「日本は『帰って来た』」~TPPは日米同盟の強化にとっても極めて有益なツールであり・・・

2013-03-25 | 政治

「日本は『帰って来た』」安倍総理訪米を振り返る
WEDGE Infinity2013年03月25日(Mon)岡崎研究所
 2月の安倍総理訪米について、米国の論調は概ね好意的だったようですが、その中から、ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センタ所長、リチャード・ブッシュの論説と、ワシントン・ポスト紙社説を紹介します。
  まず、2月22日付のブッシュ論説は、安倍総理の伝えたかったメッセージは、日本は「帰って来た」ということであり、日本は第一級の国家だということである、と述べています。
 すなわち、オバマは、安倍の任期中、強力なパートナーとなると言ったが、これは安倍の日本国内における政治的立場を強化しよう。
  TPPについては、米国が、交渉の始まる前から、日本は基本的な譲歩をしなくて良いと保障したことにより、事態に進展が見られた。
  自民党は、七月の参議院選挙でねじれを解決したいので、その前には大胆な措置を取ろうとしていない。
  したがって、今回の首脳会談では期待できなかったが、米国が日本に期待することは多い。米国は、日本が東アジアにおける平和、安定、繁栄のための負担を負うことを期待し、また、中国の興隆に対してどう対処するか、密接に協調することを望んでいる。それに対して安倍は、安全保障のためと国際的役割を果たすために新たな行動を取ることを約束している。
  安倍が言いたかったことは、以下に尽きる。
  日本は帰って来た。そして、アメリカ人の中にはそれに懐疑的な人も居ようが、日本は第一級の国家である、ということである、と論じています。
  一方、2月24日付WP社説は、中国の挑発的行動を抑えるには、中国に対して、そういうことをしていると中国の経済発展が阻害されると覚らせることと、日米同盟の強化が必要である。日本がTPP交渉に参加することは、日米同盟を強化する、と述べています。
  すなわち、安倍首相によれば、中国共産党の拠って立つところは「平等」であったが、それは経済成長優先で失われ、残るのは、「高度成長」と「愛国主義」であるが、その愛国主義が反日を煽っている。
 これに対しては、安倍首相が首脳会談で語ったところによれば、そういう挑発的な行動をすると、貿易投資の相手を失って、二本の柱の一本である経済成長を傷つけることを中国に理解させることが必要であるが、その間日米同盟を強化することが必要である。
  日米二国間関係を強化し、同時に、それが単に軍事的同盟でないことを示すためには、日本がTPP交渉に参加することが必要である。
  オバマ大統領も言っているように、TPPは日本のために特に例外を認めるわけではないが、交渉参加を不可能にするような前提条件はつけないから、日本は自由に交渉することができる。
  安倍総理は、七月の大事な選挙を控えて、政治的な決断をしなければならないが、WPに対して、自由貿易は日本の利益になると語っているのであるから、今回の首脳会談で、交渉のための条件を有利にして、日本に帰ることになる、と述べています。
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  過去の論説を見る限り、ブッシュという人は、新しいことを言ったり、鋭い分析をしたりするような人ではなく、常識的な分析をする人です。しかし、ここでは、この常識的な分析こそ事態を正確に理解していると思われます。このブッシュの判断には、なんら異論はありません。
  WP社説は、今回の日米首脳会談について触れた主要紙の社説のうち、最も早い段階で出たものの一つですが、これも、日本に好意的な論調です。この社説を見るだけでも、訪米は成功だったと言えるでしょう。
  社説は、日米同盟の強化を「中国が強硬姿勢の非に気づくまで」と言ったり、「軍事だけでないことを示すためにTPP」と言ったりして、必ずしも、東アジアの大局的なバランスの観点に立って日米同盟強化の利益を正面から支持する論調ではありませんが、日本について、否定的なトーンは全くなく(中国に対してはありますが)、今回の首脳会談が暖かく迎えられていることを示しています。
  紹介した論説・社説に限らず、米国でも、安倍総理は7月に参院選を控えているので、TPPについてそれほど迅速な決断は期待できないだろうと言う見方が大勢を占めていましたが、安倍総理は、3月15日には早くもTPP交渉参加を正式表明し、いよいよ日本のTPP交渉参加が現実のものになってきました。TPPは、日米同盟の強化にとっても極めて有益なツールであり、安倍総理のリーダーシップは、歴史に残るものとして高く評価されてしかるべきでしょう。
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