「小沢一郎を消せ」と命じた本当の黒幕は誰か 鳥越俊太郎×長谷川幸洋 週刊ポスト2012.7.13号

2012-07-02 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

「小沢一郎を消せ」と命じた本当の黒幕は誰か 鳥越俊太郎×長谷川幸洋
週刊ポスト2012.7.13号(2012/7/2 Mon. 発売)
 国際謀略から闇献金、果ては家庭問題まで、徹底した執拗な小沢バッシングは20年に及ぶが、いずれも空振りに終わり、政治家・小沢一郎はまだ生きている。それだけでも稀有な存在だが、なぜ小沢氏だけがこれほどまでに狙われるのか。20年前から「この男を見続ける」と注目し、ウォッチしてきた鳥越俊太郎氏と、一線を画して小沢氏の政治手法に批判的な立場を取る長谷川幸洋氏は、しかし「小沢叩きの異様さと黒幕」で意見が一致した。
検察が作り上げた”疑惑”
鳥越 私が小沢一郎という政治家に注目したのは20年以上前、たしか官房副長官だった頃で、自分の番組『ザ・スクープ』で直撃取材したことがある。47歳で自民党幹事長になり、私は日本を動かす政治家としての存在感を感じ、番組で、「この男をこれからも見続けていきます」と宣言しました。その通り、彼は政治の節目節目で必ず大きな役割を演じ続けてきたけど、こんな政治家は過去にはいなかったし、アメリカや諸外国の政治家を見渡しても珍しい。
長谷川 私は小沢氏に会ったことはないし、鳥越さんほど長く注目してきたわけではありません。私が注目したのは西松建設事件や陸山会事件そのものより、むしろマスコミの異常ともいえる小沢バッシングからでした。一方、それでも政治の中心に居続ける小沢氏のタフさには正直、驚きます。それが小沢神話につながっているのかもしれません。
鳥越 私も報道は常軌を逸していると感じました。
長谷川 秘密の捜査であるはずなのにこれでもか、と毎日のように小沢批判記事が出た。明らかにネタ元は検察です。マスコミがあそこまで情報を当局に依存することも異常だし、今となってみると、捜査報告書はデタラメ、西松建設からの違法献金は訴因からも外れ、陸山会事件では、どうでもいいような「期ズレ」が争点だった。はっきり言えば検察がデッチ上げたような事件だったと思います。
鳥越 異様さの象徴といえるのが、ゼネコンへの一斉家宅捜索でした(10年1月)。検察は胆沢ダム建設で「天の声」があり、その見返りとして小沢氏にカネが渡ったというストーリーを描き、大手ゼネコンにも一斉捜索をかけた。テレビも新聞もその様子を大きく報じたが、その後どうなったかの報道は一切ない。何も出ないまま立ち消えになりました。しかし国民には”大捜査を受ける小沢”というイメージだけが植え付けられて残る。
 長谷川さんが指摘されたように、西松事件はおろか、微罪に過ぎない陸山会事件ですら、検察は2回も不起訴決定をした。つまり何も犯罪行為は認められなかったわけです。それと国民が受けたイメージはあまりにも違う。
長谷川 検察審査会が小沢氏を「起訴相当」と議決する根拠のひとつになった田代政弘・検事の「捜査報告書」は完全なデタラメ。特捜部長に宛てた副部長の報告書も佐久間達哉・前特捜部長が自分で書いていた、と報じられた。それに小川敏夫・前法相によれば、田代報告書にも文体に不統一な点があって、実は佐久間部長の手が入っていた可能性がある。こうなるともう検察による重大な犯罪です。本来なら大阪の郵便不正事件で証拠を捏造して実刑判決を受けた前田恒彦・元検事より罪刑が重くなる可能性がある行為です。
鳥越 そもそも検審に対して検察が説明すべきは、なぜ自分たちが不起訴にしたのかという理由でしょう。それなのに逆に「小沢はこんなに悪い奴だ」と印象付ける報告書を作った。これを検察の内部処分で済ますことは許されない。
官僚が警戒する「危険人物」
鳥越 検察が事件を作り上げたのは「小沢だから」という面があると思います。
