なぜ小沢でなく、橋下なのか/小沢元代表に対する検察の対応は重大な人権侵害/政治生命を傷つけられた

2012-05-22 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

日本の軸は移った なぜ小沢でなく、橋下なのか--この時代の読み方 好きでも嫌いでも「次の総理」橋下徹 世の中はこうやって変わっていく
現代ビジネス2012年05月21日(月)週刊現代
 小沢一郎から橋下徹へ。時代は変わろうとしている。
 かつて、日本社会を変えると期待された「破壊者」は小沢氏だった。しかし、度重なる党内抗争と自身の金銭スキャンダルの裁判を続けるうち、メッキははがれ、小沢神話は崩壊した。
 古希にさしかかった老残の小沢氏に、いまさら期待を寄せる人々はそれほど多くない。だが、彼がこの20年で結局できなかった「日本改革」という大事業を、もしかしたらやってくれるかもしれない・・・・・・そう期待を集め、支持を急拡大させているのが、橋下徹・大阪市長だ。
 政党は変遷すれども、この20年の政界は常に「小沢か、非小沢か」という構図で動いてきた。しかし、それがもうすぐ決定的に変わる。「橋下か、非橋下か」。政界関係者はもちろん、産業界も官僚も国民も、良くも悪くも、橋下氏を中心に回る時代に備えなければならない。
「日本には、まだまだ潜在的な力、ポテンシャルがあると思う。しかし今の日本のシステムが、潜在的な力を引き出せないシステムになっている。
 明治維新以来、日本がここまで近代国家として成長してきたが、いろんな社会システムが古いものになっている。政治もマヒ状態。制度を作り直さないといけない」
 橋下徹大阪市長を中心に吹き荒れている風は、いよいよ強さを増している。
 消費税の増税に原発の再稼働と、民主党・野田政権は迷走を続け、支持率も急速に低下中(発足後最低の26・4%=共同通信)。橋下氏はこの二つの問題で民主党政権を公然と批判し、政府とは逆に支持を急拡大している。
 就任以来、国民との対話を放棄し、定期的な会見を拒否している野田首相に対し、橋下氏は頻繁に記者会見を行い、言い足りない部分はツイッターで呟き続ける。ほぼ毎日、自分の言葉で市政から国政までの見解をマシンガンのように繰り出す同氏の発信力は、かつてどんな政治家も持ち得なかったものだ。
 橋下氏の発言には「暴言」の類も多い。しかしその一方で、しがらみに囚われた従来の政治家が言えないことを、ズバズバと言い切る姿に喝采を送る人々がいる。
「ハシモトで時代が変わっていく」
 彼が好きでも嫌いでも、否応なくそんな変化の兆しを誰もが感じ始めている。今回は、メディアで詳細が報じられることのない、橋下氏の発言から、その兆しを読み取ってみたい。いったい何が、どう変わろうとしているのか。
■霞が関に痛い目を
 たとえば、原発問題だ。
「(大飯原発の)こんな再稼働、絶対に許しちゃいけない。でも、僕ら権限ないですから、もしストップかけるんだったら、そら国民の皆さんが民主党政権を倒すしかない。こんな統治なんか、絶対に許しちゃいけないです。国民はね」
「次の選挙のときに、民主党政権がこれでやるって言うんであれば、民主党政権には替わってもらう。替わってもらわなきゃいけない。こんなの民主党政権に統治を任せていられません」
 橋下氏は、原発の再稼働自体を完全に否定しているわけではない。だが、「電力が足りないなら仕方ないじゃない」という物分かりの良い世論に付けこみ、安全確認の手続きを放棄して再稼働に驀進する野田政権に、敢然と異を唱える。
「政局よりも何よりもね、国会議員、もうちょっと目を覚ましてくれって言うんですよ。こんな手続きで国民が納得するのか。こんな手続きで国民を納得させようとするのか。われわれはね、そんなレベルじゃないんです、国民も国家も」
「まず、(原子力安全委員長ら)専門家の意見を表に出して聞かせてくださいよ。なんで、表に出せないかですよね。それは、出したらみんなにさんざん突っ込みを入れられるから。だから出さずに封印して進めている」
 さらに、原発再稼働が〝ブラックボックス〟化した議論の中で進む原因は、政権に加え、霞が関の官僚機構に問題があると言い放つ。
「暫定的な安全基準なんて、あんなもので国民が騙されると思っているのか」
「堂々と『安全性は不確かだが、電力が足りないからやる』と言ってくれたほうが、説明の仕方いかんではそれに乗っかることもあり得る。だが、国民をバカにしたような進め方をされることには断固反対。こういうやり方をしたらえらいことになると、霞が関は痛い目にあわせなければならない」
 原発の再稼働も消費税の増税も、背後にいるのは経産省や財務省。橋下氏ならずとも、「バカにするな」と誰もが考えている。だが、民主党も従来の首長も、正面からこの「システム」に、ケンカを売ろうとしなかった。橋下氏は、そこに楔を打ち込み「変化」をもたらそうとしている。
■敵は名指しで叩き潰す
 彼は民主党政権の現状を、「統治がない」という言葉で表現する。では、どうやってその統治を取り戻すのか。そこに「首相公選制」導入の必要性があるという。
