民主党、衆院選政権公約

2009-07-28 | 政治

新S 編集局から
朝日新聞 民主党が衆院選マニフェストを発表しました。実行時期や予算額を示した「工程表」もつけ、政権奪取をにらんで、地に足のついたものにしようという意欲が見えます。しかし、肝心の財源にあいまいな面があり、攻守を替えて、自民、公明両党から「ばらまき」批判を受けそうです。多面にわたって点検しました。エコの追い風に乗るトヨタが「ヴィッツ」クラスのコンパクトカーにもハイブリッド車を投入する計画です。1面、経済面で特報しました。(さ)
日本経済新聞 民主党は27日、衆院選のマニフェスト(政権公約)を発表しました。中学卒業まで1人当たり月2万6000円を支給する「子ども手当」の新設や高速道路の段階的無料化など、“生活支援政党”色を前面に打ち出す内容となっています。ただ、物足りなさも残ります。同じ日、米国ではオバマ大統領が初の「米中戦略・経済対話」の開会式で演説し、米中が21世紀の責任国家として世界をリードしていく姿勢を強調。国際秩序が大きく変わりつつあることを印象づけました。日本が21世紀に生き残るための成長戦略。政権政党にはこの視点が欠かせません。(井)
読売新聞
 民主党の衆院選の政権公約が27日発表されました。都内のホテルで開かれた鳩山代表の発表会見には約300人の報道陣が押し寄せたそうです。政権交代の可能性が高まっているからでしょうか、民主党公約への関心の高さがうかがえます。公約の中身は良いものもあれば、バラマキ的なものもあり、財源があいまいな点もあります。民主党公約のポイントを紹介し、問題点や課題を指摘する紙面を1面から展開しました。じっくりと読んでください。(尾)
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春秋(7/28)
 「いままでで一番長い自殺の書き置き」。対立政党の公約内容をとことん酷評する。一方で自らの政権公約作りにほぼ1年を費やす。何を訴えれば、有権者の関心をつかめるのか。綿密かつ入念な準備が選挙で勝利を呼び込む秘訣とか。
▼日本の話ではない。10年以上にわたり保守党政権を率いた英国のサッチャー元首相だ。「マニフェストが英国総選挙で極めて重要なことが、外国の人々の目にはいささか奇妙に映るようだ」と本紙掲載の回顧録にある。議会制民主主義で日本の先輩格の英国では、19世紀から選挙にマニフェストが使われたという。
▼日本では「宣言」という訳語がかつて主流だった。代表例は「共産党宣言」だろう。政権公約の意味で市民権を得たのは2003年、衆院選で民主党が発表して以来だ。ただ発音の力点はフェ。マに力点を置く人が多いが、これだと「明白な」という意味の綴(つづ)りの違う形容詞になる。中身が明白ならそれもよしか。
▼表紙に「政権交代。」の赤い太文字と鳩山由紀夫代表の顔写真。民主党がマニフェストを公表した。グラフも駆使した20ページ強の小冊子だ。内容に物足りなさも感じるが、大切なのは量より質。実現可能性だ。自民党と早く比較したいものだが、くれぐれも「もっとも長い遺書」などと酷評されないように願いたい。

