単純賭博罪の法定刑は罰金または科料/琴光喜解雇=相撲界で生きてきた者には死刑に等しい

2010-08-03 | 後藤昌弘弁護士

中日新聞を読んで 「名古屋場所が終わって」後藤昌弘(弁護士)
2010/08/01 Sun.
 異例づくめの名古屋場所が終わった。しかし、今回の日本相撲協会の対応には腑に落ちないところがある。
 一つには、相撲協会が当初名乗り出た者は厳重注意にとどめると言っていたにもかかわらず、結果的に多数が処分された点である。刑事責任が予想される今回の件について、こうした免責を与えて申告させることが妥当であったか否かについては議論の余地があろうが、少なくとも理事会でそうした方針を取ったのであれば、その方針は維持されるべきであろう。結果的に、協会が力士を騙したことになった以上、今後理事会の発言は誰も信用しなくなる。
 今一つは、行為と結果のバランスが取れていたのかという点である。大関琴光喜は解雇処分となった。相撲界で生きてきた者に対しては死刑に等しい。彼が野球賭博をしていたことは非難されて当然である。しかし単純賭博罪の法定刑は罰金または科料とされており、刑務所に行く罪ではない。法定刑が3年以上の有期懲役とされている弟子に対する傷害致死事件とはレベルが違うのである。
 今回琴光喜は恐喝事件の被害者でもあった。恐喝の手口は、すねに傷を持つ被害者に対して、口外したら相撲界に居られなくなるぞ、などお脅して口止め料を要求するのである。琴光喜は警察に被害届けを出したが、結果的に野球賭博に関与していたことが公になり、解雇となった。まさに、脅した側が口にした通りの結果となったのである。
 今回の相撲協会の処置で水面下でほくそえんでいるは、力士の不祥事を知って恐喝を目論んでいる輩であろう。正直に申告しても許されず、単純賭博でも大関が解雇されたのである。今後恐喝されたとしても、協会や警察に届け出る力士が出てくることはあり得まい。
 不祥事に対して過剰な罰を与えることは、将来的に事態の隠蔽という新たな問題を引き起こす。相撲協会の隠蔽体質がさらにひどくなることを懸念する。。
 
 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)


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