核燃基地六ケ所村 ウラン節約MOX燃料 毒性強いプルトニウム使用/プルサーマル発電 通常の原発に導入

2012-03-04 | 政治

 ウラン節約MOX燃料 毒性強いプルトニウム使用 核基地六ケ所村 
中日新聞 特 報 2012/3/3Sat.
 青森県六ケ所村の核燃料サイクル基地の一角に建設中の混合酸化物燃料(MOX燃料)工場。MOX燃料は、ウラン資源の有効利用を目的としたプルサーマル発電で使われる。毒性の強いプルトニウムを使用することなどから危険性を指摘する声も根強い。国が核燃料サイクルの重要な柱と位置付けるMOX燃料とプルサーマル発電とは、いったいどういうものなのか。(上田千秋)
 六ケ所村にあるMOX燃料工場の建設現場。周辺には、使用済み核燃料再処理工場など核燃料サイクルの拠点施設が立ち並ぶ。MOX燃料工場は2010年10月に着工し、総工費は約1900億円。約7200平方メートルの敷地に地下2階、地上3階建ての建物が16年3月に完成予定だったが、工事は地下部分を掘り下げた段階でストップしている。
■春に工事再開
 もともと冬季は積雪の影響で工事をしておらず、その最中に東日本大震災が発生。作業員も重機も被災地へ回った。核燃料サイクル基地を運営する日本原燃は「春ごろから工事を再開したいと考えている」(東京事務所広報グループの伊藤滋宏部長)と説明する。
 MOXとは、「Mixed Oxide(混合酸化物)」の略。原発で発電した後に生み出される使用済み核燃料には、燃える際に生成されたプルトニウムと燃え残りのウランが含まれている。このプルトニウムを取り出してウランと混ぜて新たな燃料に加工する。つまり、使用済み核燃料の再利用だ。
 まず、再処理工場で、使用済み核燃料を溶かすなどして、放射性廃液などを分離。ウランとプルトニウムを取り出し、粉末の「ウラン・プルトニウム混合酸化物製品(MOX粉末)」を作る。
 これをMOX燃料工場に運び、ウラン粉末と混ぜてMOX粉末の割合を全体の4~9%に調整する。1700度以上の高温で焼き固めるなどして小さな円筒形のペレットに加工。それを組み立てると長さ4メートルほどの核燃料集合体が出来上がる。
■年間処理800㌧
 再処理工場は現在、最終段階の試験運転に入る前にトラブルで作業は中断している。再処理工場が本格稼働すれば、年間約800トンの使用済み核燃料の処理が可能になる。そこから約8トンのプルトニウムを取り出すことができる。MOX燃料工場では、原発13~15基分に当たる約130トンHM(ヘビーメタル)のMOX燃料を製造できる。HMとはウランとプルトニウムの質量を表す単位で、一般の重量に換算すると約147トンに相当する。
■10万倍の強さ
 プルトニウムはウランの10万倍とされる強いアルファ線を発する。肺などに入ると長期間にわたって内部被ばくするため、安全対策にも細心の注意を払うという。建物は原発と同じ耐震強度で設計。すべての工程は、「グローブボックス」と呼ばれる密閉された地下の空間の中で進められる。自動運転と遠隔操作が基本だが、どうしても機械ではできない細かな作業や検査のみ、ボックスの外からグローブ(手袋)に手を入れて行う。
 伊藤部長は「気圧を外部より低くするなどして、気密性は完全に保てる。排気も直列に四つつなげたフィルターを通すようにし、有害物質は外に出ない構造になっている」と話す。
 通常の原発で使われる核燃料(ウラン燃料)は、95~97%を燃えない「ウラン238」、3~5%を燃える「ウラン235」が占める。一方のMOX燃料は、燃えないものを含めたプルトニウムの割合が4~9%。大ざっぱにとらえれば、ウラン235を反応しやすいプルトニウムに置き換えたものと言える。
<プルサーマル発電 通常の原発に導入>
 通常の原発の原子炉でも常にプルトニウムは生成されている。中性子を吸収したウラン238の2%がプルトニウムに変化する。発電量の7割はウラン、3割はプルトニウムによるもので、「プルサーマルは決して新しい技術ではない。発電に伴ってプルトニウムができるか、最初から入れるかの違い」(伊藤部長)と強調する。
 MOX燃料は、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)でも使われていたが、トラブルが相次いで停止中。それを通常の原発でも使おうというのがプルサーマル発電だ。「プルトニウムをサーマルリアクター(軽水炉)で利用する」という意味の造語で、日本では2009年に玄海原発(佐賀県玄海町)3号機で初めて本格導入された。伊方原発(愛媛県伊方町)3号機、高浜原発(福井県高浜町)3号機のほか、水素爆発を起こした福島第一原発3号機でも実施されていた。
■世界初の計画
 建設中の大間原発(青森県大間町)は、世界初のMOX燃料のみで運転する新型炉となる計画だ。
 核燃料は、毎年一定の割合を入れ替えている。原子力安全委員会は0995年、ウラン燃料用の原子炉で「3分の1程度をMOX燃料としても問題はない」との見解を示した。玄海や伊方などでは徐々にMOX燃料に入れ替え、おおむね4年で全体の3分の1となるよう進めている。
 国がMOX燃料とプルサーマル発電を推進してきた理由は何か。
 一つは、「ウラン資源は有限で、いずれは枯渇する」(伊藤部長)という考え方からくるプルトニウムの有効利用、つまり節約だ。日本はウランをすべて輸入に頼っており、貴重な資源。ただ、MOX燃料に加工する方がコストが割高になるとの指摘もある。
■交際公約順守
 もう一つは、国際公約を順守するという側面もある。
 内閣府が昨年9月に公表したデータでは、10年末の段階で日本が国内外で管理しているプルトニウムは約45トンに上る。日本は核拡散防止の観点から「(核兵器に転用できる)プルトニウムを必要以上に持たない」と宣言しており、プルトニウムを処理して減らすことを迫られている。
 プルサーマル発電は、その危険性がたびたび問題視されてきた。MOX燃料はウラン燃料に比べて融点(溶け出す温度)が低いことに加え、エネルギー量の多い中性子が増えるため、核分裂を止める制御棒の効きも悪いとされる。ただ、電力各社が公表している資料などでは、ウラン燃料の融点が約2800度なのに対し、MOX燃料は約2730度とそれほど変わらず、制御棒の効き目もほとんど差はないとしている。
 現在、玄海など3つの原発で使われているMOX燃料は、日本の原発から出た使用済み核燃料の再処理を委託したフランスから燃料集合体の形で返還されたものだ。「MOX燃料加工技術の確立は、原発を稼働させている国の責任として不可欠なもの」とある原子力関係者は語る。プルサーマルをやらないとしたら、プルトニウムをどう処理するのかといった問題も出てくる。
<デスクメモ>
 原発では、「効率」という言葉が重要な意味を持つ。電力会社の億単位の利益に直結するからだ。プルサーマルも有効利用の発想から出てきた技術だ。世界で40年以上の実績があるというが、MOX燃料工場はフランスと英国、茨城県東海村の3カ所にしかない。これは、何を意味するのか。(国)
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