【ゴーン退場(下)】仏政府の統合圧力、事件の引き金…日産は日本政府の支援期待 産経新聞 2019.1.26

2019-01-26 | 社会

 【ゴーン退場(下)】仏政府の統合圧力、事件の引き金…日産は日本政府の支援期待
2019.1.26 20:40|
 全ては20年前に始まった。
 「ルノーとの強いパートナーシップで、国際競争を生き抜いていきたい」
 平成11年3月27日、東京都千代田区。経営危機に陥っていた日産自動車の社長(当時)、塙義一(故人)はフランスの自動車大手ルノーとの資本提携発表の記者会見でこう話した。その願いは、会見場にいたルノー副社長(当時)、カルロス・ゴーン(64)によってかなえられることになる。日産に送り込まれたゴーンは塙の後任社長に就任し、再建に成功。28年には三菱自動車への出資を決断して3社連合を形成し、29年の販売台数は合算で約1060万台と世界2位になった。
*もくろみ頓挫も
 ドイツのダイムラーと米クライスラーの「世紀の合併」が失敗に終わったように、国境を越えた自動車メーカー同士の連携は難しい。その中で珍しい成功例とされてきた3社連合だが、“扇の要”だったゴーンが逮捕された後、日産とルノーとの意見対立が目立つようになっていた。日産はルノーの新体制移行を好機ととらえ、提案されていた臨時株主総会の開催に応じるなど、関係修復に乗り出した。だが、不安要素はルノー筆頭株主(保有比率15%)の仏政府の動向だ。
 「今はその議論をすべき時ではない」。24日夜、横浜市の日産本社。会見した日産社長の西川(さいかわ)広人(65)は、ルノーとの経営統合について、検討する必要性すら否定した。今月中旬、仏政府の関係者が来日し、日本政府に両社の経営統合案を示したことを受け、西川の反応が注目されていた。
 統合への圧力は、今回が初めてではない。何より、こうした仏政府の野望がゴーン事件の引き金を引いたとの見方が強い。両社の会長を兼務していたゴーンに仏政府が約束させた「不可逆的な関係づくり」について、日産社内は「経営統合のことにほかならない」(幹部)と警戒し、社内調査結果の捜査機関への提供につながった可能性があるからだ。仏政府のもくろみはゴーン逮捕で頓挫した。
 仏政府の姿勢は、経済活動を国が主導する「国家資本主義」に近い。しかも、ルノーは第二次世界大戦でドイツ軍の統治下に置かれたため、解放後、仏政府が資産を没収。ドゴール将軍の命令で国有化され、約50年間、管理下に置かれていた。仏政府がルノーに対し、あたかも“親会社”のように振る舞うのは、こうした歴史があるからだ。
*独立守り連携へ
 西川は24日の会見で、「日産は日本の企業だ。われわれは大きなサポートをいただいている。株主であろうがなかろうが、仏政府がルノーをサポートするのと同じように、そういう状況だ」と強調。いざというときには日本政府が仏政府の向こうを張って、日産を支援してくれることを期待した発言とも取れる。
 関係者が「会見は当然、ルノー側に伝わることを意識している」と打ち明けるように、ルノー、ひいては仏政府の出方を牽制(けんせい)する狙いもありそうだ。
 「資本の論理」だけでいえば、日産に統合圧力をはね返す力はない。全ての株主が議決権を行使するわけではなく、ルノーの43%という保有比率は過半数とほぼ同義だからだ。本来なら、ルノーは日産の株主総会で全取締役を入れ替えることも不可能ではない。
 しかし、特殊な事情がある。仏政府による経営介入の動きに強く抵抗した日産は27年12月、独立性が守られる形にルノーとの協定を修正することに成功。その中には、「ルノーは日産の株主総会で、日産側が提案した人事案に反対しない」という重要な一項が含まれている。修正を主導したのは当時、統合圧力への防波堤の役割を果たしていたゴーンだ。
 ゴーンがルノー会長を辞任したことで、3社は運営体制や資本関係など、企業連合のあり方について本格的な協議を進められる段階に入った。日産は皮肉にも、ゴーンの残した協定を頼りに独立性を守りながら、自動運転などの次世代技術が急速に進む大変革期の荒波を乗り越えるべく、連携強化をはかっていくことになりそうだ。
=敬称・呼称略
 この連載は高橋寛次、臼井慎太郎が担当しました。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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【ゴーン退場(上)】窮地の日産に邸宅改築費要求のメール…経営者不適格の“証拠” 産経新聞 2019.1.25
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