日経新聞 社説 政権狙う民主党公約への期待と疑問(7/28)
 民主党が27日、衆院選のマニフェスト(政権公約)を発表した。予算の全面組み替えや無駄の排除を柱とする「5つの約束」を掲げ、政権交代への意欲が伝わってくる。一方、個別政策には、ばらまきの要素を帯びたものも多く、財源や負担増の議論を避けた印象がぬぐえない。
 鳩山由紀夫代表は同日の記者会見で「明治以来の官僚任せから国民が主役の政治をつくり出していかねばならない」と述べ、政権交代の必要性を改めて強調した。
官僚主導の打破目指す
 政権公約は「政権構想」として(1)政府に大臣、副大臣、政務官など国会議員約100人を配置(2)「閣僚委員会」の活用で政治家自らが調整し、事務次官会議は廃止(3)首相直属の「国家戦略局」を設置し、国家ビジョンや予算の骨格を決める――などを打ち出した。
 有権者の負託を受けた国会議員が政策決定でより主体的な役割を果たす試みは評価できる。ただ国家公務員制度の改革では天下りの全面禁止、総人件費の2割削減など官僚組織の強い抵抗が予想される。実現への道筋を知りたい。
 個別の政策では国民生活の立て直しに重点を置いた。2010年度7.1兆円、13年度に16.8兆円を最優先の政策として実施する。
 具体的には1人年31.2万円(10年度は半額)の子ども手当を中学卒業まで支給し、公立高校を実質無償化する助成をする。ガソリン税などの暫定税率を即時廃止し、高速道路を原則無料化する。11年度からの農家に対する戸別所得補償、医師不足の解消策なども盛り込んだ。
 子どもを持つ親への支援は少子化の緩和につながり、ガソリン減税は車での移動が欠かせない地方の家計の助けになる。工程表で優先順位を明確にしたのは、有権者の理解を深めるのに役立つ。
 多くの疑問も浮かぶ。第一に日本経済の地力を高めて配分の元手となるパイを増やす成長戦略をどうするか。「世界の中の日本経済」に対する視点も欠けている。
 ばらまきの典型例が農業だ。戸別所得補償で農業を再生し、食料自給率を高めるというが、旧来のコスト構造を変えずに日本の農業の競争力は向上するだろうか。自由貿易協定(FTA)の締結推進も掲げたが、その際は農産物の市場開放問題も避けられない。規制改革や税制改革を含め、経済活性化策は力不足だ。
 郵政民営化の見直しも懸念材料の一つだ。小泉政権の改革路線に背を向ける意図があろうが、「官から民へ」の流れを逆戻りさせるのでは、民主党が主張する公益法人の整理などの路線と相いれない。
 地球温暖化対策では一定の評価ができる。20年までに温暖化ガスの1990年比25%削減を目指し、排出量市場の創設や地球温暖化対策税の導入を検討する。環境分野を戦略的に伸ばす発想は正しいが、高速道路の無料化とは矛盾しないのか。
 もう一つの疑問は財源確保と将来の財政をどう安定させるかの問題だ。政策の財源として、民主党は無駄な歳出や租税特別措置の削減・廃止や特別会計の「埋蔵金」の活用を挙げるが、具体的に何を削減するかは明確にしていない。
 詳細は政権獲得後に外部有識者を交えた「行政刷新会議」で詰めるという。当面は財源不足を国債の増発で賄う事態も想定される。利益団体や各省庁の抵抗をはねのけて予算を削減できるかどうかも不透明だ。
健全化の道筋見えず
 政権公約は消費税率引き上げに全く言及せず、鳩山代表は議論の必要性は認めながらも「4年は引き上げない」と述べた。先送り姿勢は感心できない。民主党は消費税を財源とする最低保障年金の導入など、年金改革法案を13年までに成立させるという。年金だけでなく、全体の社会保障制度をどう考えるのか、もう少し明確な説明がほしい。
 国・地方で長期債務が国内総生産(GDP)の1.7倍に及ぶ財政の健全化も具体性に乏しい。足元の景気や税収の動向は不透明だとしても、健全化の道筋をきちんと示すのが、政権を狙う政党の責務だろう。財政規律をあいまいにすれば、市場も日本の財政に不信感を抱く。
 政権公約の検討では、外交や安全保障政策が後回しになった面は否めない。「緊密で対等な日米同盟関係をつくる」「世界の平和と繁栄を実現する」といった抽象的な言葉が並び、インド洋での海上自衛隊による給油活動への今後の対応などについては触れていない。
 政権の継続を訴える自民党の公約作りは大きく遅れている。各党が主要課題への明確な立場を示し、政策論争を早く加速させてほしい。


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