震災から1年:しきたり通りに死を迎えられる場所を探す老人たち/公共住宅で死にたくない

2012-03-07 | 政治

震災から1年:しきたり通りに死を迎えられる場所を探す老人たち
WSJ Japan Real Time 2012/3/6 18:46.
 昨年の大震災で住む家を失った多くの人々にとって、地元の安全な場所に新しい家を建てることは大きな夢だ。
 若い世代にとって新しい家を建てることは、震災でほとんど全てを失ってしまった人生をやり直す1つの方法だ。しかし一方で、しきたり通りに死を迎えられる場所として新しい家がほしいと願う老人たちもいる。
 人口2万人の漁業の町、宮城県七ヶ浜町。渡邊 善夫(名前の字を訂正しました).町長によると、約1000軒の家が津波で破壊された。その多くは老人が住んでいた家だった。町長は、老人の多くは自宅を新築するよりも町が建設を予定している公共住宅に移ることを望むだろうと考え、当初は300戸の公営アパートの建設をするつもりだった。
 しかし、ここ数カ月、自宅を新築したいと望む老人が増えているという。その大きな理由の1つは、公共住宅で死にたくないということだ。町長は、 何世代も同じ家に住んでいた人が多く、死んだときに貸家から出て行きたくない人が多いと 語った。この地域では、亡くなった人を棺に入れ、葬儀の前にいったん自宅に帰らせて最後のお別れをするという伝統がある。
 そのため、今では公営アパートの建設は約200戸以下になるのではないかとみている。町の職員は家を失った各被災者と個別面談して意向を聞く予定だ。
 七ヶ浜町の第一スポーツ広場に仮住まいしている85歳の未亡人、伊藤ことさんは以前、自分のような老人はお金を節約するために政府が賃料を払ってくれる仮設住宅にできるだけ長い間住むべきだと考えていた。しかし、最近になって、第一スポーツ広場で何度か行われた葬儀を目にしてから自宅が欲しいと願うようになった。亡くなった一人は中学の同級生だった。
 伊藤さんがそう思うようになったのは、最後のお別れのためにいったん自宅に戻ってくるべき棺が、仮説住宅には戻されないことに気がついたからだという。おそらく場所が狭すぎて棺おけが置けないからだろうと考え、狭い共同住宅で年老いていくことに不安を覚え始めた。
 七ヶ浜町近くの葬儀場経営者によると、津波の後、多くの家が破損して棺を置くことができなくなったため、棺をいったん家に運ぶ儀式は取り止めたのだそうだ。
 記者:Yumiko Ono


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