プーチンが心酔するロシア正教会“75歳怪僧”の正体 2022/4/8

2022-04-13 | 国際

「ウクライナ政権は邪悪」プーチンが心酔するロシア正教会“75歳怪僧”の正体〈元KGB工作員との噂も…〉
 2022/4/8(金) 6:12配信  文春オンライン
 ロシアのウクライナ侵攻開始から1カ月半が経とうとしているが、ロシア軍は要衝の掌握に苦戦し、欧米の推計では兵士1万人以上が戦死するなど、甚大な被害を出している。ロシア側は市民を対象とした無差別攻撃に走り、いまだ停戦の出口は見えない。
 なぜプーチン大統領は、それほどまでの損失を出しても執拗にウクライナ制圧にこだわるのか?
 ウクライナ在住ジャーナリストの古川英治氏は「文藝春秋」に寄せたレポートのなかで、今回の侵略には「宗教戦争」の側面があることを指摘する。

侵略を正当化する宗教指導者

 プーチン大統領と握手するキリル1世
 プーチン大統領と握手するキリル1世

 ロシア正教会の最高指導者でモスクワ総主教のキリル1世(75)は、プーチン大統領の盟友として知られ、ウクライナ侵攻についても積極的な発言を繰り返してきた。古川氏はこう解説する。
〈キリル1世は今回の侵攻前から「ロシア軍はロシアの人々のために平和を守っている」などと発言。侵攻後も、プーチン政権を批判したり停戦を求めたりすることはなかった。
 そればかりか、キリル1世は3月9日、モスクワの大聖堂でウクライナ侵攻を支持するかのような、こんな説教をしてみせた。
「ロシアとウクライナは同じ信仰と聖人、希望と祈りを分かち合う一つの民族だ」
「(外国勢力が)私たちの関係を引き裂こうとしている」
「悲劇的な紛争は、第一にロシアを弱体化させるための(外国の)地政学上の戦略になっている」〉
 宗教指導者にもかかわらず、侵略戦争を全面支持するキリル1世とは、いったいどのような人物なのか? 古川氏によると、スパイ組織KGB(国家保安委員会)の工作員だったとの情報もあるという。
〈キリル1世はロシア第二の都市サンクトペテルブルク出身。ソ連時代にはKGBの工作員だったとの噂も絶えない。プーチンは自らの出身地であるサンクトペテルブルク出身者やKGB時代の同僚らを引き上げており、キリル1世が2009年にロシア正教会トップの地位を射止めた理由はそこにあるとの見方もある。〉
 さらに、聖職者でありながらクレムリンの宮殿内に住んでいるとされ、豪奢な生活ぶりが問題視されたこともある。
〈キリル1世が総主教になる前に面識があった欧州のある外交官は同氏について、「現実主義者で柔軟、聖職者というよりは出世欲の強い官僚のようだった」と評する。3万ドルのスイス高級時計ブレゲを身に着けている写真が出回り、釈明に追われたこともある。他の政権幹部と同様に、プーチンに忠実な部下のような横顔も浮かんでくる。〉

核兵器を「祝福」
 プーチン大統領と一体になって権力をふるうキリル1世は、およそキリスト教の教えにふさわしくない言動を繰り返す。他の聖職者たちに闘争を呼び掛けたり、戦争で使われる武器を「祝福」しているというのである。古川氏はこう指摘する。
〈キリル1世はプーチンの統治を「神による奇跡」と評し、聖職者でありながら、ロシア安全保障会議にもたびたび出席する。(中略)キリル1世は親欧米に転じたウクライナの政権を「邪悪」と呼び、聖職者に事実上の闘争を呼びかけた。
 ロシア正教会は軍と関係を深めており、2020年にはモスクワ郊外に祖国の防衛者を讃えるロシア軍主聖堂を創設した。聖職者が聖水を振りまきながら、核を含む兵器類や兵士を祝福する伝統もある。〉
 一方のプーチン大統領もキリル1世には全幅の信頼を寄せ、「信仰心」の篤さをアピールしている。
〈プーチンはかつて「宗教と核の盾がロシアを強国にし、国内外での安全を保障する要だ」と語ったことがある。自由・民主主義を柱とする欧米の価値観に対して、専制体制を敷くプーチンは、ロシアの精神的な支柱としてロシア正教会を後押しし、政権の求心力にしてきた。自ら頻繁に教会に姿を見せ、復活祭は政権幹部が揃ってモスクワの教会で祝う。〉

戦争は「ウクライナ人の罪への報い」?
 歴史上、キリスト教会は恵まれない者たちに温かい手を差し伸べてきた。
 だが、ウクライナ国内にあるロシア正教会では、避難民たちへの援助を断るところも多くある。古川氏は、東部地区から逃れてきた避難民が体験した、こんなエピソードを紹介する。
〈(避難民が)歴史的な大修道院に支援を求めに行った。ところが、「避難民を収容する場所はない」と冷たくあしらわれた。
 その大修道院の司祭は、今回のロシアの侵攻について、こう言い放ったという。
「この地(ウクライナ)の人々は罪深い。これ(戦争)はその罪に対する報いだ」
 たまらず「子供や女性を殺害しているプーチンこそ悪魔ではないのか」と反論すると、「プーチンの過ちではない、神がお決めになったのだ」との答えが返ってきたという。〉
 だが、ここ数週間、さすがにこのような事態を見かねたロシア正教会の聖職者たちから、異論が巻き起こっている。はたしてプーチン大統領とキリル1世の一蓮托生の関係は、どうなるのか?――「文藝春秋」5月号(4月8日発売)では古川英治氏のレポート「 プーチンが心酔するロシアの怪僧 」を9ページにわたり掲載している。

「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2022年5月号

 最終更新:文春オンライン

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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