 93年に自民党を割った小沢氏は、わずか2日で新生党を結成して細川政権を立ち上げ、自民党を野党に転落させてしまった。そういう政治勘を恐れる者は少なくない。もし彼が権力の座に就けば、これまでいい加減な事をしてきた検察、司法にも手を突っ込んでくるかもしれない。そういう危機感から始まっているのかもしれません。
長谷川 同感ですが、少し違う点も指摘したい。ずばり言って、小沢氏は「霞が関」の虎の尾を踏んだのではないか。そこには「暗黒捜査」を続けてきた法務・検察も含まれるでしょうが、本質的に小沢氏は霞が関にとって危険人物だった。
 93年に上梓した『日本改造計画』は、今読んでも色褪せないことが書いてある。まず官邸機能の強化や、政府と与党の一元化など、政策決定プロセスをがらりと変えようとしていた。さらに地域主権を主張し、地方分権基本法を提唱している。
鳥越 「官から政へ」という小沢氏の理念はその頃から変わっていないし、民主党政権になってから事務次官会議を廃止するなど、一部はその方向で動いた。今はそういう政権の姿ではなくなってしまったが。
長谷川 官僚がそれを絶対に許さないからです。
 これは堺屋太一さんに教えてもらった話ですが、彼は通産官僚として70年の大阪万博を推進した。それが省内から猛烈な反発を受け、省の部屋に閉じ込められたこともあった。なぜか。霞が関にとって、もっとも重要なのは東京一極集中であり、中央集権体制の維持だからです。60年代というのは、そうした官僚の悲願が成就された時代で、その中で「大阪万博」などもっての外だった、と。
 小沢氏は93年の時点で官僚システムを根本的に変えようと主張していた。霞が関にとっては前に立ちはだかった最初の力ある政治家だったのでしょう。小沢氏が「中央集権を壊す可能性がある脅威」と映ったのは間違いない。実は、霞が関には世間にはよく知られていない最高レベルの秘密会合もあるんですよ。
鳥越 それこそ事務次官会議でもあったし、官房長が横の連絡を取り合ったりすることもありますね。
長谷川 それももちろん重要です。が、実は非公式の”最高会議”が別にある。それは財務省と法務・検察の首脳、それに官僚の最高ポストである事務担当の官房副長官が集まる会合です。財務・国税と法務・検察は事務次官をはじめ、さまざまなレベルで日常的に連絡を取り合っていて、人事の交流もある。
鳥越 それが事実だとすれば「この政治家は危ないから排除しよう」「あの政治家のスキャンダルを探しておいてくれ」といった官僚による政治支配の談合になる。
長谷川 その結果かどうかはわかりませんが、私は3年目の政権交代直前から、鳩山政権は駄目だろうと思っていました。
 なぜかというと、鳩山氏は09年2月に「政権を取ったら霞が関の局長級はいったん全員、辞表を書いてもらう」と言っていたのに、政権交代前の6月には辞表の件を撤回した。あれっ、と思ったら、ちょうどその頃、鳩山氏には「故人献金問題(※1)」や母親からの「子ども手当(※2)」などのスキャンダルが表沙汰になった。それで折れてしまったに違いありません。
 小沢氏に対しては同じ頃に西松建設事件が起き、霞が関はこれで脱官僚路線を止められると思ったでしょうが、こちらは不発に終わったわけです。
※1 故人献金問題/09年6月、鳩山由紀夫元首相の資金管理団体・友愛政経懇話会の政治資金収支報告書(05~08年)に、既に亡くなっている人や実際に寄付していない人から個人献金があったかのように虚偽記載されていることが発覚。4年間で計193件、2177万円。
※2 子ども手当/09年11月、鳩山元首相や弟の鳩山邦夫・元総務相が、実母から巨額の資金提供を受けていたことが判明。利息を払っておらず、贈与税逃れを指摘された。後日、鳩山元首相はそのうち12億4500万円を贈与税として申告し、6億円の贈与税を支払った。
米国の虎の尾も踏んだ?
