめ、全国各地で重大少年事件の記録が廃棄されていた問題を受け、最高裁の小野寺真也総務局長は22日、参院法務委員会で「最高裁として率直に反省しており、事件に関係する方々を含む国民の皆さまに対し、申し訳なく思う」と謝罪した。
最高裁の小野寺局長は同日、「国民の貴重な財産が破棄された。謝罪も含め見解を聞きたい」と問われ、「当時は適切な運用がされていたとは言いがたく、裁判所全体の問題と考えている」と述べて謝罪した。自民党の加田裕之参院議員(兵庫選挙区)に対する答弁。
最高裁は少年事件記録で、史料的価値の高いものは保存期間の満了後も廃棄せず、事実上の永久保存となる「特別保存」とするよう内規で定めている。連続児童殺傷事件の全記録廃棄は10月20日に判明したが、最高裁は当初、廃棄の是非について「見解を述べるのは差し控える」と言及を避け、経緯が不明であったとしても問題はないとした。
しかし、各地の家裁で社会の耳目を集めた少年事件の記録廃棄が次々と判明。批判が寄せられる中、最高裁は方針を転換。「特別保存」の運用が適切だったかどうかを有識者委員会で検証するとし、連続児童殺傷事件の記録を廃棄した当時の神戸家裁職員から経緯を聞き取る調査も始めた。
国会でも質疑が相次ぎ、今月2日の衆院法務委では最高裁は「裁判所の保有する記録は国民のもの」と述べ、保存の重要性を認めた。また「最高裁は下級裁判所およびその職員を監督する」と定める裁判所法に基づき、事件記録の廃棄や批判を「大変重く受け止めている」と答えていた。(永見将人)
【少年事件記録の廃棄問題】1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件をはじめ、重大な少年事件の記録が全国各地の家庭裁判所で廃棄されていた問題。少年事件の記録は審判の処分決定書に加え、検察や警察による供述調書、医師による精神鑑定書、家裁調査官の報告書など。成人の刑事裁判と異なり少年審判は非公開で、事件記録が失われると審議過程が検証できない。一般的な少年事件の記録は、保存期間が内規で原則「少年が26歳に達するまで」と定められ、それを過ぎると廃棄される。ただし最高裁は通達で、史料的価値の高い記録は永久保存(特別保存)を求めている。
◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
2022/11/11 06:10
最高裁、追い込まれて事件の記録破棄調査 消極姿勢に批判集まり「問題ない」から一転 結果公表は口濁す
神戸連続児童殺傷事件の記録廃棄問題で、最高裁が当初の方針を改め、神戸家裁で全事件記録が廃棄された経緯の調査に乗りだした。廃棄の判明から約3週間。被害者遺族や法曹関係者、国会などの批判は厳しさを増し、追い込まれた格好だ。ただ、調査へとかじを切ったのは、最高裁有識者委員会の委員が求めたからで、調査結果の公表には口を濁す。自ら問題を「重く受け止めた」とするが、主体的な対応とは言いがたい。
最高裁は当初、通達などはないとして、廃棄のいきさつが不明であること自体は「問題がない」と説明。調査の必要性も「当時の職員に聴取しても、あくまで個人の記憶や見解の範囲にとどまる」と否定した。
しかし、10月20日の問題発覚後も全国各地で重要な少年事件記録の廃棄が判明し、批判が集中した。これを受け、最高裁は同25日、事実上の永久保存に当たる「特別保存」の運用について、有識者委で検証する方針を公表。さらに少年事件に限らず、全ての事件記録の廃棄を一時停止するよう全国の裁判所に指示した。
一方、連続児童殺傷事件の記録が捨てられた経緯の調査については、神戸家裁は「有識者委の意見を踏まえて対応したい」という態度を維持した。
同28日には、事件で次男を亡くした土師(はせ)守さん(66)が神戸家裁を訪れ、調査を求める要望書を提出。今月2日には、日本弁護士連合会が会長声明を出し、調査と結果の公表などを求めた。さらに同4日、兵庫県が制定を目指す「犯罪被害者等支援条例」の検討委員会が、調査や被害者遺族への説明を求める要望書の提出を決めた。
この間、国会でも質問が相次いだ。10月27日の参院法務委員会では、最高裁幹部が「各方面から指摘や批判を受けていることは重く受け止めている」と答弁。11月2日の衆院法務委でも「裁判所が保有する記録は国民のもの」と廃棄した記録の重要性を認めた。
重い腰を上げ、記録廃棄の経緯を調べる最高裁。事情は不明だが、当時の神戸家裁職員への聴取は、オンライン(画面上でのやりとり)で行われる。肝心の調査結果は「どのような形で公表するかは有識者委の意見を踏まえる」としており、遺族をはじめ、各方面が求める公表は見通せない。(霍見真一郎)

◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です