安倍晋三と自衛隊 なぜ憲法改正を進めてきたのか

2022-07-23 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

安倍晋三と自衛隊 なぜ憲法改正を進めてきたのか 心を強く動かした「憲法違反」の言葉、歯を食いしばってきた自衛官に報いたい一念
配信 夕刊フジ

安倍晋三と自衛隊】

 街頭などで、「安倍晋三元首相は、米国と一緒に海外で戦争をしようとしています!」などという演説が聞こえたことがある。ネット上にも、同様の主張が見られる。 

 こうした影響なのか、私の周囲にも、安倍氏こそが日本の平和を壊そうとしているとか、世の中の悪いことは「アベが背後にいる」などといった風説を信じ切っている人が少なからず存在した。

 憲法改正について、「説明が足りない」という人もいるようだが、安倍氏は各所で懇切丁寧に、その理由を話していた。それは、もう数えきれないほど同じ話をしたに違いない。

 しかし、彼らは「説明しろ」といいながら、安倍氏が説明すると、今度は「それは口実で、本当の狙いは違う」と言い出すのだから、どうしようもない。

 なぜ、安倍氏が憲法改正を進めようとしていたのか、多くの日本人が認識しているのかどうか気がかりだ。
 安倍氏の心を強く動かしたのは、自衛官にぶつけられてきた「憲法違反」の言葉だった。 自衛官の子は学校で、教師から「あなたのお父さんは人殺し」と言われた。自衛官の家庭に生まれれば、ただでさえ家族で過ごす時間が少なかったり、あるいは一緒に住んだことがないなどという話はザラだ。

 そんな過酷な家庭環境は「国のための犠牲」にほかならないが、それに対して、わずかの感謝すらないどころか、このような「レッテル貼り」が繰り返されてきたのである。
 ただ、これは昔の逸話であり、現在は災害派遣の実績などから、国民の自衛隊に対する感情は大きく変化した。このため、「今さら憲法に明記して何の意味があるのか」とも言われる。
 これに対し、安倍首相はよく、このように言っていた。
 「それはこれまで自衛隊が歯を食いしばって耐え築いてきた信頼のたまもの。今度は、政治の側が責任を果たさなければならない」と。
 過去に頑張ってきた自衛官たちに報いたい、という一念だった。

 また、現在でも「自衛隊を合憲」と認めるのは憲法学者の2~3割でしかない現実が依然としてある。
 自衛隊違憲論を終わらせること、そして学校でも子供たちが自衛隊について正しく学べるようになること、それが安倍氏の目指す改憲だった。
 9条2項は変えずに「自衛隊」を明記する。そのことから「9条改憲」というより、「自衛隊明記」と表現されるようになった。 これは、全面改憲を目指す人たちにとっては物足りない案で、「それならやらない方がいい」という声もあるほどだった。つまり、安倍改憲は、あくま
で自衛隊の法的立場を明らかにするものだったのである。

桜林美佐(さくらばやし・みさ)
 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書・共著に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気』(PHP研究所)、『誰も語らなかった防衛産業』(並木書房)、『陸・海・空 軍人によるウクライナ侵攻分析』(ワニブックス)など。

 最終更新:夕刊フジ 

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です


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