鳥越 これは直感的なものでしかないが、霞が関や法務・検察に加え、「小沢問題」にはどうもアメリカが関わってるんじゃないかという気がしてならない。
 戦後の日米関係は、歴代の自民党政権がそうであったように、アメリカの言いなりでした。毎年、アメリカから日本に「改革要望書」が突き付けられ、アメリカに都合の良いように日本の制度や法律がどんどん変えられていきました。例えば、アメリカの大手小売店が日本進出したいと思えば「大規模小売店舗法を廃止せよ」と”要望”し、日本はそれを”お説ごもっとも”と聞き入れる。その結果、日本中にシャッター通りができた。
 小沢氏は、自民党時代に厳しい日米交渉を経験している。官房副長官としては異例の政府特使になり、建設交渉、電気通信交渉でアメリカとガンガンやり合ったタフ・ネゴシエーター。アメリカは警戒すべき人物だと思ったことでしょう。
長谷川 そこは、どうでしょうか。先ほどの話と合わせて言うなら、霞が関にとって日米基軸は絶対不可侵の話です。だからアメリカを怒らせる政治家は危険人物ですが、『日本改造計画』の頃の小沢氏ははっきりと日米基軸を主張しています。いつから日米中の「正三角形論」になったのかはよくわかりませんが、そうしたわかりにくい政治姿勢が不信感を招いたという見方はできます。
鳥越 小沢氏は今でも日米基軸でしょう。ただ、言いなりではなく、主張すべきは主張する点がこれまでの親米派と違う。期待感からそう思うのかもしれないが、普天間問題でもオスプレイの配備計画でも、もし「小沢総理」なら違う展開を見せたのではないですか。
長谷川 政治家としての小沢氏については、私は批判的です。著書や会見などでの主張は筋が通っているし、傾聴に値する点も多い。でもそれは表の話。裏では違う顔を見せることがある。
 党と政府の一体化は従来からの主張で、鳩山政権では幹事長として政府の政策に深く関与した。例えばガソリン税の暫定税率廃止をひっくり返したのは当時、幹事長だった小沢氏でした。これはマニフェスト破りの第1号です。ところが、小沢氏はその決定について自らきちんと説明していない。著書では幹事長は入閣すべきだと主張していて、そこはまだ実現していなかった、というのかもしれませんが、それならそれで幹事長の自分が説明しなければならない。理念と実際の行動に差がある。
鳥越 細川政権で実験済みなのでしょう。その時は、政権の主導権を握りたい新党さきがけの武村正義代表と角突き合わせる関係で、小沢氏は思うようにならないとすぐに雲隠れした。
 国民福祉税も、本当は小沢氏と大蔵省の斎藤次郎事務次官が練り上げた政策で、細川総理の突然の発表が猛批判されて潰れたが、そういう黒幕のように動くやり方がマイナスイメージを招き、実際より巨大な悪役に見せている面はある。
長谷川 表できれいなことを言うのなら、政策決定のプロセスと結論はきちんと説明してもらいたい。斎藤元次官は鳩山政権発足直後に日本郵政の社長に就きましたが、これだって国民新党の亀井静香氏と小沢氏の差配とされている。この一発で官僚は大手を振って天下りできるようになってしまった。脱官僚路線はあれで壊れたといっていい。
「奢らない」と恨む記者
鳥越 「夫人の手紙」はどう見ますか?私はあまりにも”うまくできてる”印象と、消費増税の採決直前という報じられたタイミングから、これは誰かが仕組んだなと感じました。
長谷川 心情の記述などはよく書けていて、これは本物かなと思わせる内容ではありましたね。
鳥越 その”小沢ならあるだろう”という多くの人の気持ちに合わせて作られたストーリーであるところが怪しい。少なくとも、あのような私的な内容を、真偽の確認もないまま新聞までが報じることは疑問です。
 やはり小沢氏は必要以上に恐れられているような気がしてなりません。
長谷川 簡単に言えば「記者に嫌われている」ということでしょう。霞が関は本当に恐れているかもしれないが、例えばマスコミの人間はもっと単純に、ネタをくれない、仲の悪い記者はシカトする、気配りをしてくれない、というような理由で小沢氏を嫌っているんじゃないですか。
 小沢氏の側近は議員も記者も切られてしまうと、切られた理由もわからず、電話にも出てもらえなくなるんだそうですね。「20回もメシを食ったが、1回しか奢ってくれない。あいつはケチだ」といった高名な評論かもいます(笑い)。
 それに霞が関が嫌う人間を良く書く記者がいないことも事実。新大臣の人物評などは、実は官僚がくれた話とか評価をそのまま書く。逆に官僚が「あいつは駄目だ」と言えば、そのまま悪口を書いたりする。