「日本の社会システムは、一部の既得権益を守るためのシステムになっていて、身動きが取れなくなっている。これを変えようと思うと、相当な政治的リーダーシップが必要だ」
「リーダーシップを発揮するにはどうするか。そこでは『直接、国民から票を得た』というところが重要」
「直接選挙でリーダーを選ぶことで、古い、アカやサビがたくさん付いた社会システムを作り直す時だと思う」 仮に首相公選制が実現した場合、橋下氏自身がその最初の公選首相になる---という野望を秘めているのかもしれないが、発言の内容は政治不信をズバリ代弁して痛快だ。
 そして、時代と政治が変わっていくならば、それぞれの国民にも変化に対応する姿勢が求められる。既存システムの破壊を目指す一方で、国民に「自立」「自己責任」「自助努力」を求めるのも橋下流である。
「まず、国民が自分たちでリーダーを選んだっていう責任を取ってもらう。世論調査の数字が低くなって、『もう嫌だ』と言っても許されない。1回選んでおいて『やっぱり違う』と消耗品のように扱うのも許されない。選んだ以上は一定の期間、国家運営の権限を与える」
 首相が1年単位でコロコロと変わる。この現象が、国際社会における日本の地位と、国力の低下に繋がってきたことは否めない。だから、きちんと民主主義の手続きを踏んだ上で、任期いっぱいまで責任を果たす力を持つ首相を選び、そのために力を尽くせる権限を与えるべし・・・・・・。
 こうした「かつてない強力なリーダー必要論」を掲げる故に、「独裁主義」という根強い批判もある。これに対しては、「一歩間違えれば独裁になる」と自ら認めたうえで、「チェックする機関やシステムが重要だ。議会やメディアがチェック機能を果たせばいい」
 とする。「十分、承知していますよ。マスコミの皆さんも遠慮なく批判をしてください」というわけだ。
 ただ、そう言ってバランスを取りつつも、マスコミや各界の評論家・学者らに批判されると、これまでの政治家にはない手法と過激な表現で、猛反撃するのも橋下氏の特徴である。
 象徴的なのが、ツイッターで漫画家の小林よしのり氏と、京都大学大学院准教授で元経産官僚の中野剛志氏に向けて放った悪口雑言だ。
「中野剛志もしょうもない思い上がり識者だったか。残念だ。だいたい、年下のくせに面識のない俺を呼び捨てにすんじゃねえよ」
「口ばっかりであーでもない、こーでもないと言うだけでなく、何か一つでも実行してみろっていうの」
「小林よしのりは、税金で飯は食っていないので中野剛志よりも多少はましかはしらんが、ようは口だけで、何もやっていない奴」
「小林よしのりももう少しまじめに勉強しろよな。大阪都構想を、大阪を都にすることだって。やれやれ。バカか。大阪府と市の行政機構を変えるという話なんだよ」
 これは、雑誌で中野・小林両氏が対談し、橋下氏を批判したことに対するツイート(呟き)だ。それ以前には、「自分が一番。他人はバカだという識者が日本には多過ぎる」
「おかんに教わったことを思い出す。他人をバカだと言う本人が一番バカだと。そう言えば僕も週刊誌にバカの連呼をしたな~」
 などと、自己反省も兼ねた冷静な呟きもしていたのだが、どうにも怒りを抑えられなかったようだ。
 攻撃されたら倍返し。しかもそれを、自ら実行する。70万人以上のフォロワー(閲覧者)がいるツイッターを用い、「名指し」で徹底的に〝敵〟を叩く。是非は別として、そんな政治家は今までいなかった。
「何なんでしょ、この勘違い学者は。福岡政行氏。この人、おはじきか何かを使って選挙の出口調査をやったってくらいの実績しかない人」
「文春や新潮のように、報道の自由、取材の自由を振りかざし、選挙期間に入ってこちらが反論できないことを良い事に、非人間的な情報開示を繰り返し、どこまで何を報道すべきなのか、それによってどのような影響があるのかなど報道価値を一切考慮しないバカ週刊誌」
■小沢よりも強烈
 当然ながら、こうした橋下氏のフリーダムな言動に、疑問を投げかけ反発する声も尽きない。
「橋下氏は初めに大風呂敷を広げておき、相手が反撃すると話を小さくさせ、いつの間にか問題をすり替えるという手法をよく使います。たとえば大阪府知事になった時、『霞が関をぶっ壊す』と言っていたのに、霞が関が予想より強敵だったからか、いつの間にか大阪府市統合、大阪都構想が目的になった。そして今度は、都構想を認めない奴は敵だ、と話が変わる。
 原発も、自分から『大飯原発を止めろ』と言っておきながら、今になって『府民にも応分の負担をしてもらう』『その痛みを府民は受け入れる覚悟はあるのか』と、今度は責任を府民に押し付けようとしている。たちの悪い酔っ払いのような手口です」(ジャーナリストの大谷昭宏氏)
 政治評論家の有馬晴海氏も、その政治交渉力の高さを認めつつ、こう指摘する。
「橋下氏の手法は、著書にもありますが、いわば〝吹っかけ〟。たとえば歩いて誰かとぶつかる。狙いは慰謝料30万円でも、まずは『1億円払え』と言う。それはありえないと相手が反論したら、では5000万円でいいと。そうして駆け引きすれば最終的に30万は取れるというものです。グレーな物事を、とにかく白にしてしまえという弁護士の仕事だったら、それでいいのかもしれませんが・・・・・・」
