【人々の声が政治を変える 反原発行動に考える】中日新聞 社説

2012-07-25 | 政治

人々の声が政治を変える 反原発抗議行動に考える
中日新聞 社説 2012年7月25日
 毎週金曜日の夕方、首相官邸と国会議事堂前は数万人の群衆で埋め尽くされる。原発再稼働に反対する抗議行動。「人々の声」をどう考えたらいいのか。
 小雨が降って、夏とは思えぬほど冷え込んだ七月二十日。霞が関周辺の路上は夕方から人々が集まり始めた。高齢者や母子連れ、働き盛りの若者たち。身に着けたTシャツや小物、手製のプラカードには反原発運動のシンボルである鮮やかな黄色が目立つ。
 午後六時。スピーカーから「再稼働反対」のシュプレヒコールが鳴り響く。開始の合図だった。
■淡々と冷静な女性たち
 抗議行動は四月に数百人で始まった。いま街頭に繰り出す人の波は名古屋、京都、大阪、広島など全国に広がっている。七月十六日、東京・代々木公園で開かれた集会・デモには猛暑の中、十七万人(主催者発表)が集まった。
 膨れ上がる参加者の人数とは対照的に、多くの人々は拍子抜けするほど冷静だ。歩道の石垣に腰を下ろしていた中年の女性が言った。「こういう運動で原発が止まるとは思わない。でも、いま声を上げなきゃと思って」。暗がりの中、黙って掲げた手製の電光式プラカードには「NO NUKES(核はごめんだ)」という文字が光る。
 代々木公園で「原発、いますぐやめろ」というコールが響いた。すると、年配の女性は「“やめろ”って言ったって、そう簡単にやめられるもんじゃないわよ」と独り言のようにつぶやいた。
 スピーカーの声はずっと叫んでいた。だが、彼女たちは激せず、あくまで淡々としている。
 日本で大規模な街頭デモが繰り広げられるのは、一九七〇年の安保反対闘争以来である。首相官邸前に限れば、六〇年の安保闘争以来、ほぼ五十年ぶりになる。どこが違うのか。
■政治の主役は政治家か
 かつてのデモは暴力的な行動を伴った。警察・機動隊の阻止線を突破する。それが目標であり「戦い」だった。
 だが今回は、まったく異なる。官邸周辺を歩き、声を出す。黙ってプラカードを掲げる。白い風船をかざす。風船は新党日本の田中康夫衆院議員が現場で配り始め、シンボルになった。そして午後八時になると整然と帰って行く。
 代々木公園で女の子を連れた母親はこう言った。「私は最近までワーキングプアで、忙しくて声を出す暇もなかった。上のほうで政治やってる人たちは何してるの。市民を中心に考えてほしい。子どもの将来が心配です」
 年配女性は「私たちはもう、どうなってもいいけど、若い人がかわいそう。長いものに巻かれろじゃなくて、個人一人一人が声を出さなければいけない。今日はそう思って来たんです」と応じた。
 官邸や国会議事堂前に集まるのは、こういう人たちである。
 かつて六〇年安保闘争の最中、岸信介首相は「私には“声なき声”が聞こえる」と言って騒然とした国会周辺のデモを無視した。
 いま「声なき声」の人々は声を出し始めた。収束しない福島原発事故の怖さ、今後も長く続く被災者の苦しみ、福島だけでなく首都圏や東北にも広がる放射能汚染。そうした現実を肌で感じて抗議の輪に加わっている。
 人々の街頭行動は原発再稼働だけでなく、政治のあり方をも問うている。政治とは何か。あれこれと考えるより、次の憲法前文を読んだほうが早い。
 「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」
 憲法は国政を「国民の信託による」と記している。だがいつの間にか、人々の間に「政治は政治家や政党がするもの」であるかのような思い込みが広がってしまった。私たち新聞もそうだ。政治面に登場するのは、ほとんどが政治家や政党の話である。
 政治の主役は国民であるはずなのに、代理人にすぎない政治家が主役であるかのような錯覚が広がった。街頭に立つ人々は本末転倒に目を覚まし「再稼働反対」のスローガンに託して、異議申し立てをしているように見える。
■国民の声が届かぬ官邸
 象徴的な場面があった。七月二十日夕、鳩山由紀夫元首相が官邸前に現れ、こうスピーチした。
 「私はかつて官邸の中にいたが、いつか国民の声が届かなくなっていた。これから官房長官に会って、みなさんの声を伝えます」
 人気取りと批判するのはやさしい。だが、人々が元首相を街頭に引っ張り出したといえないか。主役が代理人を使う。それは本来、政治のあるべき姿でもある。声が届けば、政治は変わる。
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鳩山元首相ブレまくり~!政権批判を封印してどこへ行く…
zakzak2012.07.24
 野田佳彦首相への敵愾(てきがい)心をむき出しに離党も辞さぬ構えを見せていた民主党の鳩山由紀夫元首相が早くもブレ始めた。もはや党内の信望はすっかり失っており、首相の代表再選を阻むのは困難な情勢。離党して新党結成すれば落選がますます現実味を帯びるとあって、すっかり袋小路に迷い込んだようだ。
 24日朝の都内のホテル。大畠章宏元国土交通相は朝がゆをすすりながら鳩山氏を諭した。
 「鳩山さんが民主党の船長だった時もあった。沈みゆく船なんて言葉もあるが、鳩山さんが船から出るのは好ましくないんじゃないですか…」
 同席した中山義活元経産政務官もうなずいた。二人とも鳩山氏の腹心だったが、昨年6月の菅直人内閣への不信任決議案への鳩山氏の対応に反発し、たもとを分かった。今は鹿野道彦前農林水産相のグループに属するが、鳩山氏の暴走を見るに見かねての会食だった。
 そんな旧友の思いも今の鳩山氏には伝わらない。「既得権と戦うために民主党を作った。そういう民主党を愛する気持ちは変わらない」と強がった。
 とはいえ、薬は多少効いたようにみえる。鳩山氏は昼のグループ会合では政権批判を封印。「首相在任中に統率力が必要ではなかったかと反省している」と殊勝な言葉も漏らした。
 18日に党代表選で首相の対抗馬を擁立し、離党も辞さない構えを示し、20日には首相官邸前の抗議デモに参加した鳩山氏。一部側近はなお「離党の時は一気に動く」と息巻くが、展望のない無軌道な動きにより自縄自縛に陥っている。(斎藤太郎)
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毎週金曜日夜の官邸前・脱原発デモ「あじさい革命」 逮捕者が報じられない意味 2012-07-21 | 原発/政治 


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