鳥越 それでも生き残るところも小沢氏の稀有な点。今回も小沢支持票ではないにしろ、57人もの民主党議員が造反に同調した。逆説的だが、特捜部に徹底的に狙われ、マスコミに叩かれ続けたことで、それでも潰されない小沢ってスゴイなという人もいる。
長谷川 そこに殉教者のような雰囲気を感じる国民もいるでしょうね。
 なぜ小沢氏が政治にこだわるか?それはもちろん、権力への欲望でしょう。それは別に否定も批判もしませんけど、あれくらいの「重要人物」はもっと国民の前で語ってもらわないといけないと思います。
鳥越 小沢氏はこれまでも総理大臣になろうと思えばなれた。それをせず、しかしここまで叩かれても政治に身を置き続けるのは、やはり日本に足りないもの、政治家として成し遂げたいものが残っているからではないか。その志があることは、私は信じたい。

          

2012-07-02 11:02:27


田代政弘検事不起訴/国家権力が本気になれば実力政治家にも足枷をはめることもできる 中日東京新聞 2012-06-28 

      

虚偽報告書 田代検事を減給処分
東京新聞2012年6月28日 朝刊
 小沢一郎民主党元代表(70)が強制起訴された陸山会事件に絡む虚偽捜査報告書問題で、最高検は二十七日、虚偽有印公文書作成・同行使容疑で刑事告発された元東京地検特捜部の田代政弘検事(45)=現法務総合研究所=について、故意に虚偽記載したとは認められないとして嫌疑不十分で不起訴にした。法務省は報告書に不正確な記載をしたとして、減給六カ月の懲戒処分とし、田代検事は同日付で辞職した。
 法務省が人事上の処分をしたのは計五人。当時の佐久間達哉特捜部長(55)=現法務総合研究所部長=と特捜部主任検事だった木村匡良検事(50)=現東京地検公判部副部長=を、監督責任を怠ったとして戒告の懲戒処分とした。また、岩村修二検事正(62)=現名古屋高検検事長=を厳重注意、斎藤隆博特捜部副部長(49)を訓告とした。
 田代元検事のほか、佐久間元部長ら六人が検審の審査を妨害した疑いなどで告発されたが、最高検はいずれも嫌疑がないとして不起訴とした。告発した市民団体は、田代元検事の不起訴を不服とし検察審査会(検審)に審査を申し立てる方針。
 最高検によると、田代元検事は二〇一〇年五月十七日、検審の起訴相当議決を受けた再捜査で、保釈中の元秘書石川知裕衆院議員(39)を再聴取した後、木村検事から捜査報告書作成を指示された。十八日に佐久間元部長から石川議員が元代表の関与を認めた経緯を盛り込むよう追加の指示を受け、十九日に完成させた。
 田代元検事は最高検の調べに「以前の取り調べの内容と記憶が混同した」と故意を否定。最高検は、石川議員が勾留中に元検事から「親分を守るためにうそをつくようなことをしたら選挙民を裏切ることになる」と説得され、元代表への報告を認めた事実があったと指摘。「石川議員の隠し録音記録でも、二人は勾留中の取り調べを振り返っており、報告書の記載は実質的に相反するところがなく、思い違いの可能性を否定できない」と結論づけた。
 最高検の笠間治雄検事総長は「国民に疑念を抱かせるような事態を招き、誠に遺憾」とコメントした。
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検事不起訴 身内に甘すぎる処分だ
中日新聞2012年6月28日
 小沢一郎民主党元代表が強制起訴された陸山会事件で、虚偽捜査報告書を作成した検事を検察当局は不起訴とした。明らかなねつ造文書だ。これでは身内に甘すぎて、検察改革の信用も失墜する。
 「記憶が混同した」「故意ではなかった」などの検事の釈明が、一般の国民にはとても通用するとは思えない。それほどでたらめな内容の捜査報告書である。
 検察審査会が小沢元代表を起訴相当と議決した後、小沢元代表の元秘書石川知裕議員を東京地検の田代政弘検事が再聴取した。石川議員はICレコーダーで録音したため、虚偽の全容が明らかになった。
 石川議員が「検事から『議員なのにうそをついたら選挙民を裏切ることになる』と言われたのが効いた」と述べたと報告書に書かれているが、やりとりは架空だった。むしろ報告書の大半は、検事の“作文”だ。ねつ造に等しい。