 しかし、それこそが、橋下氏の真骨頂だという意見もある。
「橋下氏はいつも結論を先に言ってしまうので乱暴に聞こえますが、発言するまでに彼の頭の中では思考回路が出来上がっている。この言葉の延長線上はこうなる、ということまで分かっているから、最初に思い切った発言をしておき、周囲の反応を見てそれを補強し、理論付けする作業を繰り返しているのです。
 発言する際、彼の中にはすでに確信があるから、淀みもない。スタンスが決まっているから、反論されてもすぐに切り返せる。そして重要なのは、それらはすべて彼のホンネなのです」(政治評論家・屋山太郎氏)
 公の発言でもツイッター上でも、橋下氏の発言は、感情を剥き出しにしたまさにホンネだ。だからこそ、組織としての建て前にこだわり、ホンネを叫ばない者には痛烈な一打となる。
 公式の会見の場で、「自分の言葉で話してください」「あなたの会社の幹部は未来のことなど考えない。われわれで考えましょう」と、罵られつつも諭された、大新聞の記者たちもいる。マスコミもまた、変化を求められているのだ。
 橋下氏を支持する声は、今日も増え続けている。同時に、毛嫌いする声も増大中だ。好きでも嫌いでも、橋下氏のように突出した存在が、日本社会のありように一石を投じているのは間違いない。
「一度はこの男に賭けてみたい」
 そんな期待と不安が、沈滞ムードに沈む日本を揺り動かし、いま大きく変えつつある。
「週刊現代」2012年5月19日号より
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<来栖の独白2012/5/22 Tue.>
>裁判
>古希にさしかかった老残の小沢氏
 秘書逮捕に始まる推移の中で私が哀しみを深くしたものは、これである。いわれのない嫌疑により、小沢一郎という政治家、総理に最も近い位置にいた政治家が足を取られた。---小沢氏自身は総理の座など「スケベ根性」と気にもかけないが---「年齢は待ってくれない」、私が最も恐れたことだ。
 稀有の政治家を廃した罪責を当局とメディアは見つめねばならない。それでなくては、この国は浮かび上がれない。
 表層の現象に総国民の目を向けさせ、肝心のことから関心を逸らさせようとする、日毎のメディアのキャンペーン。昨日は「金環日食」、本日は「スカイツリー」である。束の間の現象に国民の眼を奪う。奪われる国民も「衆愚」の誹りを免れないが、60余年前も「大本営」に誤導、煽動され、先の戦争は始まった。
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特集ワイド:「小沢元代表は推定有罪」の罪
毎日新聞 2012年04月27日 東京夕刊
 資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)で検察審査会の議決により強制起訴された民主党の小沢一郎元代表(69)に下された判決は無罪。剛腕、壊し屋などダーティーなイメージがある政界実力者なだけに、検察も、民主党も、そしてメディアも、「推定有罪」で小沢元代表を遇してはこなかったか。【瀬尾忠義】
 ■検察は
 ◇制度悪用の疑念ぬぐえず−−木谷明さん(元裁判官)
 裁判の過程で、小沢元代表の元秘書の衆院議員、石川知裕被告への再聴取で、田代政弘検事が虚偽の捜査報告書を作成し、検察審査会に提出したことが明らかになっている。つまり検察は自らの手を汚さないで、検察審に元代表を強制起訴させたと見られても仕方がない事案だ。検察審は、検察が提出した捜査報告書をウソだとは思わない。もし、検察審が起訴議決すると検察側が見越していたとするならば悪質で、制度を悪用したと言える。無罪判決は当然のことだろう。
 元代表に対する検察の対応は重大な人権侵害だ。検察は自らのストーリーに沿った事実とは違う調書を作成することに抵抗感がなくなっているように感じられる。地検の取り調べや強制起訴で、元代表は首相になるチャンスを失ったのかもしれず、政治生命を傷つけられたと言える。
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石原慎太郎氏「中央集権の打破こそ」/小沢一郎氏「霞ヶ関で集中している権限と財源を国民の手に」 2012-05-21 | 政治 
石原都知事の「小沢氏否定」発言に、大村愛知県知事反発「政治活動、大いにやられたらいい。独りぼっちで」 2012-05-19 | 政治 
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消費税の政治学 田中良紹の「国会探検」 2012-05-20 | 政治 
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小沢一郎が語った「原発/衆愚の中からは衆愚しか/マスコミは日本人の悪いところの典型」 〈悪党①〉 2011-09-19 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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