帝銀事件:発生60年 故平沢死刑囚支援者ら、現場を歩く 「調書と矛盾、再審を」
帝銀事件の発生から26日で60年。故平沢貞通元死刑囚の無罪を訴える支援団体「平沢貞通氏を救う会」(片島紀男事務局長)が同日、事件現場を歩いた。
現場は判決確定前に弁護士や検察側も調査しており、支援団体が歩くのは約45年ぶり。平沢元死刑囚の養子、平沢武彦さん(49)ら11人が参加した。
現場周辺の道路は、60年前とほとんど変わっていない。平沢さんらは、事件発生日と同じ午後3時ごろ、JR池袋駅西口を出発し、銀行跡地まで歩いた。調書では、平沢元死刑囚は30分以内で歩いたことになっているが、約45分かかり、平沢さんは「調書の時間ではとても歩けない。再審を実現させ無実を証明したい」と語った。
27日には、再審を想定した模擬裁判を東京都豊島区の立教大太刀川記念館で午後0時半から開く。かつて弁護側の意見書を提出した薬物学者や、現在の再審請求で新たな意見書を出す心理学者らが「証人」として出席する。資料代1000円。問い合わせは平沢さん(080・3474・8578)。【桐野耕一】
■ことば
帝銀事件
1948年1月、東京の帝国銀行椎名町支店に東京都の職員を装った男が現れ、「近くに集団赤痢が発生した。予防薬を飲むように」と行員らに毒物を飲ませ12人を殺害した。平沢元死刑囚が逮捕され、55年に死刑が確定。無実を主張し、再審請求と恩赦の申し立てを繰り返したが認められず、87年に95歳で獄死した。現在、第19次再審請求中。
毎日新聞 2008年1月27日 東京朝刊
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平沢死刑囚 脳に病変
*帝銀事件で元都研究員 自白信用性に疑問符
銀行員ら12人が毒殺され、現金なごが奪われた1948年の帝銀事件で、無罪を訴えながら獄死した平沢貞通元死刑囚の脳に、狂犬病ワクチンの副作用で神経線維が壊されたあとが残っていたことが、池田研二元東京都精神医学研究所参事研究員(神経病理学)の研究で分かった。この病変が元死刑囚に虚言症などの性格変化をもたらしたとみられ、死刑判決につながった自白の信用性に疑問府が付きそうだ。
池田氏は、遺族に返された平沢元死刑囚の脳を解析。事件から60年たったのを機に支援団体が27日、東京・西池袋の立教大学で開いた再審模擬裁判で研究成果が紹介された。
事件では、捜査段階の自白が唯一の証拠とされた。しかし、元死刑囚は30代で受けた狂犬病の予防接種で脳脊髄炎を発生後、うそや作り話などの異常言動が残ったとされ、裁判では自白の信用性が争われた。
「平素と大差のない精神状態」とされた精神鑑定が有罪の決め手となったが、複数の精神医学者らが疑問を表明。「自白調書は医学的に虚偽」などとして脳の精密検査を求めていた。
再審請求弁護団の北潟谷仁弁護士は「今後は自白の信用性、任意性について事件に使われた毒物の鑑定と併せ、再検討が必要だ」と話している。
(中日新聞1月28日朝刊から転記=来栖)
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