 田代検事らが虚偽有印公文書作成などの容疑で告発されたが、検察当局は刑事責任を問えないと、検事全員を不起訴処分とした。身内に甘すぎる判断と言わざるを得ない。田代検事は石川議員が逮捕された際に取り調べたが、三カ月も前の記憶が混同したと言っても、国民は誰も信じはしまい。
 問題は当時の佐久間達哉特捜部長ら幹部にも濃厚にある。別の報告書は佐久間氏自ら作成した。自分が自分に対して報告するという、でたらめもまかり通っていた。しかも、報告書のほとんどは小沢元代表が陸山会事件に深く関与していたことを示す内容だ。
 そもそも検察審に検事が出向くのは、小沢元代表を不起訴にした説明をするためだ。それなのに元代表に不利な記述部分に下線を引くなどして強調したのは、市民の判断を誤らせる。小沢元代表が強制起訴されたのは、検察の詐術的な手法のせいではないか。
 田代氏は減給、佐久間氏らは戒告などの行政処分を受けたが、あまりに軽すぎる。そもそも同僚の検事に対して、適正な捜査を尽くしたかどうかも不明だ。検察審制度を恣意(しい)的に利用したとみられているのに、最高検は「誘導する意図があったとは認められない」という報告書を作成した。
 これでは検察改革で新設された監察指導部が、組織として自己弁護に終始している。この問題が検察審で審査されても、検事側に有利な書類ばかり提出されよう。市民が適正にチェックできない事態を招かないか、心配だ。
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筆洗
東京新聞2012年6月28日
 刑罰に関係することが語源になっている言葉は多い。「烙印(らくいん)を押す」「土壇場」「足かせとなる」などがそうだ。足かせは二枚の厚い板の真ん中をくりぬき、罪人の足首にはめて自由に動けなくする刑罰だ。転じて、自由が奪われた状態を意味するようになった▼足かせ自体、今の時代は消えたが、国家権力が本気になれば、実力政治家にも足かせをはめることもできる。そんな薄ら寒さを感じさせる事件だった▼検察審査会に提出した捜査報告書が偽造された事件で、検察当局はきのう、民主党の小沢一郎元代表の秘書だった石川知裕衆院議員を取り調べた検事を嫌疑不十分で不起訴にした。法務省は減給処分を下し、検事は辞職した▼審査会に提出された捜査報告書がインターネット上に流出した。それを読むと、東京地検特捜部は小沢氏が深く関与していることを執拗(しつよう)に強調し、自ら不起訴処分にした人物の刑事訴追に執念を燃やしていることがうかがえる▼これでは、強制起訴以外の結論を出すのは難しい。審査会を誘導して、小沢氏を葬り去ろうとしたと疑われても仕方がなかったが、身内に甘い調査でお茶を濁した▼建設会社を通じた小沢氏の旧態依然たるカネの集め方には、嫌悪感しかない。擁護するつもりはまったくないが、「正義」を御旗にした特捜検察の暴走は、金権政治の腐敗以上に社会を危うくする。
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「暗黒捜査」ではないのか 東京新聞2012年6月20日/小川敏夫元法相が「偽造報告書」で法務省を追及 2012-06-20  
 「暗黒捜査」ではないのか
 東京新聞2012年6月20日【私説・論説室から】
 検事による虚偽の捜査報告書問題について、小川敏夫前法相が十九日の参院法務委員会で法務省を徹底追及した。刑事局長は捜査中を理由に事実確認を拒んだが、身内に甘い処分を決めるようでは、とても検察立て直しどころではない。
 問題の報告書はインターネットで流出している。私も入手して読んでみたが、ひどいものだ。全部がデタラメと言っていい。
 たとえば冒頭で「あなたは被告人の立場だから取り調べに応じる義務はないと伝えた」と記している。ところが、調べられた石川知裕衆院議員(小沢一郎民主党元代表の元秘書)の録音記録によれば、調べた田代政弘検事は石川氏に隠し録音していないかどうか尋ねただけだった。
 その後で一月の取り調べ状況のやりとりなどが記載されているが、これも録音記録には一切、出てこない。架空の記述である。
 それだけではない。当時の東京地検特捜部長に宛てた副部長名による別の報告書も虚偽部分を引用している。報道によれば、この報告書を書いたのは実は特捜部長自身だったという。
 前法相は質疑で田代報告書自体も田代検事以外の別人によって手が加えられていた可能性を示唆した。
 これでは二重、三重のデタラメではないか。「暗黒捜査」の怖さを感じる。法務・検察当局はどう始末をつけるつもりなのか。厳正な捜査に基づく法的処分が必要だ。(長谷川幸洋)
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「指揮権発動について再び首相と会う前日に更迭された」「小沢裁判の虚偽報告書問題・・・」小川敏夫前法相 2012-06-07 
 「指揮権発動について再び首相と会う前日に更迭された」、「小沢裁判の虚偽報告書問題は『検事の勘違い』などではない!!」小川敏夫前法務大臣に真相を聞いた
 現代ビジネス「ニュースの深層」2012年06月07日(木)長谷川 幸洋 
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指揮権発言 軽視せずに公正捜査を
中日新聞 社説 2012年6月6日
 検事の虚偽捜査報告書の作成問題で、小川敏夫前法相は検事総長への指揮権発動を考えたと公言した。検察は「身内に甘い」との指摘もあり、発言は軽視できない。公正な徹底捜査に務めるべきだ。
 検察庁法一四条に定めた法相の指揮権は、検察を民主的に統制する手段である。検察が独断に走り、ファッショ化した場合、それを止めることができない。そのため、国民に選ばれ、信任された内閣の法相にチェックする機能を持たせていると解釈されている。
 指揮権は検事総長に対してのみ発動されるが、その法相判断は正当でなければならず、国民が支持しない場合、内閣は命取りになる。実際に指揮権が振るわれたのは、一九五四年の造船疑獄のときだけとされ、内閣は総辞職に追い込まれた。
 小川氏が法相退任の会見で問題にしたのは、検事が作成した陸山会事件の虚偽捜査報告書だ。「適当に幕引きすれば、国民の信頼を得られないのではないかと心配した」「指揮権発動を考えたが、野田佳彦首相の了承を得られず、残念だ」などと述べた。
 検察捜査は公平公正で、政治に左右されてはならないのは当然だ。法相が捜査の現場を直接指揮できない仕組みになっているのは、政治の側からの不当な圧力を排除するためだ。
 それゆえ、法相の指揮権発動は軽々しいものであってはならない。今回、捜査の報告も受けておらず、証拠を見たわけでもない小川氏が、「指揮権」を口にしたのは不適当といえる。不当な圧力に当たりかねないからだ。
 ただし、このケースは、虚偽の捜査報告書を作成した検事の刑事処分について、検察当局が捜査中の事件である。身内が身内を調べている。「検察が内部のことについて消極的な場合に、積極的にさせるのは法務大臣の本来の姿ではないか」という小川氏の言葉は、検察組織に対する不信感を表している。自分の発言が、国民の支持を得られるとの政治的発言だろう。検察は常に公正でないと、政治からの介入の口実を与えてしまう。
 裁判官や検察官、弁護士の経験を持つ人物の計算した発言としても、検察当局は自らへの戒めとすべきだ。検事や幹部らへの徹底捜査は当然のことだ。「処分が身内に甘い」と国民が受け止めれば、検察審査会で厳しい判定が下されるシステムにもなっている。
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小沢裁判「国民騙したメディアは猛省すべき」と鳥越俊太郎氏 2012-05-09 
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◆ 『小沢一郎 語り尽くす』TPP/消費税/裁判/マスコミ/原発/普天間/尖閣/官僚/後を託すような政治家は 2011-11-20 
  小沢一郎 すべてを語る TPP、消費税、政治とカネ、原発… 聞き手;鳥越俊太郎(サンデー毎日2011/11/27号)
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小沢一郎 妻からの「離縁状」全文 『週刊文春』2012/6月21日号
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1 コメント

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学びたい内容があります。 (菅 二彌)
2016-03-28 10:11:08
以前はよく思っていなかったけれども、なかなか含蓄のある人物ですね。

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